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2018
07.15

死亡確認で気を付けること

Which Physicians' Behaviors on Death Pronouncement Affect Family-Perceived Physician Compassion? A Randomized, Scripted, Video-Vignette Study. Mori M, et al. J Pain Symptom Manage. 2018 Feb;55(2):189-197.e4. PMID: 28887269

 今回は「死亡確認の際に医師はどういったことに気を付けるべき?」という、聖隷三方原病院からの論文です。死亡確認の瞬間は、ご家族にとって、医師が伝えたその瞬間から、ひとかけらの生から永続的な死に切り替わるような状況でしょう。ここをできるだけご家族に負担なく経験してもらうことが、以降の喪の作業にも欠かせません。ところどころを訳したような記事になっています。

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 愛する人の死というのはご家族にとって衝撃的なものです。死の時をご家族に告げる際は、ご家族の反応や喪の期間の精神状態への影響を考慮する必要があります。悪い知らせを伝える時、医師の思いやりを持った振る舞いが重要であり、それが医師への信頼を高めたり、不安を減じたりします。死亡確認の際の振る舞いは、ご家族にとって慈悲的であり健康な喪の過程を進めるような態度であるべきですが、その逆のように受け取られてしまうこともあります。そのため、生命の終わりを迎える時のケアは、医師にとって欠かせない技術となります。
 しかし、死亡確認は往々にして若手医師や当直医師によりなされ、トレーニングを受けていない、患者さんやご家族と長期の関係性を築けていない、といった問題があります。事例の積み重ねやご遺族への調査からいくつかの介入法や推奨が進んできており、医師側への有効性などは研究がなされていますが、ご家族に与える影響についてはほとんど知られていません。この観点でのエビデンスが不足していると、効果的な教育的介入が発展していきません。
延命治療を中止するかどうか、予後不良についてどう伝えるかなどにおいて、映像でその場面を観て学ぶ方法があります。今回はこれを用いて、ご遺族の推奨に基づいた死亡確認の方法を参加者に観てもらい、実際に思いやりのあるものだったかを調べることとしました。
 思いやりを強めるような振る舞いのある映像とそれのない映像とを参加者に観てもらい、思いやりを感じたか、信頼できたか、どのような感情を抱いたかを評価しました。

 細かいデザインや解析結果などは省きますが、今回の研究で用いた映像はご遺族の意見、既報、研究者間のディスカッションを参考に作成されました。死亡確認の方法に5つの要素を入れており、それらは以下のものでした。

1) ご家族が落ち着くまで待つ
病室に入ったら、医師はご家族が落ち着くまで待ち、アイコンタクトをとる

2) 自己紹介をし、主治医から申し送りを受けていると伝える
自己紹介をし、患者さんの状態を十分に知っていることを説明する

3) 尊重して診察をする
患者さんが生きているかのように声をかけてから診察を行ない、その後は服やお布団を元に戻す

4) 死亡時刻の確認は腕時計で
死亡時刻はスマホではなく自分の腕時計で行なう

5) 最後は苦しむことなく逝ったと伝えてご家族を安心させる
下顎呼吸を見たご家族から「苦しかったのではないか」と聞かれた場合、下顎呼吸は自然経過の一部であり苦しいものではないということ、その時には意識がなくなっているということを説明する

 結果はこのTable 2にまとめられています。

table 2

 映像を観た参加者は、これらのうち1番目以外の4つの要素で思いやりを強く感じ、陰性感情 (怒り、悲しみ、恐怖、嫌悪) も少なくなりました。
 死亡確認の方法を論じたもので、ご家族の感じ方という視点でとらえたものはこれまでありませんでした。この研究では、尊重して診察をすることと最後は苦しまなかったとご家族に伝えて安心させることが、特に医師に思いやりを感じるものでした。予想と異なり、ご家族の感情が落ち着くまで待つことのみが思いやりを感じさせるものではありませんでした。これは、映像では入院という環境でセッティングされていたことが挙げられます。ご遺族からの推奨では在宅という状況でした。この研究や既報では、少なくとも入院という状況において、ご家族は待たれるよりもできるだけ早く診察をしてほしいのかもしれないと解釈できます。異なるセッティングではどうなのかは今後の研究が待たれます。

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 ざっくりと紹介しましたが、以上のような内容でした。最初の "静かになるまで待つ" というのが、むしろ思いやりを感じないような傾向にあったというのが確かに意外ですね。急変があってご家族も駆けつけて「お父さん!」と言っているような状況。それを考えれば「早く! どうなの?」と気が急いてしまうのも無理はありません。そんな時に悠長に待つ (とご家族が感じる) のは、少し違うのかもしれません。

 4番目の "死亡確認はスマホでなく腕時計で" というのも、今のご時世ですね (諸外国だとどうなのでしょう)。今の若い人は腕時計をせずにスマホの時計機能を活用していることが多いので、彼らがご家族の代表になるような頃にはスマホでも違和感を覚えないかも。しかしその時代は若者の持つものがスマホではなく新しいデバイスになっているのでしょうか。そうなれば、"死亡確認は新デバイスでなくスマホで" となる可能性もありますね。自分は腕時計をしていませんし病院にも置いていないので、死亡確認をする機会があれば、PHSではなく看護師さんから事前に時計を借りることになるでしょうか。でも個人的には "最後の死亡確認はご家族の時計で" というのがいちばん良いのではないかな? とも感じています。「最後の時間は、大切なご家族の時計で確認させていただきたいと思います」と言って、ご家族の代表者から時計を借りて確認する。どうでしょうか。あとは、腕時計でなく懐中時計でも良いかもしれませんね。

 死亡確認をしてお伝えをする機会の多いかたは、これらの要素を参考にしてみてはいかがでしょうか。

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