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2018
11.20

てんかん学会で勉強したこと2018:その1

 去年 (その1その2)に引き続き、てんかん学会で学んだことを共有していきたいと思います。疲れが溜まっていてタイピングが追いつかなかったり意味不明な変換がされたり参考文献が漏れていたりということがあり、個人的には満足の行くメモではないのですが…。


★内側側頭葉てんかんの原因としての扁桃体肥大

・扁桃体肥大を伴うてんかんと精神症状
扁桃体はてんかん発作、発作間欠期の情動や行動、精神的合併症に関わる。
扁桃体肥大を伴う側頭葉てんかんは精神症状が多いのか、特徴的な精神症状があるのか、残念ながらこれにこたえる研究はないらしい。ヘテロなグループであり精神症状も多彩。
Ictal fear:意識減損は発展すると起こり得る、持続時間は2分以内、常同的、自動性は珍しくない、発作で睡眠から覚醒する、状況依存性は少ない、予期不安も少ない、など。
情動的負荷が複雑部分発作を誘発するケース。解離のようだったが、そうでなかった(Tamune H, et al. Epilepsy Behav Case Rep. 2017 Apr 27;9:37-41. PMID: 29692969)。
扁桃体肥大を伴わなくてもそういうことはある(Woods RJ, et al. Epilepsy Behav. 2006 Sep;9(2):360-2. PMID: 16877046)。
扁桃体肥大を伴う側頭葉てんかんで恐怖などの刺激を与えると…?(Holtmann O et al. Sci Rep. 2018 Jun 22;8(1):9561. PMID: 29934574)
・扁桃体肥大と自己免疫てんかん
海馬硬化が見られない側頭葉てんかんの一部に扁桃体の肥大
一過性の肥大群は経過良好。扁桃体肥大を伴うてんかんは、多くは中年期以降に発症する。約半数で発作消失。60%で扁桃体肥大の改善(Malter MP, et al. Epilepsia. 2016 Sep;57(9):1485-94. PMID: 27418040)
肥大の原因:発生期の異常(皮質異形成)、腫瘍性の病変(過誤腫など)、炎症性病変(自己免疫)
希少てんかんの診療指標(坂本光弘, 他. 診断と治療社.2017;146-149)
自己免疫性脳炎のpossibleとprobableとdefiniteの診断基準(Graus F,Lancet Neurol. 2016 Apr;15(4):391-404. PMID: 26906964)。
自己免疫性てんかんの診断アルゴリズム(坂本光弘, 他. 臨床神経.2018;58:609-616)。
髄液所見はこの文献(Malter MP, et al. Seizure. 2013 Mar;22(2):136-40. PMID: 23318046)。
自己免疫性てんかんへの抗てんかん薬は、Naチャネル阻害系の薬剤で2割が発作消失するようだ(Feyissa AM, et al. Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm. 2017 May 10;4(4):e353. PMID: 28680914)。
LGI1抗体陽性なら認知機能が障害されたままのことも(Ariño H, et al. Neurology. 2016 Aug 23;87(8):759-65. PMID: 27466467)。
・神経画像
視覚評価による扁桃体肥大の判定は再現性や一致性に問題あり
自動定量の精度は、海馬に比較してばらつきが大きくなる。
訓練された手動定量評価は精度が高いが時間と手間がかかる。
T2では有意な異常が見つかりにくい。T1で扁桃体容積の増加や側頭葉先端部の灰白質↑あるいは海馬頭部の肥大の報告が一部に。他、拡散テンソルやPET。
扁桃体肥大は側頭葉てんかんに見られやすいものではないのでは?(Reyes A, et al. Epilepsy Res. 2017 May;132:34-40. PMID: 28284051)←でも、発症年齢が低い研究である。近年の報告の多くはやはり側頭葉てんかんに扁桃体肥大が見られやすい。
・手術
扁桃体肥大を伴う側頭葉てんかんは側頭葉てんかんのサブタイプ
26%が薬剤治療抵抗性であり、手術が考慮される。肥大した扁桃体以外にもMRIでネガティブな海馬もてんかん原性領域のようだ。良好な手術成績を得るには、海馬への処置も加えるべき。


