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2018
11.26

てんかん学会で勉強したこと2018:その2

 前回の記事に続いて、学会での勉強のまとめです。AMPA受容体など基礎医学のところはかなり疲れていて情報が抜けていたため、記事にはしませんでした。無念。


★神経発達症とてんかん

・神経ネットワーク形成と刈込 (Varghese M, Acta Neuropathol. 2017 Oct;134(4):537-566. PMID: 28584888)
神経細胞と興奮性神経と抑制性神経がある。このバランスがうまくいかないと様々な症状。
ASD関連症候群と神経細胞の形成と刈込 (Phillips M, et al. Neurosci Lett. 2015 Aug 5;601:30-40. PMID: 25578949)。
生体アミン神経系の発達 (Rakhade SN, et al. Nat Rev Neurol. 2009 Jul;5(7):380-91. PMID: 19578345)。
統合失調症も刈り込みと形成。過渡の刈り込み。抑制性シナプスの減少。
GABAは胎生期にはむしろ興奮に働く。Clイオンは未成熟な神経細胞では外に出てしまう。発達すると逆。
神経発達の神経生理学的バイオマーカーはある? 3歳では入眠時の脳波が高振幅徐波。年を経るに連れて高振幅がなくなっていく。
・神経発達症とてんかんの関連
てんかんは患者さんの20-60%が精神症状や発達障害を示す。
併存症のないADHDは34%のみ (Reale L, et al. Eur Child Adolesc Psychiatry. 2017 Dec;26(12):1443-1457. PMID: 28527021)。
二次性のADHD 頭部外傷による (文献記載漏れ。同様のものがAltun H, et al. Childs Nerv Syst. 2018 Jul;34(7):1353-1359. PMID: 29696355)
Late onset ADHD (Caye A, et al. Curr Psychiatry Rep. 2017 Nov 13;19(12):106. PMID: 29130145)
神経発達症におけるてんかん ASDは5-38% ADHDは12-17%
ASDはてんかん発作の発症時期は1-5歳の幼児期と11-18歳の思春期に二峰性
てんかんでは20%でASD、30%でADHDの併存。てんかんの診断がそれらの診断よりも先なのが2/3(てんかんが脳へのダメージ?)
てんかん性脳症と神経発達症の併存 (Jacob J. Epilepsia. 2016 Feb;57(2):182-93. PMID: 26682992)。
神経発達症と睡眠関連疾患の併存もある。生活の質の向上を目指した包括的な診断と治療が必要。
長時間ビデオ脳波はカタトニアや非けいれん性てんかん重積を診るために重要。
グアンファシン:破壊的・反抗的症状に対する治療薬として期待されている。後シナプスα2Aノルアドレナリン受容体アゴニスト。それによりcAMP産生が阻害されてHCNチャネルが閉じ、前頭前皮質におけるシグナル伝達が増強されると考えられている。ノルアドレナリン作動性神経を活性化することで症状を改善する。血圧を下げる。チックにも効くらしい。
てんかん外科:30%は発作抑制が困難。てんかん外科治療で発達障害特性の改善が見られることも。
発達障害では睡眠障害の合併多い。情動行動、不安、注意力低下、攻撃性が増強する。ASDで半分以上、ADHDでも半数近く。てんかんや脳波異常の併存頻度が高い。
ADHDでは入眠時に、棘波、鋭派、徐波、棘徐波複合、高振幅律動性速波を前頭極や前頭部優位に認める。
幼児期は睡眠障害の存在が発達障害を示唆するポイント。
抗精神病薬が生体アミン神経系の発達に及ぼす影響。心血管系副作用や代謝系副作用などを引き起こし、成長期の生体アミン神経系の発達、小児の発達に影響を及ぼす危険性があるかも。
脳波異常を伴ったてんかんのないASDはバルプロ酸が有効。脳波異常を伴う易興奮性、衝動性、睡眠障害におけるバルプロ酸の少量投与。血中濃度は20―30で良い。特に就学前。
胎生期のVPA内服は、興奮系に作用し催奇形性、ASDの発症率を上げる。出生後の少量VPAは抑制系に働いて神経興奮を抑えるかも。
発達障害では睡眠障害の併存や入眠時脳波異常を認めることが多い。抗てんかん薬の使用が精神症状や睡眠障害に効果を認めることが多い。


