2018
02.03

研修医の先生に読んでもらう論文をいくつか:その2

Category: ★研修医生活
 以前、『研修医の先生に読んでもらう論文をいくつか』と題した記事を書きました( →コチラ)。そこで紹介した論文はWernicke脳症への注意と抗菌薬関連脳症とRestless Legs Syndromeについてでした。

 自分の勤めている病院には、たまに前期研修医の先生がやって来ます。研修している病院に精神科がなく、その科のローテの期間だけうちに来るというシステム。その間は前の記事にあるような論文を読んでもらっているのですが、今回は何と精神科2周目という奇特?な研修医がおり、ちがう論文を探すことになりました。

 ただし、2周目ということもあって精神科に少し慣れていると想定し、もう少し予診や初診の陪席を頑張ってもらおうということになりまして。よって、論文を読んでもらう時間はそんなに多くなくなったのであります。

 ということで、2本用意しました。どちらもNEJMのレビューですが。

・Marcantonio ER. Delirium in Hospitalized Older Adults. N Engl J Med. 2017 Oct 12 377(15) 1456-1466. PMID: 29020579

・Schuckit MA. Recognition and management of withdrawal delirium (delirium tremens). N Engl J Med. 2014 Nov 27 371(22) 2109-13. PMID: 25427113

 テーマは


"2つのせん妄"


 です。いずれも精神科以外でもお目にかかる超重要な病態。1つはフツーのせん妄、そしてもう一つは振戦せん妄 (離脱せん妄) です。薬剤的な対応が異なるため、しっかりと押さえておきましょう。ここではこの論文の概要を記事にします。決して逐語訳ではなく部分部分の拾い訳なので、ご了承ください。あと、少しですが註として自分のコメントを入れています。

 まずは上の論文、"入院中の高齢患者さんにおけるせん妄" です。

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 せん妄は注意と覚醒の障害であり、急速に進展し、かつ動揺性です。種々のメカニズムの最終共通経路であり、急性心不全と似ており "急性脳不全" とも言えます。入院中の高齢患者さんに非常に多く見られ、短期予後や長期予後と強く関連しています。

 せん妄は「暴れて大変!」というイメージかもしれませんが、それは25%とされています。多くは低活動型で静かな状態の時があります (註:この低活動型は本当に見つけにくいです…)。低活動型はより予後が悪く、それは部分的にはあまり認識されていないことによるのでしょう。せん妄の重症度には幅があり、より重症であればより経過が悪くなります。

 リスクファクターは2つのグループに分類されます。基盤となるbaselineの部分と、誘発因子となるacuteの部分です。前者には高齢、認知症 (臨床的に認識されないことが多いので注意)、身体能力の衰え、併存疾患などがあり、他には男性、視覚や聴覚の障害、抑うつ症状、MCI、検査データ異常、アルコール乱用も関連しています。後者は薬剤 (特に鎮静系、抗コリン作用を持つもの)、手術、麻酔、強い疼痛、貧血、感染症、急性疾患、慢性疾患の急性増悪などです。基盤の部分が多ければ多いほど、より少ない誘発因子でせん妄に至ってしまいます。

 以前は、せん妄は一時的なものであるとされていましたが、決してそうではありません。いつ発生してもおかしくなく長引くこともあり、合併症や入院期間の延長のリスクにもなります。また、死亡リスク、施設入所、認知症の発症にも関連しています。

 せん妄は見逃されやすく、診断はCAMや4ATなどを使用しましょう。認知症、うつ病、その他の急性発症の精神疾患は重要な鑑別診断でもあり、かつ併存もします。せん妄と診断された場合は、迅速で適切な評価が必要です。要因は一つと限らないので、Table 3のDELIRIUMのゴロ(上の Evaluate and treat common modifiable contributors to delirium の部分)に従ってすべての要素を調べるべきです。

せん妄Table3

 非薬剤的な介入については、医師、看護師、他の医療者、そして家族によるあらゆる視点からのケアが重要です。既に投与されている薬剤の調整は可変的な要因の中でもっともコモンなものであり、その対応もTable 4に示されています。

せん妄Table4

 環境要因や合併症の予防/管理も重要であり、それはTable 3の残りの部分に記載されています。

 せん妄の行動面の治療は薬剤が使用されるものの、有益性を示す十分なエビデンスがなく有害性が指摘されているため、
非薬剤的な介入が不可欠となります。患者さんの受傷リスク低減のために身体拘束が行われることもありますが、実際は受傷が多くなることが示されています。よって、拘束はゼロに、そうでないにしても最小限に留めるべきです。ICUでは拘束せざるを得ない時もありますが、常に受傷リスクをモニターし不必要と判断されれば速やかに解除すべきです(註:マンパワーがあれば…。それのない状況で頑張ると他の患者さんに割く時間や手間が取られるという現実的な部分があります)。

