2012
02.04

救急外来で使用する検査項目~マイコプラズマIgM

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 最近はマイコプラズマが流行しているので、救急外来でも見ることがあるんじゃないかなと思います。この病院(名大病院を指します)でも迅速検査でマイコプラズマIgMを測定できますが、この特性を知った上で使用することがとてつもなく大事。

 2009年のclinical infectious diseaseに掲載されている論文を見ると、この検査(イムノカード)は、

感度81%、特異度63%

とされています(1)。もうちょっと高い数字と思っていましたが、意外にも低い数字ですね。この数字だけで尤度比をだすならば、陽性尤度比2.2、陰性尤度比0.3になります。一般的に役に立つ尤度比は5以上もしくは0.2以下なので、この数字はあまり使いものになりません。マイコっぽいなと考えてる患者さんで陰性となったら、困ってしまいますね(検査前確率50%でイムノカードが陰性でも、検査後確率は20-30%くらいはあります)。

 同じくその論文では、年齢別に感度特異度を出しています。

0-9歳:感度97%、特異度48%
10-18歳:感度89%、特異度43%
19歳以上:感度40%、特異度82%

 そして、発症から測定までの期間では、以下のような感度。

0-21日:感度76%
22-59日:感度94%
60日以上:感度100%

 ただし、症例数がかなり少ないという問題もあり、これらの数字が絶対正しいとは言えません。他の論文では異なる数値が示されています(2)(3)。

 またこの論文とは別に、マイコプラズマIgMを測定する際には、一般的に以下の条件を見定めねばなりません。

1.測定時期
2.マイコ既往
3.年齢


 1.においては、マイコの病像が形成されてからIgMが産生されるまで3-4日かかるため、発症早期には陰性になることが多いと言われます。2.においては、これまでの約1年間でマイコ既往があれば偽陽性となることが多いとされます。3.に関しては、成人ではIgMの産生能力が弱いために偽陰性になりやすく、逆に小児ではIgMの産生能力が強すぎるために、既感染でも陽性となってしまう可能性が指摘されています。蛇足ですが、検査値でいうとマイコ肺炎ではASTやALTは殆ど上昇しないと言われていまして、レジオネラとは対照的ですね(Legionnaires' Disease: Clinical Differentiation from Typical and Other Atypical Pneumonias; Infectious Disease Clinics of North America Volume 24, Issue 1 , Pages 73-105, March 2010)。→ただ、上がることもあるよ!と言っている論文もあるんですよね。。。自分はマイコでばんばん肝酵素が上昇しているのを見たことはないですが、ちょろ上がりは少しあります…。

 この1-3の条件をきちんと考えて、目の前の患者さんに活用すべきでしょう(この場合の活用は、検査を使用しないという意味も含まれています)。

 診断と言うのは、検査が陽性だから確定、陰性だから除外などと単純に白黒つくものなんかじゃありません。検査は特性を知って使いこなすもので、こちらが振り回されるものではないんです。検査前確率で大きなミスをしないことが最も重要となってくるため、適切な問診と診察を行いましょう。

 総じてこのマイコプラズマIgM迅速検査は早期診断に向かないものであると考えておくことが無難です。小児の1週間続く咳において、あくまでもスクリーニングとして用いるのであれば、まだ有用性は高いかもしれません。

 参考文献ではPCRについても言及されています(1)(2)(3)。興味があればご参照ください。


☆参考文献
1) Comparison of Laboratory Diagnostic Procedures for Detection of Mycoplasma pneumoniae in Community Outbreaks. Clin Infect Dis. (2009) 48 (9): 1244-1249.
2) New insights into the pathogenesis and detection of Mycoplasma pneumoniae infections. Future Microbiol. 2008 December ; 3(6): 635–648.
3) Detection of Mycoplasma pneumoniae in adult community-acquired pneumonia by PCR and serology. J Med Microbiol December 2008 vol. 57 no. 12 1491-1495
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