2007
06.22

頭蓋縫合早期癒合症

 脳外で勉強したアペール症候群(Apert syndrome)を中心とした頭蓋縫合早期癒合症(craniosynostosis)についてです。本文自体はどっかの本からとっていまして、丸写しじゃアレだから、、、との理由で少し内容を論文から引っ張っています。


 頭蓋骨の発生は、約40日で頭蓋底軟骨に骨化が始まり、神経頭蓋の膜性骨も50~60日ごろに発生する。これらの骨は結合組織で互いに結合しており、これが縫合となる。膜性骨化した頭蓋冠は縫合部で成長・発育する。3つの骨が接合する部位を泉門と言うが、大泉門は通常生後7~19ヶ月で閉鎖する。通常より早く乳幼児期(症例によっては胎児期)に縫合が骨性癒合を開始した状態が、頭蓋縫合早期癒合症(craniosynostosis)である。脳の発育阻害、頭蓋内圧亢進、頭蓋の変形をきたすことがあるが、症例によっては変形が顔面骨に及ぶこともある。よって本症においては頭蓋・顔面の変形が主たる臨床症候になるものの、頭蓋内腔の狭小化に伴う頭蓋内圧亢進や、顔面骨の変形が高度な場合には眼球突出や呼吸障害などが問題になる。発生頻度は出生10000に4~16人とされる。原因は現時点において明らかではないが、TWIST BOXやFGFRの遺伝子異常とする説もある。1) 原因はどうであれ、一縫合のみの早期癒合であってもその病態は多数の骨縫合あるいは頭蓋底にまで及ぶものと考えられており、本症の外科治療を行う際にはこの点に充切留意する必要がある。

 頭蓋縫合の早期癒合の原因がはっきりしないものを原発性頭蓋縫合早期癒合症(primary craniosynostosis)あるいは特発性頭蓋縫合早期癒合症(idiopathic craniosynostosis)と呼ぶが、くる病や甲状腺機能亢進症など様々な疾患に続発して発生する続発性頭蓋縫合早期癒合症(secondary craniosynostosis)もある。また、他に合併症をもたないものをsimple type、合併奇形を有するものをsyndrome typeと呼ぶ。早期癒合する縫合と、呈しやすい形態異常の対応は以下の通りである。

☆simple synostosis(単独の縫合が早期に癒合)
 brachycephaly(短頭蓋):両側冠状縫合
 scaphocephaly(舟状頭蓋):矢状縫合
 trigonocephaly(三角頭蓋):前頭縫合
 plagiocephaly(斜頭蓋):一側冠状または一側ラムダ縫合
☆compound synostosis(多縫合の癒合)
 oxycephaly(尖頭蓋):両側冠状縫合を含む多数の縫合
 cloverleaf skull(クローバー葉頭蓋):冠状縫合、ラムダ縫合、前頭縫合

 syndrome typeとしては、Crouzon病(常染色体優性遺伝)、Apert症候群(常染色体優性遺伝の形もとるが、通常は孤発性)、Pfeiffer症候群、cloverleaf skull症候群、Carpenter症候群などが挙げられる。

 臨床症状・症候に関しては、頭蓋縫合早期癒合症の殆どは出生時に明らかであり、早期の縫合癒合による頭蓋骨変形が特徴である。縫合部を触診すると隆起した骨の稜線が触知される。はっきりとしない症例では頭蓋の単純Xpもしくは骨スキャンを行うことで癒合が確認できる。

 早期癒合に陥った骨縫合によって特徴的な頭蓋・顔面の変形が起こるが、その他に生理的な頭囲増大の減少、大泉門の早期消失、早期に癒合した縫合の骨性隆起などが見られる。また、両側冠状縫合あるいは多数縫合の早期癒合症、syndrome typeでは頭蓋内圧亢進をきたしやすく、頭痛、うっ血乳頭、更には精神運動発達遅延、眼球運動障害、痙攣発作、視神経萎縮などをみる。

 舟状頭では頭蓋は前後に拡張するが、早期癒合が矢状縫合の前半部に起こるとfrontal bossingが認められ、後半部の場合にはoccipital bossingが起こる。舟状頭は女性より男性に多く、小児頭骨盤不均衡のため娩出困難をきたしやすい。

