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2019
07.18

2019年精神神経学会総会まとめ その2

6月の精神神経学会総会で出席した講演について、写せた分だけまとめて2回に分けてアップした、その2回目。

2日目のつづき
●教育講演11:児童・思春期精神障害を理解するための3要因:アタッチメント、虐待、発達障害

子どもの精神疾患の発現過程。生物学的要因、パーソナリティ傾向・ストレス対処法、養育環境・現在の環境からのストレスが相まって平衡状態を生んでいる。精神疾患の発症とはこの平衡状態の崩壊。リスク要因は、生物学的要因として神経発達症、精神疾患親和性、心身の消耗。養育環境に児童虐待、DV、逆境的養育環境。パーソナリティ傾向・ストレス対処法に発達障害特性、cPTSD特性、強迫性、不安傾向、現在の環境からのストレスに友人関係のトラブル、過度に緊張を強いられる学校環境など。
評価軸を考える。3つあり、養育環境の質、発達特性、自己とパーソナリティ形成上の特徴

評価軸1 養育環境の質は、アタッチメントの様式に大きな影響を与える。子どもは無力感、無価値感、無効力感とそれらに相応の怒りを持続的に抱えることになる。

評価軸2 発達特性は、出生以来の発達経路がいかなるもので、そこで何を獲得して何を形成してきたか。発達段階はどの段階にあり、どの年代の心性が優勢なのかにも注意。

評価軸3-1 自己とパーソナリティ形成上の特徴
アタッチメントの質と量はこどもの自己およびパーソナリティの形成に大きな影響を及ぼす。大人と子ども両者の相互関係の中で決定される。
Aタイプ(回避)、Bタイプ(安定)、Cタイプ(アンビバレント)、Dタイプ(無秩序無方向)。A~Cはよくあるタイプ。Dはやや病理的ではないかと言われる。しかし、Dでさえ病理的な心性を抱える子どもは半数ちょっと。健全な育ちをする子も多い。

評価軸3-2 自己とパーソナリティ形成上の特徴2
児童虐待は、そのタイプの別なく心理的発達に大きな影響を与える。cPTSDやアタッチメント・トラウマなどの概念がある。cPTSDは自己組織化の障害、すなわち感情制御困難、否定的自己概念、対人関係障害を示すことである。またアタッチメント・トラウマがもたらすのは根深い不信感。

治療は?
養育環境には母子相互交流の修正と改善(PCIT、ペアレントトレーニングなど)、ストレス対処法・パーソナリティ傾向には自己機能発達支援、ストレス対処法と対人関係スキルの回復・調整・開発。現在の環境からのストレスには、逆境的環境の質的改善、資源としての環境の調整と開発。生物学的要因には脳機能改善を目指す休息や薬物療法など。

子どもに経験として蓄積されるべきもの
止められること・保護されること→お世話されること・育まれること→漸進すること・自己を育むこと→止められること・保護されること→…
このループが大事。

子どものこころは可塑性に富み、回復可能性の高い柔軟さとしなやかさを特性としてもっている。危機介入モデルだけでなく、傷つき病んだ心をまもり、かつ育むことを目指す治療的養育モデルを組み込んだチーム医療を。


●シンポジウム43:精神医学における価値の諸相

科学性と価値は、精神医学の哲学の2大テーマ
医療実践における価値負荷性
価値:好みや欲求、願望、期待などによる評価も含まれる。価値負荷性とは、価値づけを帯びていること。
医療における価値の問題
・疾病概念の価値負荷性
 どのような点で悪いものが病気なのか? 問題の背景には、ドラペトマニアや同性愛
・医療実践の価値負荷性