★てんかんと精神症状

・てんかんと精神症状の合併(Schmitz B. Epilepsia. 2005;46 Suppl 4:45-9. PMID: 15938709)。
てんかん患者さんの約30%が精神疾患を持つ。
精神症状が合併したら、てんかん発作に関連した症状か、抗てんかん薬が原因ではないか、をまず考える。
発作に関連した症状:てんかん発作そのもの、発作が多い時期に出現するもの、発作後に出現するもの。
発作後精神病:てんかん患者の2%ほど。発作(意識障害を伴う焦点性発作もしくは強直間代発作)後1週間以内に幻覚妄想や奇異な行動や常道変化が1日から2週間続き、この時は基本的に意識清明 (1ヶ月以上は稀)
発作後うつ症状、発作後不安症状、発作後軽躁症状、発作後もうろう状態(意識障害)←発作後もうろう状態は興奮や暴力に至ることもある
抗てんかん薬の副作用には注意を。ゾニサミドとレベチラセタムが多かった。出やすい因子は精神症状の既往、二次性強直間代発作がある、欠伸発作がある、難治性てんかん(2剤以上使用しても発作が消失していない) (Chen B, et al. Epilepsy Behav. 2017 Nov;76:24-31. PMID: 28931473)。
抗うつ薬で発作のリスクが高まる(Hill T, et al. BMC Psychiatry. 2015 Dec 17;15:315. PMID: 26678837)。
・PNES
治療について(Widdess-Walsh P, et al. Handb Clin Neurol. 2012;107:277-95. PMID: 22938977)。
PNESと診断したら:本人と家族に診断を伝える。抗てんかん薬を服用しているのなら減量中止を考慮。ただし、途中でてんかん発作が出ることもある(てんかんとPNESの併存)。良い結果であるとポジティブに伝える(脳の異常のせいでなく発作に寄る脳へのダメージもない)、演技でやっているわけではなく、そして多くの場合は自分でも気づかないようなストレスや不安が隠れている、抗てんかん薬は不要であると説明(副作用リスク)、今後も治療関係は続くことを伝える、精神科医の助けが必要であると説明。
合併例:てんかん発作と心因発作の区別。心配なら動画を。本人や家族にも区別させる。中等度以上の知的障害(精神療法難しい)では環境調整が中心。
・どうやって精神症状に気づく?
最初に説明しておく。てんかんに合併しやすい、と。症状が出たらてんかんや抗てんかん薬と関係しているかもなので、報告するように。精神症状が出やすい薬剤を処方する時は副作用の可能性と対処法を伝えておく。様子がおかしいと感じたら、本人や家族に率直に尋ねる。精神科受診を病院が予約し、受診後は「どうだった?」と話す時間をつくる