 冠状縫合が早期に癒合すると前頭骨は扁平化し眼窩は浅くなり眼球突出が起こるが、病変が両側の場合には前後径の短い扁平な短頭蓋、一側の場合には前斜頭蓋になる。前斜頭蓋では顔面の非対称を伴い、鼻根部は患側に偏位し健側の眼球は患側よりも下方に位置する。また、前斜頭蓋の患児の約1/4は、斜頸を呈することが知られている。

 前頭縫合の早期癒合による三角頭蓋では、前頭骨の正中が舟の舳先のように突き出るが、前頭蓋底は狭く眼窩の外側縁も扁平化し、多くの症例でhypotelorism(両眼接近症)を伴う。また、三角頭蓋では脳梁欠損やholoprosencephaly(全前脳胞症)などの脳奇形を合併することが知られており、知能指数の低値あるいは発達遅延を伴うことがある。一側のラムダ縫合が早期癒合に陥ると。患側の後頭骨が扁平化する後斜頭蓋になるが、この場合、いわゆる寝癖による頭蓋の変形(posterior deformational plagiocephaly)との鑑別が問題になる。

 真の後斜頭蓋では患側の耳介は後方に偏位し、健側前頭部は代償性に膨隆するが、posterior deformational plagiocephalyでは耳介は前方に偏位し健側前頭部の膨隆はない。

 syndrome typeでは、顔面骨の形成異常が顕著で眼球突出や上気道狭窄に伴う呼吸障害を合併する。Apert症候群では、両側冠状縫合の早期癒合による短頭蓋が一般的であるが、顔面骨の形成以上を伴うために眼球突出、口蓋の挙上、低位の耳介、歯列異常、鈿鼻などを合併する。また、Apert症候群の大泉門は大きく、その閉鎖は正常よりも遅れるために、これが前頭部の膨隆の原因になる。手指足趾の合指(趾)症はApert症候群の最もよく知られた症候の一つであるが、特に第2~4指の癒合が特徴的とされている。患児は手・足・頚椎の骨の進行性石灰化と癒合をきたす。Crouzon病でも両側冠状縫合の早期癒合による短頭蓋が多く見られるが、その他に舟状頭やcloverleaf skullなど様々なタイプの癒合症を伴うこともある。ただし、頭蓋底、眼窩、顔面骨にも病変が及ぶため、眼窩は浅く眼球突出は顕著であり、上顎骨も低形成で上気道狭窄による呼吸障害をしばしば伴う。Apert症候群とCrouzon病を比較すると、前者では精神発達遅延を見ることが多いが、後者では比較的まれである。

 Apert症候群の出生前診断において、mild ventriculomegaly や 脳梁形成不全を超音波にて同定したならば本症の特徴を詳細に探し、骨異常を発見するためにfollow-up imagingを迅速的に行うべきであり、molecular testingを施行する必要性があるとする報告もある。2) 

 術前検査としては、頭蓋縫合早期癒合症に特有の変形に加えて単純Xp、3D-CTなどで縫合線の早期消失、指圧痕を証明する。水頭症、脳梁欠損やholoprosencephalyなどの脳奇形の有無、さらに小脳扁桃の下垂についてMRIやCTで診断を行う。SPECTによる脳血流の不均等切布は、手術適応の決定に有用である。Crouzon病では脳室拡大が多く見られ、約1/3で水頭症病態を合併する。水頭症の多くは交通性水頭症であるが、その発生のメカニズムについては、静脈洞の圧迫や閉塞、頭蓋頚椿移行部の奇形、中脳水道狭窄やくも膜下腔の狭小化による髄液循環障害など諸説ある。小脳扁桃の下垂もsyndrome typeに特有のもので、Crouzon病やcloverleaf skullに多く見られるがApert症候群では稀である。この小脳扁桃の下垂の発生機序についても不明の点が多く、頭蓋縫合の早期癒合に伴う頭蓋内容積の狭小化や静脈圧の慢性的な上昇が原因と考えられているが、ラムダ縫合の早期癒合の存在がその発生に密接に関与しているとの意見もある。小脳扁桃の下垂は時に呼吸障害の原因になるので、この場合には頚椎の椎弓切除を含む後方減圧術を行う必要がある。