疾病概念を価値から自由にするのは難しい。よく定義されたものは、健康のウェルフェア理論。ある状況で何らかの目標を実現できるというのを健康とする。じゃあその目標とは? 最小限の幸福(ウェルフェア)を実現する必要十分条件となる目標。
ウェルフェアは社会が決める。同じ文化に属する人々は良き生について同様に評価する→共通基盤の形成。
医療者はあくまで技術者である。最重要目標の定式化に医師自身は参与すべきではない。
そうすれば価値の問題から医者は自由でいられるのか。そうではないだろう。学問的主張をもたらしうる実践上の帰結についての注意義務。個別事例でも、感染症の患者の隔離の是非など。医療実践は価値負荷的。
精神科医療の実践では、医療の利用は時に非自発的、患者さんとの判断がしばしば一致しない、価値が対立する。
価値の問題は医学の中心にある。それは、法的、倫理的な規則では対応しきれない。
VBPの10の原則。二本足の原則、軋む車輪の原則、科学による促進の原則、患者中心の原則、複数の教えの原則…
複数の価値が関わっており、患者さんの価値観を中心としながらも医療者自身も自らの価値観を帯びている存在だということをごまかさずに。
VBPでは、医療者自身が当事者であり、個別事例の水準で、実践に関わる複数の価値を考える。
自分が持っている価値観に自覚的であると言うのは簡単だが、医療者に突きつけられてくる問題。

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生物学的価値と社会的価値
精神疾患を特徴づけているのは、心的な異常。身体疾患と同様に生物学的な価値規範からの逸脱なのか、社会的な価値規範からの逸脱なのか。
生物学的価値に基づいて精神疾患を定義する試みはあった。Wakefieldの進化論的機能不全説など。
生物学的価値 対 社会的価値
社会的価値であると恣意的だといわれるが、決してそうではないよ。
リベラリズムを援用。Rawlsの正義論。無知のヴェール:社会的地位や資産や状況について知らないと仮定すること。
偶然の結果でばらつきが生じる自然的基本剤の不均等に対して社会制度がどう対応するべきかを論じる際にも応用できる。
Grahamの議論。Basic Minimumに含めるべき精神疾患の外延について論じた。
基本財としての精神的健康。行為を可能にする機構(machinery of action)の要素である。
一階の能力と二階の能力。能力を発展させる能力(二階の能力)の恵まれない/損なわれることが精神疾患の概念と関連。それが未発達であるという人に対して必要なのは医療ではなく教育。
特定の人生目標においてのみ必要となる財は基本財から排除される。原初状態に置かれた人は、前述の諸能力が自然的基本財であり、これらに恵まれない人を厚遇するような医療保険制度の必要性に合意するだろう。→自然的基本財のリストは社会相対的。

精神疾患概念に含まれる価値が生物学的価値であるという主張は擁護が難しい。精神疾患は自然的基本財としての精神的健康の不足として捉えられる。

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精神医学は価値中立的か、社会的問題の医療化という批判にどう応答できるか
提案1:精神疾患を有害な機能不全として定義。さらに害を道徳的な意味を含まずに定義する。ただし、害を狭く定義すると、反社会的パーソナリティ障害や小児性愛は?? 害を広く定義すると、逮捕がもたらす苦痛なども含めれば、社会によっては同性愛や政治的抵抗も精神疾患に…。
提案2:純粋に生物学的に定義する。反社会的パーソナリティ障害は精神疾患と言えなくなり、同性愛は含まれてしまうのではないか。など。
提案3:純粋に心理学的に定義する。意思決定の異常を狭く定義すると、広く定義すると、それぞれ問題あり。
提案4:プラグマティズム(有害な状態のうち、精神医学の対象とすることが有益であるもの)。じゃあ治癒不可能なものはどう? 進歩によって医療化が進むのではないか?

ではどうするか。
悪と精神疾患の線引き。いずれの基準によっても、現在よりも禁欲的もしくは包括的な線引き。
精神疾患の単純な定義を求めるのが間違いではないかというが、正当な医療化と不当な医療化の場当たり的でない区別は必要では?
一方で、道徳性にも生物学的な基盤があるとすれば、悪を生物学的な異常の一種と考えることは自然。
他方で、「極端な悪はそうであるがゆえに精神疾患である」という考えは受け入れがたいのでは?悪の医療化は責任を巡る社会実践に対する脅威。
背景にある哲学的問題=因果的決定論と自由意志
従来の見方:自由意志にもとづくもの=悪、そうでないもの=精神疾患
どちらも生物学的なメカニズムの産物なら両者をどう区別できるのか。

