2007
07.02

IPF, COP

 呼吸器内科実習中に勉強したはIIP(Idiopathic Interstitial Pneumonia:特発性間質性肺炎)の中のIPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis:特発性肺腺維症)とCOP(Cryptogenic Organizing Pneumonia:特発性器質化肺炎)についてです。特に診断の仕方に重きを置いて書いてみました(あくまでも学生の時のものです)。

 参考文献にダイナミックメディシンがありますが、この本の編集者が第二内科教授なのでゴキゲン取りのために出してみたのは言うまでもありません。

 補足:リンクにある論文のTable 1はIIPにおけるそれぞれの疾患のXp・CT像、病理、治療、予後などについて物凄く良く纏まってます→リンク

☆IPFとCOPについて
 IIPsと診断するには問診を行ったうえでfine cracklesなどの身体所見、CXR、呼吸機能、血液検査を行う必要がある。そしてdiffuse parenchymal lung diseases(DPLDs)に属するかを判定し、原因の明らかなもの(感染症や薬剤性、放射線、サルコイドーシスなど)を除外して初めてIIPs疑いとなる。IPFの予後は悪く他の疾患と区別されるべきと考えられているため、IIPsを考えた場合、HRCTを用いてhoneycombing(典型例では両側下葉の胸膜下の背側肺野優勢)有無を判定する。それにより典型的なIPF像を示し、患者が①50歳以上、②緩除な発症、③3ヶ月以上の経過、④両側肺野のfine crackles、以上の4項目のうち3項目を満たした場合、臨床診断IPFとする。HRCTで典型的なIPF像と言えない場合はBALやTBLB、更にはVATSを行ってIPF/UIP、NSIP、COP、AIP、DIP、RB-ILD、LIPといった診断を下し治療を行っていく。以下に重要なIPFと今回の症例であるCOPの特徴や治療を述べていきたい。

 IPF:IIPsの中で最もコモン。治療を行っても進行はrelentlessである(診断後の5年生存率は20~30%)。経過は慢性的で症状は潜在性。労作時呼吸困難、乾性咳が一般的である。聴診でfine cracklesを認め、ばち指はある時もない時もある。CXRは特異度に欠ける。感度は高いものの、病理組織学的にIPFと診断された患者のうち10%はCXRにて異常を認めない。1) 加えて、疾患特異性の高いhoneycombing以外の所見は組織的なパターン、疾患の解剖学的広がり、重症度などを反映しない。BALの細胞分画は正常とほぼ同じである。HRCTはIPFの診断に対し感度は43~78%、特異度が90~97%と高い。2, 3, 4) 典型的な所見は斑状、肺底部優位、胸膜下の網状影、牽引性の気管支・細気管支拡張、honeycombingである。スリガラス陰影はあっても軽度であり、強く見られた場合は画像によるIPFの診断には疑問を持つべきである。残念なことにHRCTの所見がIPF/UIPを高く支持している場合、特に予後が悪いとされる。4) HunninghakeらやRaghuらが報告しているが、Clinicalな診断(*参照)とradiographicな診断が一致した場合、IPFと診断するに足るとしている。2, 3) 重要なことに、この一致は生検上確診したUIPの約半数にしか存在しない。病理学的にはhoneycombingを伴う慢性の病変からfibroblastic fociおよびほぼ正常な肺胞まで、多彩な病変が胸膜側、小葉辺縁部により強く出現する。間質の炎症は殆どなく、もしそれが強く見られた場合は診断を再考する必要がある。治療では、steroidは短期的にはIPFの少数に有効であるが、長期的には厳しいものとなっている(8~17%)。5) Interferon gamma-1bは軽度の症例(FVC ≥ 62% and/or DLCO ≥ 35%)では肺機能や生存率に改善が見られるが、重症例には効果がない。6) Pirfenidoneは肺障害の進展を軽減すると報告されている。7)