 薬剤治療は、患者さん自身が苦しみそれを言葉で安心させることが出来なかった場合、行動が患者さんや周囲の人々にとって危険である場合には必要かもしれません。ベンゾはアルコールによるせん妄やベンゾの離脱せん妄の時など特殊な場合に使用され、多くの場合は抗精神病薬が用いられます(註:日本では伝統的にトラゾドンなどの鎮静系抗うつ薬を用いることがありますね)。しかし、抗精神病薬はせん妄の期間や重症度を軽減せず、ICU在室や入院の期間も短縮せず、死亡率も改善しません。よって、使用するのであれば、その場の興奮や幻覚妄想を軽減することと薬剤による過鎮静や合併症を天秤にかけるべきです。効果はどの抗精神病薬も似たり寄ったりですが、ハロペリドールが最も鎮静が少ないもののEPSの発現が多く、クエチアピンがその逆となっています。反応には個人差があるため、どの薬剤を選ぶにしても低用量から開始すべき。追加するのであれば、目標達成まで30-60分毎とします。せん妄が長引く時は頓用ではなく定期服用とすべきですが、これも拘束と同様に可能な限り早期に中止しましょう。

 予防については、訓練されたボランティアが働きかけるものやコンサルテーションを用いたものなどがあり、いずれもせん妄の減少に成功しています。向精神薬の減量もこの2つの重要な側面です。予防における薬剤の有効性は確立されていません。抗精神病薬による予防は有用性を見いだせておらず、メラトニンやその薬剤であるラメルテオンはせん妄発症を減少させるかもしれませんが、はっきりとしたエビデンスに乏しいのが実情です (註:オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサントがせん妄予防になるという論文が出ていましたね。追試待ちでしょうか)。

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 非薬物的介入を重視せよ、というのがこの論文のもっとも言いたいことだったかもしれません。そのためには人手がほしいなぁというのが自分の本音ではありますが…。抗精神病薬は低用量から開始することが大事で、論文ではハロペリドールの初回投与が0.25-0.5 mgとなっており、最大で3 mgでした。EPSもさることながら、特に静注だとQT延長も怖いですしね。オランザピンの最大が20 mgなのに対しクエチアピンの最大が50 mgと記載されていたのはちょっと「??」な気もします。鎮静ということを考えても、この用量比較だとオランザピンのほうがかなり鎮静がかかるのでは…。半減期も長く、自分はせん妄にオランザピンを第一選択では使用しません。

 次に、下の論文が『振戦せん妄 (アルコール離脱せん妄) の理解と管理』です。

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 アルコール使用障害患者さんのうち50%がアルコールを減らすもしくは中止する際に離脱症状を経験します。そのうち3-5%が大発作、せん妄、もしくはその両者を経験します。アルコールはベンゾやバルビツレートなどと同様にGABAの放出を速やかに促しGABA-A受容体に働きかけ、シナプス後部のNMDA受容体活性を阻害します。何度もアルコールに暴露すると、脳は受容体やその他のタンパクを変化させてアルコールに適応していきます。そうするとアルコールの効果は落ち、以前と同様の効果をもたらすにはより多くの量が必要となってしまいます。その後にアルコールの血中濃度が落ちると離脱症状が生じ、それには不眠、不安、心拍数や呼吸数の増加、体温や血圧の上昇、手指振戦などがあります。エタノールは作用時間が短いため、血中アルコール濃度が落ちてから8時間以内に症状を認めることが多く、72時間ほどで最大となります。そのままアルコールを摂取しなければ、5-7日で過ぎていきます。

 アルコール離脱症状の経過と重症度は厳格にモニターしなければなりません。CIWA-Arが用いられており(Table 1)、8点以下であれば軽度でありベンゾを使用することはほとんどありません。8-15点では中等度であり、ベンゾをある程度用います。15点を超えるようなら重度であり、けいれんや振戦せん妄を避けることが重要となります (註:これは1回やってオシマイではなく、4-8時間おきなど経時的にチェックします。あと、意識障害があると適切な評価ができません)。