現在のような仕方で精神疾患の境界を画定するのは困難。悪の医療化は促進されるかもだが、緊張をはらむ。

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価値中立的な心の健康の定義は可能か
精神医学は心の健康をもたらすための学問。しかし心の健康とは? 明確なコンセンサスはない。WHOの定義も判断する人の価値観や人生観によるのでは。
それに左右されるものだとすると、精神医学の存在基盤が危うくなる。
心の健康も普遍的な真理とみなしたい。自然的なものとして実在すると考える自然主義的実在論の立場がふさわしい。
心の健康の定義を試みる。
人間の心の本態は適応的な社会文化的行動を解発する身体的準備状態だ。
人間の心が持つ規範性は、個体の社会文化的環境への適応を助けるべしという規範性を持つが、それは進化の過程で選択されてきたという生物学的来歴を反映している。
一つひとつの行動について生物学的来歴を参照することのできない私たちは、一体どのようにして健康な心について知ることができるのか。
森田正馬;心の健康哲学。存在論は「事実唯真」、認識論は「恐怖は恐怖せざるを得ず、欲望はこれを諦めることはできない」
欲望と感情がすべてを教えてくれる。今個々で何をするのが最も適応的かを教えてくれる。欲望と感情の力に素直に従うことにより、社会文化的環境に適応しつつ固有の欲望を発揮し続けることが健康な有様。

心の健康とは、感情に素直に従って社会文化的環境に適応しつつ欲望を発揮し続けている状態である。

*「感情に素直に従って」という結論が残念ながら稚拙な印象。

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精神疾患と価値の相対的普遍性
階層的人間観を採用し、その元で精神疾患には価値がどう関わるのか。
階層的人間観。下から物質、生命、心、社会。上位の階層は下位には還元できない。しかし上位は下位に付随性(創発性)がある。
最低次の物質の層には法則がある。それは、逸脱がありえないということ。法則に反する減少があっても法則が改定され、現象との一致が回復する。
規範。生命、心、社会にはそれぞれ規範がある。規範には逸脱がある。規範を遵守することが正常、健康。逸脱は異常、病気。規範の存在・遵守・逸脱には自由意志による場合とよらない場合(決定論)とがある。社会と心には自由意志が。
自由意志による規範では正当な規範(持続可能)と不当な規範(持続不能)とがある。
各層において普遍的な規範と個別的な規範とがある。
価値。規範が存在する層には、その層に特有の勝ちがある。平和、安心、健康など。
価値と規範の関係。規範の遵守=価値。規範からの逸脱=反価値。
物質は価値と無縁。
相対的普遍性。相対的に普遍的な規範。一見相対的に見えるが、じつは普遍的規範が異なる条件下で異なる姿で顕現したもの(同じ道徳的規範が異なる歴史と風土により異なる姿で顕現)。相対的に普遍的な規範に対応する価値は相対的に普遍的。
精神疾患と価値。精神疾患は、心と社会の階層での規範からの逸脱(反価値)。生命の層での逸脱がある場合は生物学的要因。ない場合は身体的病因なし。で、逸脱は自由意志によらない。自由意志による逸脱は道徳違反、犯罪、詐病…
精神疾患の相対的普遍性。病的妄想もVRやMR普及社会では病的ではないかも。しかし、根底にある規範は普遍的。「精神的に快活な生を保持すべし」。現在社会での規範と未来の社会での規範の異なり。
不当な規範と精神疾患。不当な規範 持続不能な規範:????????
病んだ規範と不当性。カンギレムの言。性を持続させる規範には、病んだ規範:撹乱に対して脆弱な規範。健全な規範:~頑健な規範。
病んだ規範は不当か? 病んだ状態から脱却不能の場合、病んだ規範はこの制約下では最善、それゆえ正当。脱却可能なら不当。
サズの言。精神疾患は存在しない。精神疾患という言葉は比喩だ。
しかし、身体疾患がなくても、精神疾患はありうる。精神疾患患者の規則は病んだ(脆弱な)規範である。精神疾患が脱却不能なら正当な規範、脱却可能なら不当な規範。