★てんかんと発達障害:シンポジウム

・てんかんと発達障害は併存しやすい (Devinsky O, et al. Neurology. 2015 Oct 27;85(17):1512-21. PMID: 26423430)
・新規抗てんかん薬の効果と与える影響
抗てんかん薬の作用機序 (Brodie MJ, et al. Epilepsy Behav. 2011 Aug;21(4):331-41. PMID: 21763207)。
ペランパネルやレベチラセタムは精神症状の副作用がやや出やすいかも。少量から使用を。ラコサミドはそれほど精神症状(いらいらや攻撃性)を来さない。
・てんかんとADHD:脳波所見から
てんかんは病初期にADHDと誤診されることも。
前頭部突発波、突発波出現頻度について以下。
前頭部突発波はスティグマとも関連 (Kanemura H, et al. Epilepsy Behav. 2015 Nov;52(Pt A):44-8. PMID: 26409128)。
前頭部突発波と認知・行動異常 (Kanemura H, et al. Dev Med Child Neurol. 2012 Oct;54(10):912-7. PMID: 22759211)。
小児の前頭葉は脆弱性が高い。てんかん原性の獲得あるいは異常放電という要因で前頭葉の機能的な障害が生じやすいかも?
ADHDと脳波異常:焦点部位は前頭部とRolandicが多い (Kartal A, et al. Acta Neurol Belg. 2017 Mar;117(1):169-173. PMID: 27822696 Lee EH, et al. J Child Neurol. 2016 Apr;31(5):584-8. PMID: 26341812 Kanemura H, et al. Epilepsy Behav. 2013 Jun;27(3):443-8. PMID: 23603034)
脳波所見と行動面:前頭部突発波群では有意な正の相関(ADHD-RS)。ローランド波群では明らかな相関なし。
脳波所見と行動異常に関して、前頭部突発波はADHDと高い関連性。
抗てんかん薬がADHDの脳波と行動異常を改善させる? 抗てんかん薬によって脳波所見の改善を認めた59%で行動改善あり (Bakke KA, et al. Eur J Paediatr Neurol. 2011 Nov;15(6):532-8. PMID: 21683631)。
自閉性腕も同様のことが言えるかも。発作や脳波改善を促すことで、前頭部突発波を有する自閉症では行動改善。その他の焦点部位では発作や脳波改善のいかんを問わず、行動改善を認めなかった (Kanemura H, et al. Eur J Paediatr Neurol. 2014 Jul;18(4):482-8. PMID: 24703761)。
抗てんかん薬による行動改善:ADHD。前頭部突発波群はバルプロ酸で脳波が改善し行動も改善 (Kanemura H, et al. Epilepsy Behav. 2013 Jun;27(3):443-8. PMID: 23603034)。
脳波は発達障害の治療戦略にも有意義かもしれない。
・外科治療
ASDとADHDの2/3がてんかん発症後に診断されている (Reilly C, et al. Pediatrics. 2014 Jun;133(6):e1586-93. PMID: 24864167)。
てんかんの長期化が与える脳への影響 (Ben-Ari Y, et al. Lancet Neurol. 2006 Dec;5(12):1055-63. PMID: 17110286)。
てんかんと発達障害 (Brooks-Kayal A. Brain Dev. 2010 Oct;32(9):731-8. PMID: 20570072)
てんかん外科で発達はどう変化するのか:罹病期間が長いほど術後のDQ変化が伸びない
部分てんかんにおけるてんかんネットワークの異常。てんかん発作だけでなく、認知機能低下や精神症状、行動以上の原因となりうる (文献よく分からず。たぶんLado FA, et al. Epilepsia. 2013 Nov;54 Suppl 8:6-13. PMID: 24571111 や Siniatchkin M, et al. Epilepsia. 2013 Nov;54 Suppl 8:27-33. PMID: 24571114)
たとえば側頭葉てんかんにおけるNetwork inhibition hypothesis:皮質下のネットワークを介して意識を司る脳幹網様体が抑制され、脳全体の機能が低下 (Englot DJ, et al. Brain. 2010 Dec;133(Pt 12):3764-77. PMID: 21081551)。
・早期手術で発達障害を防げる? 脳の発達過程:生まれて1歳までのあいだでネットワークが形成される。その時にてんかんがあれば形成が乱されそうだ。今後の研究が必要 (Thompson RA, et al. Am Psychol. 2001 Jan;56(1):5-15. PMID: 11242988)。