 COP:50~60代に好発、男女差なし。経過は亜急性であり、症状はfull-like illness。CXRでは肺容積に変化のない両側びまん性肺胞陰影が特徴的。末梢の陰影は慢性好酸球性肺炎に酷似。陰影は再発性、移動性のことも多い。BALでは特異的な“mixed pattern”―↑Lym(20~40%)・↑Neu(約10%)・↑Eos・plasma cellやmast cellも時には見られる―が認められることもある。8) 肺生検では、結合組織などから成る肉芽組織が肺胞内に形成されていることが認められ、また肺の構造は保存されている。このorganizing pneumonia patternは非特異的であるため、このパターンをとりうる他の疾患(lymphoma, cryptococcosis, Wegener’s granulomatosis, eosinophilic pneumonia, hypersensitivity pneumonitis等)を確実に除外しなければならない。予後は良好で、ステロイドにて2/3の症例は臨床的に改善する。マクロライドが奏効したという報告もあり、ステロイド抵抗性のCOPや副作用に耐えられない患者への代替療法としての期待がある。9)

☆COPのDDx
 「抗菌薬が無効の〝市中肺炎〟」。この場合COPを疑うべきである。鑑別としては細菌による肺炎(結核含む)が当然として挙げられる。ウイルス感染ではHerpes virus、Human immunodeficiency virus、Influenza virus、Parainfluenza virusが挙げられ 11)、皮膚所見や免疫抑制状態、臨床症状の違いなどで判断する。真菌ではCryptococcus neoformans、Penicillium janthinellum、Pneumocystis jiroveci (in AIDS)がある 11)。

 乳癌の治療に放射線を用いている患者であれば、その肺障害も鑑別に挙がる。10) また、数多くの薬剤もCOPに類似した症状を示すが 11)、これは見逃されやすいので注意が必要である。炎症性や全身性の疾患、特に膠原病は重要な鑑別に挙がる。11) lymphomas や bronchioloalveolar carcinomaも忘れては困る鑑別疾患である。またCOPにおけるBALFの特徴的な所見は“mixed pattern”かもしくはCD8上昇であるが、CD4が優位に上昇している場合も認められる。その時はsarcoidosisも考えるべきであろう。CXRでのBHL、眼病変、耳下腺腫脹、血清ACEなどを調べる必要がある。

 他の原因が明らかなorganizing pneumoniaが除外されると、COPがleadingとなる。TBLBを行い、organizing pneumonia patternが見られたらステロイドによる治療を行っていく。ただ、高齢の場合はステロイドの副作用、特に骨粗鬆症には十分注意する必要がある。


☆参考文献
ダイナミックメディシン4 2003;16-77-81
呼吸2005;24巻3号:209-220
1. McLoud T. C, et al. Diffuse infiltrative lung disease: a new scheme for description. Radiology. 1983;149:353–363.
2. Hunninghake G, et al. Utility of lung biopsy for the diagnosis of idiopathic pulmonary fibrosis. Am J Respir Crit Care Med. 2001; 164:193–196.
3. Raghu G, et al. The accuracy of the clinical diagnosis of new-onset idiopathic pulmonary fibrosis and other interstitial lung disease: A prospective study. Chest. 1999;116(5):1168–74.
4. Flaherty K. R, et al. Radiological versus histological diagnosis in UIP and NSIP: survival implications. Thorax. 2003;58(2):143–8.
5. Douglas W. W, et al. Colchicine versus prednisone in the treatment of idiopathic pulmonary fibrosis. A randomized prospective study. Members of the Lung Study Group. Am J Respir Crit Care Med. 1998;158:220–225.
6. Raghu G, et al. A randomized, double-blind, placebo-controlled trial of recombinant interferon gamma-1b in patients with idiopathic pulmonary fibrosis. N Engl J Med. 2004;350:125–133.
7. Azuma A, et al. A Placebo Control and Double Blind Phase II Clinical Study of Pirfenidone in Patients with Idiopathic Pulmonary Fibrosis in Japan. Am J Respir Crit Care Med. 2002;165:A729.
8. Costabel U, et al. Bronchiolitis obliterans organizing pneumonia (BOOP): the cytological and immunocytological profile of bronchoalveolar lavage. Eur Respir J. 1992 Jul;5(7):791-7. PMID: 1499702
9. Stover DE, Mangino D. Macrolides: a treatment alternative for bronchiolitis obliterans organizing pneumonia? Chest. 2005 Nov;128(5):3611-7.
10. Crestani B, et al. Bronchiolitis obliterans organizing pneumonia syndrome primed by radiation therapy to the breast. Am J Respir Crit Care Med 1998;158:1929–35.
11. Cordier JF. Organising pneumonia. Thorax 2000;55:318–28.