離脱せん妄Table1

 振戦せん妄の診断基準はせん妄とアルコール離脱症状に分けられます。後者は、長期大量飲酒状態から急にやめるもしくは減らすこと、そして、8つの症状 (自律神経の過活動、手指振戦、不眠、嘔気嘔吐、一過性の幻覚、精神運動興奮、不安、全般性の強直間代発作) のうち少なくとも2つがアルコールを減らした後に見られることとなっています。振戦せん妄はアルコール離脱症状が出現してから約3日で始まり、1-8日もしくはそれ以上続きます (大抵は2-3日)。振戦せん妄で入院している患者さんの約1-4%が死亡しますが、適切にそしてタイムリーに診断され治療されれば、死亡率は低下するかもしれません。高体温、不整脈、けいれんの合併症、併存する疾患によって死亡することが多いとされます。

 振戦せん妄を発症するであろうと予想されるのは、CIWA-Arが15点を超える時(かつsBP>150やHR>100の時に多い)、離脱けいれんを最近経験した(20%に見られる)、振戦せん妄や離脱けいれんの既往、高齢、ベンゾやバルビツレートなどの不適切な使用、身体疾患 (電解質異常や血小板減少、呼吸器疾患、心疾患、消化器疾患など) の併存の場合などです。予防は、併存疾患や離脱症状を見つけて治療することがベスト。治療の目標は焦燥をコントロールし、けいれんのリスクを下げ、受傷や死亡リスクを下げることです。診察と検査によって併存疾患を同定し治療することで、より状態が悪化するのを防げるかもしれません。ケアはせん妄の時と同様のことを行なうべきですが、静脈路は確保しておきましょう。ただし、経静脈的治療の際には注意すべき点があります。例えばグルコースを投与する際にはWernicke脳症やチアミン欠乏による心筋症を避けねばならず、アルコールによって一時的に心機能が落ちていることもあるため輸液を過剰にしないことも重要です。チアミン (経静脈的に500 mgを30分以上かけて1日1-2回、3日間) とマルチビタミンは推奨されていますが、マグネシウムをルーチンで投与することは支持されていません。Wernicke脳症が疑われた場合はチアミンの投与量をさらに上げ (経静脈的に500 mgを1日3回、5日間)、加えてマルチビタミンの非経口投与が推奨されています (註:チアミンの適切な投与量は実際のところはっきりしていませんが、自分もこんな感じの量を入れています)。

 振戦せん妄の薬剤治療の主流はベンゾです。ベンゾの中でどれが良いかは不明ですが、ここでは半減期の長いものとしてジアゼパムが、短いものとしてロラゼパムが挙げられています (註:自分もこれらを使うことが多いです。肝機能障害があればやはりロラゼパムでしょうか)。投与量は患者さんによってかなり異なり、桁外れの使用量となることもあります (註:この文献では、最初の2日間にジアゼパム2000 mgという量が記載されていました! まじ…?)。その他の薬剤も離脱症状には使用されますが、振戦せん妄に対するデータは欠けています (フェノバルビタール、クロメチアゾール、ミダゾラム、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン)。高用量のベンゾに反応しない患者さん (特に挿管されている時) は、プロポフォールが使用されます。0.3-1.25mg/kgで、上限を4mg/kg/hr、48時間までとします。他にはデクスメデトミジンがあり、上限を0.7μg/kg/hrとして使用されます。これは心ブロックがあれば使用できず、血圧や心拍数を注意深くモニターしなければなりません。これらはベンゾよりも研究されていないため、危険性を常に考えましょう。

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 振戦せん妄は "起こさないように徹底的にリスク管理を!" ということなのだと思います。自分のいる病院ではアルコール関連の入院も多いですが、CIWA-Arが最初に低くてもドンドン急激に上がっていく患者さんが実に多く、そうなると後手に回ることもあります。そのため、大量かつ長期の飲酒であれば、8点以下でも入院後にまずはベンゾを服用してもらうことが多いです。可能な限り振戦せん妄を起こさないようにするのが大事。ICUのある総合病院なら違うのかも?