★高齢者のてんかん

・65歳以上の高齢者で発病率が最も高い
意識障害を伴う焦点発作が多い、鑑別診断プロセスの複雑さ、副作用が出やすい、薬剤相互作用
50%が意識障害を伴う焦点発作のみ。前兆としての自律神経発作は稀で本人も気づかない。自動症が少なく目立たない、発作の持続が短い、健忘だけが目立つなど。発作後もうろう状態が長く続き、数時間から数日続くことも。認知機能障害や抑うつ状態が遷延することも。
まとめると、発作自体は短い無動凝視だけで、発作後症状が目立つ。
・鑑別
失神、脳血管障害(TIA TGA)、代謝障害、睡眠時随伴症(REM行動障害、SAS、むずむず脚など)、アルコール離脱、認知症。
レム睡眠行動障害はてんかん性放電が検知されやすい。ピットフォール。脳波だけで診断しようとすると間違える(Manni R, et al. Sleep. 2006 Jul;29(7):934-7. PMID: 16895261)。
・病因
脳血管障害、扁桃体の腫大を認めることがある、アルツハイマー型認知症(10%ほどがてんかんを併発している)
・アルツハイマー型認知症とてんかん
アルツハイマー型認知症のどういう病態と関連?:APP分解しβ凝集し老人斑。Tau断片化から重合で神経原線維変化で神経細胞死。
このどの過程で? AD発症とてんかん発症の年差を調べた研究。77%はAD診断される前にてんかん。MCIの発現時期との比較では、90%はMCI以降に発症。MMSEは24点以上が60%ほど。アルツハイマー型認知症が進行してからではなく、MCIからアルツハイマー型認知症発症のあいだに生じる(Vossel KA, et al. JAMA Neurol. 2013 Sep 1;70(9):1158-66. PMID: 23835471)。
APP遺伝子導入マウスの脳波研究。Aβ蓄積し始めた段階で脳波をとると、その時点で脳波異常。ただし臨床的には異常なし。Subclinicalだった。Aβが蓄積すると神経細胞の異常興奮がおこり、そこからのてんかん発作ではないか。また、代償性抑制メカニズムが発動し、それによって神経回路網機能不全で海馬損傷が進むのではないか(Palop JJ, et al. Neuron. 2007 Sep 6;55(5):697-711. PMID: 17785178)。
ADの患者さん、海馬で無症候性発作が生じている(特に睡眠中)。人でのケース:MoCA23点。この放電が記憶にも悪影響を?(Lam AD, et al. Nat Med. 2017 Jun;23(6):678-680. PMID: 28459436)
てんかん性放電はAD進行を早める:AD33例の42%にてんかん性放電。てんかん性放電なしとありとでは、MMSE得点推移が5年の経過でかなり違う(Vossel KA, et al. Ann Neurol. 2016 Dec;80(6):858-870. PMID: 27696483)。
ダウン症:APP遺伝子は21番に乗っている。1.5倍。10歳で老人斑。50%が50歳でAD。ダウン+ADでは発作が多い。Aβ蓄積とてんかん発作とは関係性がありそうだ。
レビーでは?:レビーもアルツハイマー型認知症と同等(Beagle AJ, et al. J Alzheimers Dis. 2017;60(1):211-223. PMID: 28826176)。
・認知症を擬態する高齢初発てんかん:発作後認知症症状あり。
発作後にはもうろう状態だけでなく様々な精神神経症状:もうろうが65%、集中困難、記銘障害、見当識障害、思考の停滞。40%以上も。多くは数時間だが、中には1週弱も。遷延するとまぎらわしい。抑うつ症状も遷延化しやすい。易刺激性、落胆、アンヘドニア、絶望感、などなど。30%ほど。それぞれは長いと4-5日も続く。いくつか複数が24時間以上の遷延は20%弱も! 昔はてんかん不機嫌症などと言われていたものの一部は、発作後の気分症状で説明がつくのでは(Kanner AM, et al. Neurology. 2004 Mar 9;62(5):708-13. PMID: 15007118)。
TGAに似たてんかん関連の一過性健忘エピソードがある? 一過性てんかん性健忘:平均発症年齢62歳、健忘持続時間30-60分、発作頻度は月単位(TGAと違う!)、起床時から始まるのが74%(TGAと違う!)、同じ質問を繰り返すのが50%(TGAと同じ!)、一瞬の無反応24%、治療反応性96%、発作間欠期の奇妙な記憶障害。長期記憶の忘却加速(新たに記憶したことが数週間のうちに急激に失われてしまうと訴える)が問題。深刻なのに、遅延再生O.K.、高齢に限らず側頭葉てんかんの一部で認める。外来では捕まらない!(Butler CR, et al. Ann Neurol. 2007 Jun;61(6):587-98. PMID: 17444534)
遷延するてんかん性もうろう状態:高齢者の場合、急性症候性発作としてのNCSEが少なくない。SSRI含む向精神薬や抗菌薬や造影剤などなど、多くの薬剤で生じる(Yoshino A, et al. Neuropsychobiology.1997;35(2):91-4. PMID: 9097300)
発作後もうろう状態→せん妄、発作後認知機能障害→認知症、発作後抑うつ状態→うつ病など、間違えてしまいがち!
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