★ロボトミー

・ロボトミーとは、Freemanの造語。ポルトガルのMonizが始祖。
・中世ヨーロッパ:頭痛やてんかん、精神疾患は悪い物質が原因と考えられた。瀉血、水責め、穿頭などが行なわれた。
HemessenやBoschなどの絵画にそれが見られる。
Stonehearst Asylum:2014年の映画。
ヒステリーに対する陰核、卵巣、子宮切除術は1800年代後期に行なわれた。Emile Zolaの小説にも出てくる。
Henry Cotton:患者に抜歯。治らなければ扁桃体切除、脾臓大腸卵巣も摘出していた。
・脳の切除
スイスのブルクハルト。1888年。大脳皮質を部分切除。
動物の実験も並行して行なわれていた。1922年にビアンキが前頭葉の両側切除が必要だと言った。
1935年にフルトンがチンパンジーの両側前頭葉切除。
人類初の両側前頭葉切除。1930年。Dandy(ブリックナー?)医師。Meningioma手術中に両側前頭葉切除。
こういったのが1935年のICNで報告。
モニスがロボトミーの始祖。世界はつの脳血管撮影をシた人でもある。Prefrontal leucotomyと自身では言っていた。
第一例:会議から4ヶ月後の1935年11月12日に施行。
初期の7例ではアルコール注入で行なっていた。
8例目からLeucotomeを使用し白質切開。
1936年に20例の結果を報告。
フリーマンが米国初のロボトミー。1936年。世界最多3439例施行。
1942年に200例の結果報告。
ケネディ元大統領の妹(ローズマリー)が23歳のときにフリーマンに施行されて後遺症。
・同時代の精神病治療法
1917年マラリア療法、1933年インスリン昏睡療法、1934年薬物によるけいれん療法、電気けいれん療法。1901年は持続睡眠療法があった。
インスリン昏睡療法はオーストリア。昏睡にして痙攣を起こした。ノーベル賞受賞。
薬物けいれんは、メドゥナさん。
電気けいれんは1938年に。
・経眼窩的ロボトミー
1946年。日本でもかなり行なわれた方法。
1953年 時点では、最年少が4.5歳。小児も一定数いた。
アメリカでは多くの手術が脳外科医によって行なわれた。
1940-1969年まで、アメリカで5万例、日本で3万例、イギリスで17000例。人口あたりで考えると、デンマークスウェーデンノルウェーフィンランドが多かった(4500、4500、2500、2300例それぞれ)。
Monizは1949年ノーベル賞。
ドイツとオーストリアではあまり行なわれず、代わりに安楽死。T4作戦。精神病に加え、遺伝病、労働忌避、ジプシー、登校拒否、てんかん、脱走兵、夜尿症、不潔、同性愛などに。優生思想であり、精神障害者を価値なき生命と断じた。ヒトラーは肉体的・精神的に不健康で無価値なものは苦悩を子孫に継がせるな、と『我が闘争』に。断種法→T4作戦→ホロコースト。
1954年クロルプロマジンの抗精神病作用が発見(ラボリ)。化学物質によるロボトミーであるが非効率的だとフリーマンは批判した。
ロボトミー自体はノーベル賞の出た1949年が件数のピーク。フリーマン個人のピークは1954年(CPが出た年)。CPの登場で状況は変わっていった。1960年代に激減。
スティモシーバーによる実験:1968年電極を留置。人を洗脳したと批判を受けた。報酬系に注目して、ゲイの治療に用いられたことも。
1972年は犯罪者に精神外科。バカビリー刑務所。
・小説や映画での扱いはどうだったか(一般の人への影響)。
1985年未来世紀ブラジル。2005年コールドケース、猿の惑星も、ランドンがロボトミーされた。有名なのが1975年カッコーの巣の上で。
女優フランシス1982年。
2010年のシャッターアイランド。
日本におけるロボトミー:中田瑞穂、広瀬貞雄
中田瑞穂。近代脳神経外科を始めた人。新潟大学に脳神経外科を設立した人でもある。1942年にロボトミーは全く無危険だと報告。
戦後になり本格的なロボトミー。1946年大阪大学と北海道大学ではじまり、1947年松沢病院、そして全国に。半数に効果があったと。
1950年に精神衛生法施行。布団で す巻 の患者が毎朝外来にいた。家人は「座敷牢はお役人に壊された」と言う。私費入院で家族負担が大きく、患者がおとなしく家にいてくれればと家族がロボトミーを希望したというのもあった。
廣瀬貞雄。日本で最多。1958年の報告では、3/4に有効だったと。
1973年。札幌ロボトミー訴訟。アルコール依存症の患者に対してロボトミー施行。他に、東大脳外科、守山十全病院、横手興生病院などで訴訟。
1971年に臺先生が矢面に立たされた。1975年に精神神経学会が正式に批判。
ブラックジャックでは脳性麻痺に対する電気刺激のことをロボトミーと誤表現。
他にもブラックジャックでは快楽の座などでスティモシーバーを埋めて感情を思うようにするなどの作品。
ロボトミー殺人事件。1979年。1964年にロボトミー (正確にはチングレクトミー) を受けた患者が自宅に押し入るも本人不在で母親と妻を刺殺した。
近年の精神外科 (Neumaier F, et al. World Neurosurg. 2017 Jan;97:603-634.e8. PMID: 27746252)。
強迫神経症にDBS埋め込み。など、技術の進歩。DBSでうつ病や強迫症などが改善。ガンマナイフはOCDにインドでよく行なわれているらしい。
まだ実験的な治療ではないか、ということ。
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コメント
先生、こんにちは。
「てんかんと発達障害」興味深く読みました。発達障害について、これからも記事にしていただければ!! それにしても、シンポジウムを聴きながらこれだけの情報をタイピング……すごいなぁ。
annedot 2018.12.02 14:39 | 編集
>anneさん

ありがとうございます。
色々と勉強すればするほど、いろんな病気が混じり合ってきて、正直なところ頭の中が混沌としてしまっています。
タイピングは後半ミスが多くなり判読不能な変換が行なわれていることもあり、ちょっと内容は削っております。
猛者がたくさんおり、聞いた講演すべてノーミス! ということもあるようで…。
世界は広いです。
m03a076ddot 2018.12.05 12:52 | 編集
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