2012
02.06

心臓の触診

 心尖拍動の触診。最も基本的な身体診察の1つです。触って何の意味があるの?ただ心尖部の聴診のために位置を見つけるくらいじゃないの?と思われがちですが、我々の予想を越えて、心尖拍動の触知には疾患に対する幾つかのヒントが隠されています。McGee先生の"Evidence Based Physical Diagnosis"から。

☆POSITION OF APICAL BEAT
Supine apical impulse lateral to MCL
・Detecting cardiothoracic ratio>0.5:感度39-60%、特異度76-93%、LR+3.4、LR-0.6
・Detecting low ejection fraction:感度24-66%、特異度93-98%、LR+10.1、LR-0.6
・Detecting increased left ventricular end-diastolic volume:感度33%、特異度96%、LR+8.0、LR-0.7
・Detecting pulmonary capillary wedge pressure>12mmHg:感度42%、特異度93%、LR+5.8、LR-NS
Supine apical impulse>10cm from midsternal line
・Detecting cardiothoracic ratio>0.5:感度61-80%、特異度28-97%、LR+NS、LR-0.5

☆SIZE OF APICAL BEAT
Apical beat diameter≧4cm in left lateral decubitus position at 45 degrees
・Detecting increased left ventricular end-diastolic volume:感度48-85%、特異度79-96%、LR+4.7、LR-NS

 上の結果を見ると、仰臥位で心尖拍動が鎖骨中線より外側なら、心胸郭比>50%や駆出率低下、左室拡張末期容量の増加、PCWP>12mmHgといったことが考えられるんです。ベッドをギャッジアップし患者さんを45度の姿勢で仰臥位にした状態で、心尖拍動の直径が4cm以上なら左室拡張末期容量増加を疑うことができます。

 これらの情報を救急外来に生かすとするなら、呼吸苦を訴えている患者さんで心尖拍動がMCLより外側(大ざっぱに言えば、乳頭より外側)にあれば、心不全を示唆すると考えておきましょう。

 また、拍動にも種類があり、hyperkineticやsustainedなどが代表例。hyperkineticは、心尖拍動が大きい、つまりoveractingなものです。MSの患者さんで心尖拍動がhyperkineticなら、MRや大動脈弁疾患の存在を強く疑います(LR+11.2)。また、hyperkineticでなければ、それらの存在がやや否定的になります(LR-0.3)。ですが、hyperkineticかnormalかは主観に基づいているので、初心者には厳しい。。。

 より分かりやすいのはsustained(持続性)。収縮期間中ずっと外方運動を続け、II音で降下し始めるものと理解されています。感覚で言うと、「ぬったり」と触れる感じでしょうか…。圧and/or容量のoverload、重症心筋症、左室瘤などがあるとこういう触れ方になるようです。んで、大動脈性の駆出性雑音がある患者さんでこのsustainedがあれば、MRの合併を強く疑います(LR+11.2)。そしてsustainedがなければMR合併を少々否定的に見ます(LR-0.3)。また、心基部で拡張早期雑音を聴いた患者さんでもこのsustainedがなければ、中等度から重度のARはかなり否定的(LR-0.1)。また、胸骨傍の左下領域(Erb辺り?)でsustainedな動きがあれば、右室最高圧≧50mmHgであることをある程度示唆します(LR+3.6)。

 ちなみに胸骨左縁第2肋間で収縮後期に拍動が触れるということは、IIpが触知されたことを意味します。MS患者さんでそれが触れたら、肺高血圧であることを示唆します(LR+3.6)。そしてIIpが触れなければ、MSでの肺高血圧はとんでもなく否定的(LR-0.05)。

 肺高血圧の話が出たついでですが、聴診でII音亢進の有無は、肺高血圧の診断になんら寄与しない様です(LR+NS、LR-NS)。意外ですよね…。でも国試では肺高血圧か!?と強く疑いましょう。

 心臓の触診1つ取っても色んなことが分かるんですね。身体所見は限界をきちんと把握した上で行えば大事な情報がきちんと得られるんだなと、再確認できるようなエビデンスばかりでした。

 ただこの本では、仰臥位では健常人の25-40%で、側臥位でも50%ほどでしか触知できないとされています(仰臥位で見えたら左室拡大を少々疑います)。でもアメリカ人のデータなので、日本人なら彼らより痩せてますからもうちょっと触知できる確率は上がるのかも?
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