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2018
10.13

変わらないからこそ変われる

Category: ★精神科生活
 変わり続けることをやめない、だとか、変わることをやめた時に腐る、なんて言葉が巷にはあります。

 その多くは成功者の言葉であったり、熱血漢の言葉であったり。病気から回復した人の中からもそのような声が聞こえることもあるでしょう。確かに「まぁそうだなぁ」と思うことも事実。現状から何か変化をしなければ、その先に良い未来はないのかも、と考えてしまいます。

 しかし、病の中にいる人にとって、上記の言葉はちょっと侵襲的になることがあります。自己啓発本を読んで「よし! 死ぬこと以外かすり傷だ!」と思うことはまったく悪くありません。ただし、それを他の人たちにも熱く語るのは、その人たちの置かれた状況を考えていないことにもつながりかねません。

 彼らには、変わらなくてもいいことを保証する時期が必要です。

 そりゃあ、生命を持つ身体は刻一刻と変わるので「変わらないことは原理的にありえない」「変わらないのは時間が停止していることでしか達成されない」と言われてしまえばごもっともとしか言いようがないのですが、そういう話ではなく、考え方や行動など、その人としての意識。

 精神科に勤めていると、渦潮のような、刻一刻と変化する環境の中で、疲弊していく人たちがたくさんいます。そこで足を止めて休んでいる人に「変わらないと腐るぞ」と指摘するのは酷なこと。つらい時にわざわざ変わろうと思わなくて良い、羽根を休めて、その時間に憩うことも必要なのです。

 止まってからもう一度動くには、相応のエネルギーが必要です。それは、静摩擦と動摩擦を考えても一目瞭然。そのエネルギーを蓄えるために、まずは変わらなくても良いと保証します。そのゆとり、たるみ、が変化の基盤になるのです。特に医療者は、その診察の中で、変わらないことへの耐性が求められます。焦って変えようとしては、患者さんがこれまで経験した環境と同じになり、再演となるでしょう。変わらないことを繰り返すのは、医療者にとって苦痛ではあります。「この治療は正しいのだろうか」「ちょっとでも次回診察までには意欲が出ていてほしい」と思い、何かしらの変化がほしくなります。その焦りや欲求は、強引な薬剤増量や変更という形になるかもしれません。でも、この変わらないところを何とか持ちこたえるその過程が、とても重要でしょう。そのままで良いと言えること、それが大事。

 すなわち、変わらないことが変わることへの布石になっていきます。言ってしまえば、変わらないことの中にもう変化はあり、そうなるように医療者は診察を組んでいきます。

 "死ぬこと以外かすり傷" は、成功者や病を抜けた人が後から振り返って思うこと。現在かすり傷をたくさん抱えている人は、とても痛いでしょう。身体を動かすと、さらに痛いでしょう。ある程度軽くなるまでじっとしておくことも必要です。また、"生きているがゆえの苦しみ" もあるでしょう。死ねないけれども生きているのもつらい、生きているからこそつらい。そんな状況、いくらでもあります。そんな人たちに「死ぬこと以外かすり傷だよ」と言えるでしょうか。それこそ、たくさんのかすり傷を与えてはいないでしょうか。

 苦しい時は足を休めましょう。それはいつかまた歩き出すための大いなる力になるのです。
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コメント
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dot 2018.10.14 01:33 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

中止をしてから1年後に離脱症状がポンと出てくるというのは、非常に珍しいのではないでしょうか。100%ない!と言い切れるかと問われたら難しいのですが、可能性としては非常に低いように思います。
パニック障害であればしっかりとSSRIを使うことが大事ですし、また身体の病気で”側頭葉てんかん”というのも大事な鑑別疾患です。
また、鉄分が足りなくなると身体がそわそわしたり疲れやすくなったりするので、血液検査のフェリチンが75未満であれば鉄剤の服用が重要です。
パニック障害は結構いろんな身体疾患が鑑別に上がるので 心臓の病気、甲状腺や副甲状腺など内分泌の病気、多発性硬化症など脳の病気などなどなど)、そのあたりも考えながらの治療になるかと思います。
ちなみに、不安障害全般としてSSRIはある程度の量が必要となり、また効果発現も2か月先くらいになることがあります。
m03a076ddot 2018.10.18 14:50 | 編集
返信ありがとうございます。

あまり無いと言うアドバイスで安心しました。
これからはSSRI単剤で治療して行こうと思います。
みうのすけdot 2018.10.18 21:05 | 編集
>みうのすけさん

ありがとうございます。
ゼロと言っているわけではありませんので、ご了承ください。
身体の病気でないかどうかも調べてもらいながら経過を見ていくのが良いと思います。
m03a076ddot 2018.10.24 07:05 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2018.12.16 22:10 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

それについては主治医の先生や心理士の先生ときちんと話して疑問を解決するべきだと思います。
SSRIは治療初期にちょっと不安をかえって強めることがあるので、それかもしれません。
また、お薬を飲む時に強い不安を持っていると、やはりいろんな症状も出てきます(ノセボ効果)。
そういうのが絡み合っているのかもしれません。
m03a076ddot 2018.12.19 13:07 | 編集
ありがとうございます。

今も副作用なのか、薬恐怖からの不安障害の悪化なのか調子はよくありませんが、主治医と相談し、先の事を考えてしっかりと治療をしようと思い、なんとか継続しております。
今は1/4錠と、大変少ない量なのですが、この量ではほぼ効果はないと思った方がいいのでしょうか?
また少量から始めることで副作用がでづらいといいますが、1/4錠では少なすぎて増量時の副作用削減にはあまり寄与しないのでしょうか?
個人差があると思いますので、先生の印象でかまいませんので教えてもらえると嬉しいです。
かえdot 2018.12.19 15:22 | 編集
>かえさん

ありがとうございます。
あくまでも一般的なお話では、ごく少量の抗うつ薬では不安症への効果は非常に小さいと考えられます。
必要十分な量というのが大事です。
副作用軽減のためには少量ずつステップアップしていくことは合理的だと思います。
m03a076ddot 2018.12.28 12:22 | 編集
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