 治療であるが、頭蓋顔面の変形の矯正、頭蓋内圧亢進の是正、眼球突出や呼吸障害の改善が外科治療の目的になる。したがって、syndrome typeは原則的に外科治療の対象になるが、simple typeであってもその多くで手術が必要となる(頭蓋内圧亢進例、頭蓋顔面の変形を矯正することによる患者の精神的ストレスの軽減など)。ただし、年長児で頭蓋顔面の変形が軽度で頭蓋内圧が亢進していない症例では、積極的な外科治療の適応は無い。
出生直後より頭蓋内圧の亢進が著明な場合を除き、術中の出血など手術に伴うリスクを考慮して、生後2~3ヶ月まで待って手術を行うのが一般的である。ただし、頭蓋変形の矯正という観点からは、生後1年を過ぎてからの手術の成績は必ずしも満足できるものではないので、いたずらに手術時期を遅らせるべきではない。一方、syndrome typeでは合併する上顎骨の低形成が上気道狭窄の原因となるため、呼吸障害などの臨床症状のある症例に対しては、Le Fortの骨切りを行って中顔面を前方に移動するmidface advancementを行う。ただしこの術式は、上顎骨の骨切りが上顎の歯牙の発育を妨げる可能性のあること、乳幼児期にmidface advancementを行うと骨の後戻り現象が起こるなどの理由から、年長児になってから手術をすべきとする意見が多い。したがって、出生以後早期から呼吸障害を呈する患児については、midface advancementが可能な年齢まで、気管切開を含む厳重な呼吸管理を行う必要がある。

 現在の主流な方法としては、頭蓋縫合早期癒合症のタイプに合わせて頭蓋・顔面骨に様々な骨切りを加え、これらの骨片を再構築する手術法(osteotomy & repositioning)がある。更に最近では、骨延長器を用いたgradual bone distraction法によりosteotomy & repositioningを行うことが出来るようになり、良好な成績を収めている。骨延長器を用いた手術では、硬膜と頭蓋骨を完全に切離することなしに任意の骨切りを加え、作製した骨片に目的とする頭蓋拡張の方向に垂直にチタン製のネジ穴器を固定、これに一方の先端がネジ切りされているロッドを挿入し反対側を頭皮の外に出して手術を終える。術後、頭皮の抜糸が終わった頃からロッドを回し込み、1日に1mm程度のペースで1ヶ月ほどかけて頭蓋を拡張させる。拡張終了後、骨片が後戻りしないように一定期間ロッドを留置しておくが、最終的にロッドを抜去する際にネジ穴器を除去するための小手術を行う必要がある。骨延長器を用いた頭蓋形成術は、硬膜と頭蓋骨を剥離しないため出血が少なく、頭皮や硬膜も同時に拡張できるなどの利点があり、様々な癒合症の手術に応用されている。

 頭蓋縫合早期癒合症に対する手術の最大の合併症は術中出血によるショックなので、大量の輸血に対応できるようにあらかじめ中心静脈ラインを確保しておかなければならない。頭皮は眼窩上縁を除く骨膜上で剥離し、骨の削除にはロンジュールを用いずに極力オステオトームを使用するなど、骨および骨縁からの出血を少なくするように努力しなければならない。また、術野が頭蓋全域にわたるような場合には、患者をmodified prone position(スフィンクス体位)にして、上矢状静脈洞を全長に渡って無理なく観察できるようにしておくことが、静脈洞損傷を回避するポイントになる。

☆基本的な手術法
1. fronto-orbital advancement(anterior cranial expansion)
 一側ないし両側の冠状縫合の早期癒合に対して行われる術式で、Crouzon病やApert症候群などのsyndrome typeにも頻用される。両側冠状皮膚切開をおき、頭皮を翻転し頭蓋前半部を露出、癒合した冠状縫合の部切と眼窩上縁より1.5cm上方に骨切りを加え両側前頭開頭を行う。次いで、眼窩上壁に骨切りを加えてsupraorbital barを作製し、両側前頭骨片とsupraorbital barを前方に1.5~2.0cm移動させ固定する。骨延長器を用いたgradual bone destruction法では、両側前頭片とsupraorbital barを一塊の骨片として硬膜から遊離せずに骨切りを加え、この骨片の両側に骨延長器を装着する。