 このような内容の論文2本でした。薬剤的な介入がまったく異なるので、対比させて覚えましょう。どの科でも役立つ内容でございました。今回、自分は研修医の先生を2日間担当することとなっています。1日目はこれらの論文で、もう1日は少し論文を探しておこうかな?
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2018
01.27

お夕飯のお味噌汁

Category: ★本のお話
 医学書院さんから2017年に出版された青木省三先生の本、『こころの病を診るということ』を読みました。と言っても、読んだのは去年のかなり前でして、感想を改めて書く余裕がちょっとなかったというのが実情でございます。

 この本は患者さんに会う前の心構えから始まり、会ってから診断・治療・支援に至るまでの青木先生のプロセスが書かれています。気取った言葉が出てこず、親しみやすい日常語。青木先生の素朴な診療姿勢が見えるかのようです。

ゆとりを持つこと
患者さんを一人の人間として見ること
患者さんやご家族への気配りを忘れないこと
できるだけ傷つけないような態度と言葉でいること
苦しみがありながらも生き抜いてきたという強さがあること

 などなど、決して饒舌ではない文体から ”いつくしみ” がにじみ出てくるようです。

 そして、発達と心的外傷を考慮に入れて患者さんを診ていく姿勢は、旧来の ”診察の心構え” 的な本にはない特徴で、青木先生ならではでしょう。今の時代に非常に即しています。

 また、DSMやICDといった診断基準については慎重に言葉を選んでいるようにも見受けられます。中にはこれらの診断基準を過激な言葉で批判する本もあり、往々にして大御所的な先生がそれをしています (そういう先生に限ってEBMの意味を間違ってとらえている)。しかし、青木先生はそうではなく、診断基準の重要性も理解しつつ、それによる診断で患者さんを全て理解したことにはならないよ、と忠告しています。このバランスの取れた語り口が紳士的でもあり、現実的でもあるのです。

 分からないことは「分からない」と正直のおっしゃっている面も助かります。何でも理論でつなげて「こうだ!」とする本もあったり、有耶無耶にしてしまう本もあったり。でも青木先生はそうでない。こういうのは、特に若手の精神科医を助けてくれますね。「青木先生も分からないんやなぁ。世の中説明できることばかりではないんや」と納得できるのです (でも勉強しない免罪符にしてはいけません)。

 あとは、日々バタバタと忙しい臨床をしていると、つい目先の症状の改善に我々も患者さんもとらわれてしまいます。そこを指摘してくれており、"患者さんにとっての良い人生" を考えるように本の要所要所で教えてくれています。当たり前のことなんですけど、忘れてしまいがち。当たり前だからこそ忘れてしまうとも言えますが、「患者さんが良い人生をおくるためには何が必要だろうか?」と考えること、そして診察で話題にすることが航海の羅針盤にもなってくれるでしょう。

 読んで「これは売れるやろなぁ」と思っていたら、本当によく売れているみたいでして、とっても羨ましい (超本音)。でもこれが売れるということは、まだまだ日本の精神医学も捨てたものではないぞとちょっと安心しているのです。難解な言葉に彩られていない、言ってしまうと地味なタイプの本です、この本は。でも抑制の効いた文章の底に流れる患者さんとご家族への思いが十分に見えていて、売れるということはそういうのを日本の精神科医が渇望していたのでしょう。これはとってもイイコトなのです。「最近の精神科医はDSMばかりで…」と批判ばかりしてはいけないのですよ。

 これは現代の名著と呼ぶにふさわしい出来であり (エラそうですみません…)、若手の精神科医はみな読むべき、と思いました。若いうちにこういう良質で読みやすい本に触れておくのは大切であり、何と言っても「患者さんは傷つきながらも生き抜いている。そこに彼らの強みがある」という視点を得られる絶好の機会です。やたら難しい言葉を振り回して煙に巻くものも多い中、貴重な本だと実感しています。

 若手の精神科医以外にも、精神科に興味のある研修医や学生さんにもおススメできます。それだけ多くの人が読める文で書いてくれているというのがオドロキですね。難しい内容を、質を落とさず分かりやすく書くというのはとても大変で、かなりの知識を要求します。青木先生はそれができる稀有な書き手であったのです。

 派手さがなく、素朴。でも味わい深くて欠かせない。どこかホッとさせてくれる。そんな意味で、お夕飯のお味噌汁みたいな本だなぁと思ったのであります (しかも季節は冬ね)。

 褒めてばかりだとステマのようにも思われるかもしれないので、「これはおかしい!」と思った点を挙げてみましょう。探してみると、1つありました! 持っている人は257ページを開きましょう。比喩を用いて服薬を勧める時の言葉。


風邪で39度くらいの熱が出ると、解熱薬や抗菌薬を飲まないと苦しいですよね。


 皆さん、お気づきでしょうか。そうです



風邪に抗菌薬は使いません!