*「自由意志、自由意志」とは言うけれど、本当の自由意志なんてのはとても難しいと思います…。

●シンポジウム59:神経炎症の役割 せん妄、うつ病、統合失調症、疼痛

せん妄のエピジェネティクスと炎症性サイトカイン遺伝子及びゲノム網羅的DNAメチル化解析
せん妄の発見は質問紙ではゆらぎがあり、EEGでもテクニックが必要。バイオマーカーが要求される。せん妄リスクファクターは華麗、感染症/外科、しかし病態生理はよく理解されていない。動物実験モデルでは、高齢のLPSや手術的な侵襲を加えると認知機能障害。サイトカイン上昇。ミクログリア活性化。
ミクログリアのプライミングが重要。Agedではすでにプライムされている。
サイトカイン仮説。人間でも炎症性サイトカイン上昇。Primed microgliaは高齢の動物で生じている。人間でも同様だろう。しかしなぜそうなっているか。エピジェネティクスが関与しているのでは。サイトカインの発現のコントロールにエピジェネティクスが?
DNAメチル化が年齢によってダイナミックに変わる。
年齢によってエピジェネティクスが変わればミクログリアのプライミングが起きる。人間でもそれが生じていることを確認したい。Shinozaki G 2018
血液:TNF-αのDNAメチル化と発現。
脳:グリアとニューロンでは、グリアにおいてのみ同様の傾向。
せん妄の患者さんと対照群。せん妄の患者さんでは同様の結果。
ネットワーク解析(遺伝子がどういう絡みをしているか)もしたらしい。
DNAm age:メチル化の状態によって年齢を予測できるというもの。せん妄にならないケースのほうが、実際の年齢が予測の年齢より若い。

メチル化レベルをTNFα遺伝子で調べると年令とともに減少する。血液やグリアで。

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うつ病における神経炎症の役割
縦断的、横断的な診断ではなくRDoCも出てきている。バイオタイプ別に見よう、というもの。
病態仮説。エピジェネティクス、幼若期ストレス仮説、神経内分泌仮説、モノアミン仮説、神経可塑性仮説、神経炎症仮説。
うつ病の異種性。神経内分泌、神経炎症、モノアミン、神経可塑性などにより異種性があり、現在の抗うつ薬は一部に効き一部に効きづらいなど。それぞれのバイオマーカーを見つけて個別の治療薬を。
過剰な炎症反応。代表例は感染が引き起こす精神症状。
サイトカインが行動に及ぼす影響。ストレスと脳内炎症。ストレスによりミクログリアからサイトカインが。
インフラマソームが注目されている。2002年に発見されたもの。様々なものを認識して炎症を引き起こす蛋白複合体。Caspase-1の活性化に必要。Science 2010 327
ストレスが脳内炎症を引き起こす機序。Iwata Biological psychiatry 2016
NLRP3・インフラマソームを介した疾病横断的な治療の可能性。NLRP3がうつ病、身体疾患、心身症、症状精神病などが説明可能? Iwata Brain behavior immunity 2013 105-114
BHB(MCTという中鎖脂肪酸は摂取すると体内でBHBに変換される)というケトン体がNLRP3を阻害する! 動物実験で、抹消投与するとうつ予防効果があった。TNF-αの値は下がっていた。IL-1βは下がっていなかった。ストレスがかかるとIL-1βはすぐに上がるがすぐに戻る傾向があるため、時間が経った時に見たら変化をとらえられないかも。
BHBを中枢に直接投与しても予防できた。前頭葉での結果。海馬への投与ではダメだった。
炎症にフォーカスを当てた治療。他の候補。DAMPs→ミクログリアのNLRP3→IL-1β→種々の炎症性サイトカイン→COX-2→プロスタグランジン
COX-2阻害薬、抗体療法、ミノサイクリン、P2X7受容体阻害薬なども候補。

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統合失調症の新規治療法開発
6番染色体の関与。MHC領域がその短腕にある。MHC領域は全ゲノムの1/1000
補体4(C4) への注目。Nature 2016 530 Sckar
今までの整理。これからは早く治療を!Lancet 388 86-97 2016 Owen
C4がニューロンに結合することでミクログリアがそれを食べちゃって、刈り込み過剰となってしまう。
他にも自己免疫疾患やアルツハイマー病でもC4aの関与が指摘されている。
ミノサイクリンやNSAIDs、そして一部の抗精神病薬にも抗炎症効果があることも分かってきている。
再生医療(脂肪幹細胞)による抗炎症作用も研究が進んでいる。

