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2018
05.12

4 mgを狙ってるやろ

 大塚製薬の新薬であるブレクスピプラゾール (レキサルティ®) が発売になりました。自分はまだ処方したことがないですけれども。これは日本では最大2 mgの投与となっており、アメリカさんの半分なのです。彼の国では4 mgまで使用可能でして、その半分で大丈夫なのかしらとも思っております。

 大塚製薬のMRさん曰く、国内の臨床試験ではランダムに割り付けられたものの4 mg群にやや重症患者さんが多かった、ドロップアウトが多かったなどの理由で2 mgと有意差がつかずに承認されなかったと。

 なので、2 mgでもうひと息!という患者さんに日本で4 mgまで増量したら査定されてしまうため要注意なのです。

 しかししかし、大塚製薬は4 mgを諦めていない!と自分は勝手に思っています (あくまでも自分の推測です)。その理由が2つほどあるのですが、まずは添付文書の用法・用量の欄を見てみます。


〔用法・用量〕
通常、成人にはブレクスピプラゾールとして1日1回1mgから投与を開始した後、4日以上の間隔をあけて増量し、1日1回2mgを経口投与する。
《用法・用量に関連する使用上の注意》
A 本剤の1日量4mgを超える用量での安全性は確立していない(使用経験が少ない)。



では、非定型抗精神病薬の代表であるオランザピン (ジプレキサ®) ではどうでしょうか。統合失調症の部分だけ引用。


用法及び用量
通常、成人にはオランザピンとして5~10mgを1日1回経口投与により開始する。維持量として1日1回10mg経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、1日量は20mgを超えないこと。



 同じくリスペリドン (リスパダール®) の統合失調症の部分を。


用法及び用量
通常、成人にはリスペリドンとして1回1mg1日2回より開始し、徐々に増量する。維持量は通常1日2~6mgを原則として1日2回に分けて経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。但し、1日量は12mgを超えないこと。



 お分かりになったでしょうか。非定型抗精神病薬の添付文書にはしっかりと "1日量は○○mgを超えないこと" と記載されているのです。こう書かれると、超えた処方をしてはいけません (そりゃそうだ)。

 しかしながら、ブレクスピプラゾールにはその記載がありません! かつ、使用上の注意でわざわざ4 ㎎に言及しています。これってかなりグレーな記載で、非定型抗精神病薬、というか最近の薬剤にしては非常に珍しいのです。これが4 ㎎を諦めていないと思われる理由のひとつめ。ちなみに、"この量を超えて出すな" と書かれていなければ、通常用量の倍量まではおそらく査定されないだろうという暗黙?のルールがあります (その場合は "なお、年齢、症状により適宜増減する" という記載になっていますが、その一文がブレクスピプラゾールにはありません)。

 だからと言って「2 ㎎を超えるなって書いてないんなら超えて出しても良いんだろ」と考えて4 ㎎を処方すると今は査定されてしまいますのでご注意を。これは繰り返しの注意です。

 で、もうひとつの理由が、薬価なのです。

 ブレクスピプラゾールは2 ㎎という今のところの最大用量で509.2円になっています。ここが大きなポイントでして、この約500円というのは非定型抗精神病薬 (先発品) の最大投与量の "半分" の値段なのです。

 抗精神病薬の値段を釣り上げたことで有名なオランザピンは最大投与量が20 ㎎なのですが、先発品10 ㎎の薬価が489.9円に発売当時に設定されました。これは当時では恐ろしく高価だったのですが、この "最大投与量の半分でだいたい500円" というのが以降の抗精神病薬の薬価設定をする際の参考となったのであります。ただし、オランザピンは2016年に後発品が出たため先発品の薬価も下がり、今は10㎎では489.9円→345.8円になっています。

 新しい薬剤の一つであるパリぺリドン (インヴェガ®) は、最大投与量の半分である6 ㎎で465.7円となっています。これは後発品がまだ出ていないので薬価もまだこのままのはず。

 ブレクスピプラゾールの前に大塚製薬の看板商品だったアリピプラゾール (エビリファイ®) はどうだったのか。15 ㎎が最大投与量の半分なので、これは12 mg+3 mgになります。350.4円+97.1円=447.5円となりますね。ただし、アリピプラゾールも後発品が出たため先発品の薬価が下がり、今では15 ㎎を出そうと思うと241.1円+66.9円=308.0円となります。

 さて、アリピプラゾールの特許が切れて虫の息となった大塚製薬が会社の存亡?をかけて開発し送り出したブレクスピプラゾール。その薬価が安いはずはない! 開発費を回収し収益もV字回復を狙っているはずです。 もう一度薬価を見てみると


現状での最大投与量である2 ㎎で509.2円


 瀕死の大塚製薬が良心的な設定をするはずなく (?)、「ははぁ、これは4 ㎎を見越しての設定だな」と性格の悪い自分は邪推しています。自信をもって市場に出す薬剤を安売りする理由もないでしょうし。2 ㎎で手を打つのであれば、1 ㎎の薬価がこの価格になっていたはずです。

 例えば、後発品が出るタイミング (10年以上後なのか…?) に先発品だけ何らかの試験をするとか学会や臨床医からの要望として厚労省に掛け合うとかで4 ㎎に上げるとか…? そのタイミングだと、後発品は2 ㎎が上限のままで先発品だけ4 ㎎を出せるようになって、後発品に処方が流れるのを防げますしね。そこまで待たなくても年単位でラグを設ければ良いのかもしれません。いちおう、大塚製薬としてはまず双極性障害と大うつ病への適応を取ろうとしているみたいですが。

 今回は、ブレクスピプラゾールについてちょっと引っかかったことを記事にしてみました。こういう視点から薬剤を見るのも面白いかもしれません。というか、虫の息とか瀕死とか言うと大塚製薬に怒られるかしら、そろそろ。
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