*: IPF, clinical diagnosis: In the absence of clinical features suggestive of infection, neoplasm, collagen-vascular disease, systemic vasculitis, exposure to fibrogenic factors known to be associated with ILD (occupational and environmental history, exposure to birds, drugs), and inherited diseases known to be associated with ILD/pulmonary fibrosis (eg, neurofibromatosis, Hermansky-Pudlak syndrome, metabolic storage diseases, etc), the clinical diagnosis of IPF was made only if the patient was > 50 yrs and had:
A. Insidious onset of otherwise unexplained exertional dyspnea of 6 months’ duration;

B. Bibasilar end inspiratory "Velcro" crackle;

C. Restrictive lung defect without coexisting airflow obstruction, decreased diffusing capacity of carbon monoxide (corrected to hemoglobin), and increased alveolar-arterial oxygen pressure difference at rest or with exercise;

D. Bibasilar reticular abnormalities on chest radiographs and HRCT scan of the chest (see below); and

E. Transbronchial lung biopsy or BAL cellular profile that showed no features to support a specific diagnosis such as sarcoid, pulmonary histiocytosis X, or alveolar proteinosis.
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コメント
 こんにちは、はじめまして。突然なのですが、お聞きしたいことがありまして今こうしてメイルを書いています。今私はNEW YORKで ヘアーアシスタントとして働いています。つい最近2年前に知り合った友だちがたずねてきてIDIOPATHIC PULMONARY FIBROSIS と診断された親戚がいる、あと2年生きれるかどうかわからないということでした。ただその病気に効くといわれている薬が日本にあり今ここアメリカではまだ手に入れることができないということでした。FDAの許可がまだ出ていないそうで、ここに入ってくるまでには、手遅れになるかのうせいがあるとのことです。どうかいい医師、どんな情報でもいいです。もし助けていただければと思いまして、今こうして書いているところです。私には治すことはできませんけど少しでも助けになればと思っています。突然で申し訳ありません。saoriabe76@hotmail.com 安部 早織
安部 早織dot 2010.01.26 13:12 | 編集
安部さん、はじめまして。
お返事が遅くなってしまい申し訳ありません。
IPFの治療薬として、世界で初めて発売されたのがPirfenidoneというお薬です。塩野義製薬が"ピレスパ"という名前で日本で発売されています。
呼吸器内科の先生に聞いてみましたが、そのお薬は従来の治療よりも肺の機能を良くはするものの、予後を改善するものではないそうです。予後はprognosisといいまして、命の長さを意味するものです。ですから、そのお薬によってより長く生きるという結果までは至っていないというのが残念ながら実情です。
IPFは非常に難しい病気で、治療としては肺移植が有望視されています。アメリカではPirfenidoneによる治療が現在はできませんが、根治を望める肺移植は日本の何倍も進んでいます。

私は呼吸器の門外漢なのであまり無責任な発言はできません。アメリカで信頼できるお医者さんに、治療について移植を含めてお聞きになるのが一番かと思います。

繰り返しになりますが、お急ぎなのにお返事が遅くなってしまって大変申し訳ありませんでした。
m03a076ddot 2010.01.30 11:59 | 編集
 お返事大変ありがとうございます。こちらこそお忙しいとこ本当にありがとうございます、薬の名前がわかったことはとても助かります、きっと彼女も喜ぶと思います。 本当にありがとうございます。God Bless.
安部 早織dot 2010.01.30 15:50 | 編集
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