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心因性疼痛における神経炎症の役割
心因性疼痛では中枢神経系が重要だろう。末梢からの情報を脳に送り、かつ下行調節系が接続する脊髄後角が大切。ただし、心因性疼痛への抗うつ薬の効果は限局的であるため、下行調節系の5-HT/NA作動性ニューロン以外の部分に着目する必要性が高い。
1次から2次ニューロンの伝達には、グルタミン酸、サブスタンスP、CGRPである。これら以外に1次ニューロンから放出されるBDNFはNMDA受容体修飾→グルタミン酸の作用増強により、NGFはBDNF・サブスタンスP・CGRPの発現を増加させることにより、1次ニューロンから2次ニューロンへのシグナル伝達を増強する。よって、ケタミンや抗NGF抗体、CGRP受容体阻害剤などは効果が期待できるかも?
脊髄後角のニューロンの殆どは介在ニューロン。興奮性と抑制性の2種あり、このバランスで伝達効率が決まる。
脊髄後角のグリア細胞に注目。ここから放出されたサイトカインが重要な役割を果たしているかも。
サイトカインはどのようにして疼痛を増強するのか? 血管内皮細胞に作用してPGE2の分泌を促進し、それが下行調節系の起始部に作用してこの系を抑えてしまう。他にもサイトカインがニューロンに直接作用することも言われている。
現時点でアストロサイトを選択的に抑制する薬剤で実用可能なものはない…。
ミノサイクリンの髄腔内投与はすごいらしい。経口投与はダメだと。


3日目
●シンポジウム67:ミクログリアは精神疾患の成り立ちにどのように関与するのか?

うつ病と認知症の共通病態としての神経炎症
AD:Aβ蓄積から症状まで10~15年かかる。
うつ病はADのリスクファクター。
慢性炎症とうつ病との関連は何度も指摘されている。
ミクログリアとは?:脳マクロファージとして中枢神経系の自然免疫の中心的な役割を担う。中枢神経系の発達や恒常性維持にも重要な役割を果たす。
PETイメージングでは、抑うつが強いほどミクログリアが活性化している@ACC
自殺念慮が強いほど、というのもある。
心理的負荷とミクログリア。加齢あるいはストレス負荷後に生じるミクログリアのプライミングには共通のメカニズムが関与する。2018 brain behavior immun
サーカディアンリズムとミクログリア 2015 brain behavior immun
ADにおけるミクログリア。ミクログリアの前頭皮質における活性化はAD発症の前駆期のみに認められる。認知機能低下の進行が遅いAD患者のほうがミクログリアは活性化していた。前駆期における活性化は保護的に作用している?
ミクログリアの活性化 dystrophicがある(退行変性したミクログリア)2016 science
ドネペジルはミクログリアによるAβ貪食能をアップさせる? ミクログリアの機能を維持もしくは増強する作用を持つかも。
ドネペジルを高齢者のうつ病に使うと?? ADへの移行は防げないかも。また、MCIを伴う高齢うつ病患者に対して抗うつ薬に併用するとうつ病の再発率が高まったというのも。
ADの発症を予防:糖尿病、中年期の高血圧や肥満、喫煙、うつ病など(あとは運動と睡眠? 追えなかった)。
肥満者の視床下部ではdystrophic microgliaが増加している。
DLBにおけるミクログリアの関与。特発性レム期睡眠行動異常症患者の左黒質においてミクログリア活性化が見られる。

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心理社会的活動とその破綻に関わる可能性
自殺患者における死後脳。ACCとDLPFCなどでミクログリア過剰活性化。
ミノサイクリンはミクログリア活性化抑制薬として用いられる。
せん妄にミノサイクリン。
マウスにストレスを与えるとミクログリア活性化。ミノサイクリンはその活性化を抑える。さらに、ストレスがない場合でミノサイクリンを投与すると、更にその働きが抑えられる。
ミクログリアは定常状態でもシナプスとコンタクトしている。Wake 2009
ミノサイクリンを飲んでもらって信頼ゲームをする実験。Psychopharmacology 2012 watabe
例数を増やしてもう一回トライ。Kato Plos One 2012
人の気質や性格、ストレスへの反応に対してミクログリアが影響を与えている?