2. posterior cranial expansion
 一側ないし両側のラムダ縫合の早期癒合に対して行われるが、これらの病態はsyndrome typeにもしばしば合併するために、本術式の適応となる症例は少なくない。両側頭頂皮膚切開をおき、頭皮を骨膜上で剥離し大後頭孔近傍まで翻転する。次いで、横静脈洞の上方で両側頭頂後頭骨片を作製し、これを後方に移動し固定するが、これに関しても骨延長器を用いたgradual bone distraction法を適応することが可能である。従来の方法だと術後1週間ほど患児を側臥位にしておく必要があるが、骨延長器を用いた場合にはその必要は無い。さらに、後頭蓋窩の拡張が必要な場合には、後頭蓋窩の骨から横静脈洞を剥離、その骨縁に大後頭孔に向かって垂直に数ヶ所骨切りを加え(barrel stave osteotomies)、これらを後方にしなわせて後頭蓋窩の拡大を図る。

3. fronto-orbital advancement・posterior cranial expansion
 syndrome typeなど多縫合の癒合症では、fronto-orbital advancementとposterior cranial expansionの両方を行う必要のある症例も少なくない(total cranial reconstruction)。前後方向への頭蓋の拡張を同時に行うのか、時期を置いて別々に行うのかは症例によって異なってくるが、固定のために頭蓋の中央部に頭蓋の前半部と後半部を仕切るbiparietal barを残しておく必要がある。

4. 舟状頭に対する手術
 舟状頭に対する手術は、頭蓋の前後径を短縮しつつ側方へ拡張させることがその目的となる。頭蓋全般のosteotomy & repositioningすなわちtotal cranial reconstructionが主流の術式であるが、fronto-orbital advancementと異なりorbital barを作製する必要は無く、手術操作は頭蓋冠に限局したものになる。両側前頭骨片、両側後頭骨片、左右一対の側頭頭頂骨片、更に上矢状静脈洞直上の頭頂部正中に細長い骨片を作製する。頭頂部正中の骨片の前端を1.5~2cmほど切除し、これを両側前頭骨片と両側後頭骨片に強固に固定することにより頭蓋の前後径を短縮させる。左右の側頭頭頂骨片は、硬膜に固定するのみのfloating bone flapの状態にしておくので、頭蓋の前後径の短縮により自然と横径が増すことになる。このような舟状頭に対するtotal cranial reconstructionも、最近では骨延長器(頭蓋の前後径に関しては短縮するように装着)を用いて行うことが可能になった。

 内科的治療について、EswarakumarらはFGFRの異常に着目し、FGFR signalingを薬理学的な介入により減衰させることで、将来的には頭蓋縫合早期癒合症を含めたFGFR異常に基づく疾患を治療できるのではないかとしている。3)

 予後であるが、頭蓋内圧亢進、顔面骨の変形に伴う眼球突出や呼吸障害、水頭症などの有無あるいはその程度により左右される。よって、simple typeに比べsyndrome typeの予後は不良である。しかし、これらの症状あるいは病態は外科治療の対象になるため、時機を逸することなく的確な手術を行うことが患児の予後を改善することになる。ただ、syndrome typeのうち特にApert症候群などでは、合併する脳奇形が精神運動発達遅延の主たる原因のため、いかに早期に手術を行ってもこれを改善させることは難しい。手術による頭蓋変形の矯正に関しても、simple typeに比してsyndrome typeでは術後もある程度頭蓋の変形は残存し、外科治療の限界が存在すると言わざるを得ない。特に1歳未満で初回手術を行ったsyndrome typeでは、長期的に経過を観察すると、頭蓋内腔の再狭小化により頭蓋内圧が亢進したり頭蓋・顔面の変形が増悪したりなどして再手術を余儀なくされることがあるので注意を要する。


☆参考文献
1)Seto ML et al, Isolated sagittal and coronal craniosynostosis associated
with TWIST box mutations. Am J Med Genet A. 2007 Apr 1;143(7):678-86.
2)Quintero-Rivera F et al, Apert syndrome: what prenatal radiographic findings should prompt its consideration? Prenat Diagn. 2006 Oct;26(10):966-72.
3)Eswarakumar VP et al, Attenuation of signaling pathways stimulated by pathologically activated FGF-receptor 2 mutants prevents craniosynostosis. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Dec 5;103(49):18603-8. Epub 2006 Nov 28.
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