 むしろ有害事象が増えるので、抗菌薬を風邪には用いないのが大原則なのです。

 つまり、これくらいしか言うところがない、それほどすごい本なのでした…。
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2018
01.23

腎臓フェア開催

Category: ★本のお話
 タイトル通りですが、自分の中で勝手に腎臓フェアと銘打って腎臓の勉強をしていました。たまにこういう「〇〇フェア」というのを思いつきで (?) やりまして、入門的な教科書などを買ってペラペラとめくっています。

 腎臓は自分が研修医の時に重点的に勉強した分野でもあります。ローテートでも腎臓内科を多く廻った記憶も。腎機能はどんな患者さんでも確認しておかねばなりませんしね。で、今回買ったのは日本医事新報社さんからの『レジデントのための腎臓教室』と、医学書院さんからの『レジデントのための腎臓病診療マニュアル』の2冊。

 前者ですが、これはかなり基本的な内容を扱っています。そのため、「腎臓がもう苦手で何ひとつわからん…」という研修医はこの本から始めても良いかもしれません。フルカラーなのは読む気をアップさせてくれ、多くは1ページから見開き2ページでまとめられています。

 ただ、やっぱり基本的すぎるかも、というイメージは強い。”やさしいことをやさしく書いてある” という表現が適切かは分かりませんが、もうちょっと突っ込んでも良いかなと感じました。文献的なサポートも少々弱め。やはり腎臓が超苦手な研修医が早めに読んでおくべき本、という立ち位置でしょう。

 で、後者の『レジデントのための腎臓病診療マニュアル』はもう第3版。自分は初版を若かりし頃に読んだのですが、この本は”マニュアル” という記載が間違っているのではないかと思うくらいに濃密なのです。しかも記憶の中の初版からはだいぶページ数も増えております。学生さん向きではなく、研修医用のテキストと考えても良いかもしれません。文字がぎゅうぎゅう詰まっているので、一文字一文字追うのは骨が折れるでしょう。妥協を許さない ”読むマニュアル” なのです。

 この本は「腎臓が苦手でどうしようもないです…」という研修医の1冊目には決して向きません。マニュアルだから手軽に…と思って手に取ったら裏切られるでしょう。『レジデントのための腎臓教室』で基礎固めをしてから『レジデントのための腎臓病診療マニュアル』に向かうという方法もあるかもしれません。それでもちょっとこのマニュアルは濃縮果汁のような印象を持つでしょうか。

 ちなみに腎臓内科の教科書では恥ずかしい記憶があり、学生の頃に『Renal Pathophysiology』を買って読んでみたものの英語の理解が難しく、その翌年 (早い!) に出版されていた邦訳 (『体液異常と腎臓の病態生理』) を買ってしまい、両方を照らし合わせながら読んだのでした…。英語が得意とは言えない学生が何の知識もなしに一冊目を洋書にすると大変な目に遭う、という好例でしょうか…。今ならどうかな? 学生の頃よりは読めるかも。

 話は腎臓から外れますが、学生さんには洋書にトライしてもらいたいと思っています。今はすぐ邦訳が出るし最新の知識もwebで手に入るので、洋書を原著で読むことの利点は昔ほど多くないかもしれません。でも医学英語を学生のうちから学んでおくことで、臨床に出てから英語のものにアクセスする際のハードルは下がるような気もします。年に1冊くらいで良いのです。まずは日本語の教科書でがっちり基礎を固めてから、分厚すぎない通読できるタイプのものを買って読んでみる。これが大事かと。最初から洋書だと良く分からないことも多いのですが、日本語の本を読んでおくと何となく「あーこれはこのことを言っているな」とつかめます。洋書を読み切った時の何とも言えない達成感 (自己愛的かもしれませんが…) はイイモノですよ。賢くなった気がする。ま、気がするだけなんですけどね。

 洋書については、学生さん向けの読み方の記事をつくっていたので、そちらも興味があればお読みください (→コチラ)。
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2018
01.17

身体疾患と心的外傷

 心的外傷と聞くと、戦争や悲惨な事故や震災などが思い浮かぶかもしれませんが、注意を払えばそれは多くの人に深く浸透していることが分かります。

 最近はPICS (ピックス) という概念がメジャーになってきていますが、その概念の1つに、ICUでの治療体験が心的外傷になるというのがあります (本人やご家族含めて)。

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 他にも、不整脈の苦しい発作を経験した人、がんと診断されてその告知を受けた人、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されてその告知を受けた人、くも膜下出血の激痛を経験した人、治療薬の副作用が激烈で苦しんだ人などなど。そんな人たちにもそういった経験が心的外傷として刻まれてしまうことがあります。がんの治療に関して言えば、外来化学療法室の前を通れなくなった、点滴で受けた抗がん剤の赤い色が目に焼き付いて、それ以来鮮やかな赤い色を見ると吐気がするようになった、という患者さんもいるのです。