血液マーカーでミクログリアの活性化を見られないか。
キヌレニンの代謝によってミクログリアかアストロサイトか。そこから何かないか?
3-ヒドロキシ酪酸、トリプトファン、キヌレニンなど。
こころとミクログリア Front psychiatry 2013 Kato

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ミクログリア破綻による精神疾患の可能性
ミクログリアはシナプスに接触して神経細胞の同期性を高める。
Zhao 2018
ミクログリアが体循環系炎症に伴い血管周囲に集積。血液脳関門の透過性を制御しているのでは。
諸刃の剣。ミクログリア活性化阻害によって血液脳関門は保護される。この保護を維持できれば。
病的なミクログリアから健康なミクログリアに戻す治療薬があると良いね。

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慢性疼痛
様々な脳部位のミクログリアも疼痛病態形成に関与している。VTA、PAG、海馬、ACCなど。
マウスの社会的敗北ストレス負荷モデル。単回ストレスのみでは痛みが引き起こされない?過去にあれば。
社会的敗北ストレス負荷後で炎症性サイトカインの増加。
疼痛閾値再低下時の脊髄後角ミクログリア。ストレスに対する炎症応答を介したミクログリアの再活性化が疼痛の遷延や再燃を引き起こすのでは?


●シンポジウム79:当事者研究、オープンダイアローグ、ACTの協働

当事者研究の可能性
当事者研究は当事者が認知行動療法の主体者となることができ、自己効力感を高めて自身を回復させる。その人なりのメタ認知が育まれる。
ともに哲学するということ。オープンダイアローグとの共通性。共同研究ということ。何が生まれるかわからないダイナミズム。
ともに仲間になること、ともに語ること、ともに弱くなること、ともに研究すること
どう生きてきたか、今をどう生きるか、どう生きれば良いのか。それについて一緒に研究し対話する。生き方としての当事者研究。それがそれぞれの回復を促進する。
研究的対話を促進する工夫が必要。
当事者の言葉「妄想の壁をくぐり抜けて、自分に人間としてぶつかってきてくれた感覚」
コミュニケーションは、伝わらないということから始まる。対立や選択による痛みを通過して生まれる対話の場には本当の優しさがある。

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当事者研究と共同創造
受動的な消費者ではなく、より高い成果をもたらすサービスを設計して提供する能力を持つ重要なエージェント。
障害は、インペアメントという医学モデル→社会モデルのディスアビリティに。
障害から回復するというものさしを、専門家がつくるものからみんなでつくるものに。
パーソナルリカバリームーブメント。当事者の語りを扱ってきた。
支援者側からも、社会実装を含めることが大事だと。当事者と支援者の共同創造に。
具体的にどのようにすべきか。日本の当事者研究のようなものはまだ少ない。ハウツー:グラント応募の計画、研究の設計と管理、研究の実施、研究データの解析、研究成果の広報。
関与のレベル:相談、共同研究、ユーザー指導の順に高くなる。
共同創造の困難。当事者の参加は象徴的なレベルに留まっている。リサーチャーとしても孤立しがちになる。
当事者コミュニティの重要性。これは日本の当事者研究が一歩リード。
自閉症の当事者からの研究。コミュニケーション障害はディスアビリティなのに診断基準に入りインペアメントと誤認されてしまう。真のインペアメントは、感覚過敏、内臓感覚と害受容感覚の統合の弱さ、予測誤差への過敏さ、エピソード記憶の統合不全。ではないか。
当事者研究の臨床介入研究も走り出した。

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倫理的であることの治療的意義
長期間のスティグマにさらされ、それを内面化してセルフスティグマに。これが自らの欲望を抑えてしまっている。意思表示が難しくなるので、欲望をまず。

自由、権利、尊厳
バルセロナ宣言。自律、尊厳、不可侵性・統合性(病気と個人を切り分けない)、脆弱性(われわれすべてが病を発症する脆弱性を共有している)
オープンダイアローグ。ODLONG研究 Psychosis 9 2017
倫理的であることは治療的である。自由の尊重、権利の尊重(あらゆる決定を当事者の目の前で)、尊厳の尊重(診断や症状を用いない。困難な状況にあるまともな人)、多様性の尊重(ポリフォニー。安易な妥協はしない。違いを違いのままとして)、権力構造の最小化(チーム医療のセッティング、不確実性への耐性。専門家だけの対話禁止、専門性を脱ぎ捨てる)、責任と包摂性(同じチームが集結まで関わる)、選択肢を広げる(アイディアをお盆に乗せる)、対話主義(自立性と統合性を前提として脆弱性を共有する)

*ここは斉藤環先生の講演だったのですが、EBMの定義を間違えているのでは?と思いました。エビデンスに偏った治療のことをEBMと呼んでいるように感じました。EBMは決してそうではないんですけどね。

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ACT実践に対話文化を育むことで見えてきたこと
ACTは、もともと脱施設化の弊害をカバーするために。日本では脱施設化が進まなかったので、それを促進するという意味合いがあった。
ACTを日本に導入するに際して大切にしたこと。リカバリー、ストレングス、可能な限り、(強制)入院を回避する
オープンダイアローグとACT:目的を持った対話(ACT)と対話のための対話の違い(オープンダイアローグ)
特に、不確実性に耐える、対話主義というのがACTになかった。対話実践によって、安心感や安全保障感が生まれた。

*このACTはアクセプタンス&コミットメントセラピーのACTではありません。包括型地域生活支援のことです。

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日本のACTは薄められたアウトリーチ。言ってしまえば訪問看護の独占であった。すべてを治療対象としてしまっている。悪くなったらいつでも病院に連れて行くという宣伝文句。そして、ACTでもプロブレムとしてみるクセが抜けなかった(専門家性や治療者性ならでは)。オープンダイアローグによって一つ抜けていけるのではという期待。対話の実践と、24時間以内にチームを組んで現場に行って、その場でミーティング。対話の実践よりも、チームを組んで云々というシステムが難しい。精神医療のシステムそのものを変えていかねばならない。


●シンポジウム88:精神疾患の背後に発達障害特性を見いだしたとき、いかに治療すべきか

強迫症
発達障害における強迫症?発達障害を背景とする強迫症状?
強迫症の発症時期は児童思春期と成人期の二峰性(Anholt 2014)
子どもの強迫症に併存しやすい障害:ADHD、チック、特異的発達障害、トゥレット
ASDの常同的な~について強迫性という表現が用いられていることが少なくない。
併存が議論されるADHD・チック・トゥレットと、鑑別が議論されるASDに分けられる。
が、鑑別という点だけでなく併存の議論も必要。ASDとOCDとの関係を以下に。
DSM-IVの広汎性発達障害の説明に、こだわり行動だけが目立つ児童では多くが特定不能の広汎性発達障害と診断されてきた。
DSM-5でA項目とB項目の両方が必要になった。Aだけだと社会的コミュニケーション症。Bだけでは?という問題。こだわり行動の質的な意味、発症の仕方、A項目をきちんとみよう。
OCD基準変更点。“望んでいない”、から“不適当”に変わった。不合理性の基準がDSM-5から無くなった。
自我違和感の存在が必要なくなったが、基本病理としては不安や不快と言った陰性の感情を伴う強迫観念とそれを中和するために強迫行為を繰り返すという理解。ASDでは興味のあることへの常同反復行動(多くは陽性の感情や興味に基づく行動)。制限されたらパニックにはなるが繰り返し行動自体が不安不快に支配されているわけではない。
ASDとOCDの併存については、自我親和的になったり高機能群ではそれに反したりなど。
OCDに対する暴露反応妨害法。不快指数がモニター要素。よって、深い感情が弱すぎる課題ではあまり効果的ではない。
自我違和性が低い児童に関してはOCDの予後について心理教育を繰り返し、自我違和性が高い児童に関してはマインドフルネスについて心理教育。強迫症の外在化(ニックネーム)。ASD特徴が強いときは暴露反応妨害法前に関係性を構築するための介入の必要性。
暴露反応妨害法は行為を止めるには有効だが強迫観念をどう扱うかは議論されていない。そして、感情の認識が難しい児童もいる。マインドフルネスなテクニックが必要。
関係性の構築については、プレイセラピー。かなり丁寧にやる必要がある。
認知・感情・行動の分類、ASDでの注意。身体感覚の要素も扱う、陰性感情を持つことの肯定。ゼロに戻ると“落ち着いている”と具体的に説明、認知の扱い(ドラマセラピー>>ロールプレイ)、ツールボックスの使用、例えばCAT-Kitの使用。
ASDがあると、手前の関係性づくりが大事。