 当の本人たちからは自発的に「これこれこういうことでフラッシュバックが起きて大変だ」と語られることはないので、医療者側が疑って、侵襲的になりすぎない問診をすることが大事です。疑うポイントは、不眠や悪夢といった睡眠関連の症状。不眠は過覚醒から来ているかもしれませんし、寝ると悪夢を見るので怖くて眠れないということもあります。悪夢を見るというのであれば、「その悪夢は、昔あった嫌な出来事とリンクしていますか?」などと聞いてみると良いですし、フラッシュバックを聞くのであれば「昔あった嫌なことがパッといきなり思い出されてつらくなることはありませんか?」などが適切かと。患者さんがYESと答えたら、「話せる範囲で結構ですので」と前置きしてから「教えてもらえますか?」と聞いてみましょう。

 身体疾患の症状や告知や治療経過は、心的外傷になります。医療者はそこに気づくことが大事。心的外傷は、昔の出来事が残念ながらその人の中で歴史にならず、いつも現在に襲いかかると考えましょう。目標は、それが歴史になってくれること。過去に起こったことは変えようがありませんが、歴史になれば見方は少し変わるかもしれません。そのためには、現在の生活にゆとりを得ることが大事。今がつらいのに過去に遡って心的外傷を根掘り葉掘り聞くのはさらに傷口を広げかねません。それは経験豊かな治療者に限るべきでしょう。

 今回は身体疾患について述べましたが、高齢者では戦争体験が尾を引いていることがあります。自分の担当した認知症の患者さんは、急に叫んでベッドにもぐるということをしていたのですが、その時に「爆弾が来る!」と言っていたのが忘れられません (戦争でギリギリ生き延びた過去を持っていたと後になってご家族から聞きました)。統合失調症患者さんでも、発症当時の言い表せない恐怖感や周囲の人の「あいつは狂ってる」という心無い発言が外傷体験となり、それが幻聴となることもあるのです。いじめの被害も例外ではなく、大きな傷を残す人が多いのです (Am J Psychiatry. 2014 Jul;171(7):777-84. PMID: 24743774)。あと最近は、大きな体験ではなく日常生活の中での出来事が心的外傷になる患者さんも増えてきました。無視された、上司に怒鳴られたなど。狭義のPTSDには入らないのですが、広く心的外傷として考えておくと有用です。自分は勝手に "日常型の心的外傷" なんて呼んでますが…。
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2018
01.02

新しい年

 あけましておめでとうございます。毎年宝くじを買っていて、1等が当たったら仕事をすぐに辞めてやろうと意気込んでいるのですが、残念ながらいつも労働続行となっています。今回 (2017年の年末ジャンボ) はどうだったかというと…

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3000円が当たりました!(1年前と同じ)


 合計3900円也。宝くじは還元率も低くて買うだけ無駄だと言われますが、夢を見るためのものと考えております。夢から醒めて年が明け、また1年働きましょうということで…。でもあわよくばと思ってしまう。

 それはそうと、年末年始のお休みもあと僅かで驚き中。おかしい、もう仕事始めになってしまうのか。実感としては2日くらいですよ、休んでいるのは。悲しいなぁ。

 おせちも絶賛消費中でして、ちょっと胃が重い。つくったのは煮物と田作りと伊達巻。煮物はちょっとつくりすぎました…。おなべいっぱい。

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 ごぼうと蓮根と人参は圧力鍋で煮たので、”あいーと” 並みの柔らかさ。本当なら全部圧力鍋で一気につくるんですが、ちょっと入り切らなくて…(失策)。

 伊達巻は1年前と一緒で、はんぺんを使って。巻き簾を買うのを忘れてしまった。田作りは買うよりもつくった方が美味しいと思ってます。つくるとパリパリ感が断然違うんですよ。いかにしっかりと煎るか、が大事だと思ってます。

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 この3品だけつくって、後は購入。1年前は黒豆も煮たんですけどね、今年は省略。

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 そして、年越しそばを食べてお正月を迎えたのであります。

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 かき揚げと海老天は近くのスーパーで買いました。遅くに行ったら半額シールがペタペタ貼られていましたよ。

 残念ながらまた1年間働かねばならなくなりましたが、今年1年が良い年であるように、と願っています。少なくとも健康状態が悪化しない程度に過ごしたい。現状維持できれば御の字かも?
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