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発達障害に伴う不安と表現型としての不安症
認知行動特性だけで語れるのか。
ASD特性と不安。他者のまなざしと意味を感じ取れない不安、表情や行動の意図を感じ取れない不安、先に生起する事象が予測できない不安、多様な出来事を統合的に把握できない不安、様々な感覚刺激が押し寄せる不安、思いを上手く伝えることができない不安、しっくりしない社会的状況に置かれる不安、などなど。
ADHD特性と不安。自らの行動や感情を制御できない不安、言動の加減を理解できない不安、自らの望む関係性を自ら壊してしまう不安、後先のリスクを適切に評価できない不安、失敗を重ねてしまうことへの不安、目的に向けて順序立てて行動できない不安、注目・記憶したいことに焦点化できない不安、などなど。
発達障害特性が育ちに与える影響。養育者―児の関係(基本的信頼感のみ確立、強い分離不安、対象関係の成立の困難、感覚レベルでの安心)、身体像の発達(参照行動の乏しさ、身体図式のみ発達、未熟な身体像→特に二次性徴における混乱、自己存在の脅迫的確認→常同・自己刺激行動)、「対環境」の関係性(侵襲的環境刺激→持続的な不安緊張、社会的手がかりの読み取りの困難→被害的認知、環境の構造化→自己刺激、こだわり、見通し)、仲間関係(対人希求製の高まりと友情の実感のなさ)
ライフサイクルと発達障害のこのつまづき。青年期までがとても大事。
併存障害と二次障害:何でも二次障害と言われてしまっている現状。
自閉スペクトラム症診断の増加。
自閉症、社交不安症、選択性緘黙のSRS得点。
自閉スペクトラム特性は社交不安の危険因子となるか? コミュニケーション障害があると社交不安のリスクになっている様だ。
自閉スペクトラム症における対人不安。ASD特性そのものでなく軽度な特性があることによる不安ではないか。
自閉スペクトラム症は可能性を見積もれないことへの過度な不安。社交不安症は過剰な蓋然性の見積もりによる高い不安。
選択性緘黙は、特定の社会的状況に対して緘黙。選択性緘黙は単一の疾患ではない。
選択性緘黙と神経発達症との関連。
自閉スペクトラム症は可能性を見積もれないことへの過度な不安→不安や緊張の加速的昂進により話せない。特定の状況で緘黙する行動様式が固定。
自閉スペクトラム症と社交不安・緘黙:二次障害や診断閾値レベルによるものが背景に。
自閉スペクトラム症の不適応行動:過剰な対人負荷でパニックの反復。そこで何らかの対処行動。それを叱責したり否定したりすると逃げ場が失われ衝動行為に。
多くの問題の解決は時に容易だが、掛け違いの歴史が長いとほぐすのは困難。その状態がある種の準安定状態。家族も長年に経過し変えるためのエネルギーに乏しい。家族のみに委ねず、現実的解決を探ろうとする存在、家族も守ろうとする存在。

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発達障害という脆弱性を有する患者のトラウマ関連症状
幼少期から愛着形成に困難を抱えやすい発達障害児はトラウマの予後も厳しく、さらなるトラウマもある。

(症例提示あり)

発達障害があると、記憶が断片化しやすい、愛着形成に脆弱。圧倒的な自己否定。トラウマ治療は難しい。
安全基地と愛着機能促進。
安全感の保持+子どもから見た世界に思いを馳せて共有。治療構造化と生き残り。抑うつ、不安、外傷体験の振り返り。
トラウマ体験は、アタッチメントや自己調整が土台。トラウマ体験の統合には、土台を支えることが最も重要。

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ボーダーライン特性と発達障害特性
発達障害評価や養育環境評価は重要。どのようにパーソナリティができあがっていったのかを理解。
ADHDの外在化障害と内在化障害の展開。
ADHDの物質使用障害のリスク、中枢神経刺激薬は物質使用障害のリスク? 使用開始が早いとむしろ低い。早く開始すると家庭での生活や仲間関係の学習が安定化、そうすると不幸な展開を防げるかも。
メンタライジングとは、人の行動を志向的な心理状態(欲求、願望、感情、信念、目標など)の観点から理解し解釈すること。
子どものパーソナリティの発達。
ASDに生じるメンタライジング不全。斉藤 2017
二次障害的問題と思春期危機。幼少期から学童期にかけて極度の逆境体験を持っていたASD児は他者への悪意に過敏。他の子達は集団を作り、ASD児ははねられてしまう。それがさらに…。

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 以上でした。同一日内でも、学会全体でも、後半になるにつれて疲労の蓄積でタイピングのミスが…。
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