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2018
04.28

身体症状症について

 前回の機能と構造の記事つながりですが、今回はプライマリケアにおける身体症状症について、American Family Physicianの下記文献よりご紹介。まとめなので、一字一句訳しているわけではありません。

Kurlansik SL, Maffei MS. Somatic Symptom Disorder. Am Fam Physician. 2016 Jan 1;93(1):49-54. PMID: 26760840

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 身体化は心理的や感情的な苦痛が身体症状の形として現れるものです。明らかな生物学的基盤がないと思われるような身体症状を、複数かつ長期に認める患者さんがいます。そして、彼らはプライマリケアでよく遭遇します。"身体表現性障害" と呼ばれていたカテゴリーをDSM-5では "身体症状症とその関連障害" に変更しましたが、その狙いはプライマリケア周辺でより適切に運用できるようにするというものでした。

 身体症状症は身体疾患と同じほどに患者さんを消耗させるものです。そして、身体疾患と誤診された場合、不必要な検査や治療によって害を被ることとなります。医師の中には、身体症状症を軽く扱い軽蔑するものもいます。彼らは身体疾患を純正なものとみなし、身体化に対しては症状をつくっているのだと非難してしまうのです。

★疫学と病因
 身体症状症の有病率は一般人口で5-7%です。急性の身体症状を認める患者さんの20-25%が慢性化すると言われ、身体症状症は成人のみならず幼少期から発症することもあります。女性の方が圧倒的に多く、男女比は1:10です。

 身体感覚への気づきが高まり、それを身体疾患の始まりではないかと考えることで、身体症状が生じます。病因は不明ですが、慢性化や重症化のリスクは幼少期のネグレクト、性的虐待、複雑なライフスタイル、アルコールや他の物質の乱用などとされています。加えて、身体症状症はパーソナリティ障害とも関連しています。心理社会的なストレッサーや文化が受診に影響を与えています。

★鑑別診断とスクリーニング
 不必要な検査や治療は患者さんにとって害となります。身体疾患であってもその身体症状に "とらわれる" ことがこの身体症状症の特徴です。そのとらわれは、症状への過剰な考えや感情や行動であり、日常生活に大きな影響を及ぼします。

 身体症状がうつ病など他の精神疾患によるかもしれません。また、身体疾患による純粋な症状の場合ももちろんあります。スクリーニングにはPatient Health Questionnaire-15やSomatic Symptom Scale-8 などが用いられますが、あくまでもスクリーニングであるということを念頭に置きましょう。

★マネジメント
 個々の患者さんに合わせた多面的なアプローチが必要です。心理学的、社会的、文化的な要素を考えねばなりません。効果的な非薬剤治療は認知行動療法とマインドフルネスであるとされています。一般的な対応法はCARE-MDのゴロで覚えておきましょう。

Consultation
精神科や認知行動療法の専門家にコンサルトし共同して治療に当たること。

Assessment
他の身体疾患や精神疾患を評価すること。

Regular visits
救急外来などへの頻回受診・予約外受診・頻回の電話につながらないように、定期的で間隔を短くした診察スケジュールにすること。
治癒でなく機能改善を目指すこと。
症状への対処法を教えること。

Empathy
患者さんの訴えを聞くことに時間を使い、患者さんが感じていることは身に迫っており本当のことなのだとを認めること。

Medical-psychiatric interface
心身相関を強調し、「医学的に悪いところはなにもない」などといった伝え方を避けること。

Do no harm
検査を制限し、必要であれば専門家に紹介すること。深刻な身体疾患は除外できていると伝えること。

★薬剤治療
 アミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬、SSRIなどが用いられます。抗てんかん薬や抗精神病薬は副作用の問題があり、できるだけ避けましょう。セントジョーンズワートを用いてみても良いとされます。

★予後
 慢性的に経過し、症状は変動します。しかし、医学的に説明のつかない症状の50-75%は自然経過のうちに改善し、悪化するのは10-30%と言われます。身体症状が少なく、ベースラインの機能レベルが高ければ予後はより良好です。医師と患者さんの良好な関係が不可欠であり、受診間隔の短い定期的で支持的な受診も重要です。そして、不要な医療や検査を避けることが大切です。

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 以上がまとめでした。プライマリケアではCARE-MDのゴロで対処することが大切ですね。

 治癒を目指そうとするとむしろ患者さんは症状にとらわれてしまうことになるため、症状があってもできることがあるんだという事実を大切にしてもらいます。そこからできることを広げていきましょう。抽象的な言い方をすれば、生活の彩り、ということですね。症状を気にしてはいけないというわけでは決してありません。「気にしちゃいけない…」と思うとかえって気になるので「症状があっても良いのだ。そうであっても行動することができるぞ」ということを積み重ねます。

 医者からは、前の記事の "つくりとはたらき" の説明をしてできるだけゆとりを大切にした生活に取り組んでもらうことを重視します。薬剤は必要であればもちろん使用しますし、日本では漢方薬をトライしてみても良いですね。ただし、それもあくまでサポートであるとお伝えします。

 そして、本文中にもありますが、医者と患者さんの "あわい" がとてつもなく重要。患者さんの養生も、医者の支援が必要です。患者さんはやはり症状による不安は常にあるため、そこを受け止める存在が求められます。最初は不安で不安でどうしようもなくて、失敗続きかもしれません。それでも受け止めてくれる、エンパワメントしてくれる存在がいる。この繰り返しが大事です。誰だって最初に行なうことは失敗します。練習を重ねてうまくなっていくものですし、その練習を継続するためには、応援する人が欠かせません。ウィニコット的な "抱っこ" が必要になるわけですね。

 定期的な診察の中で、変わらぬ対象が待っている。これだけでも非常に大きな治療効果を持ちます。診察の間隔を一定にするのは "変わらないこと" を供給するためでもあります。医者側が変わりやすく、気分が読めないような人であったら、患者さんはその中で憩えません。変わらない診察室で、変わらない態度の医者がいる。しかもそこは豊かな "あわい" であること。こういったことが肝要で、その中でこそ患者さんはゆとりを徐々に覚えていってくれるでしょう。

 ま、言うは易く行うは難しなのではありますが…。ずっと変わらないことはもちろん不可能ですし、変わらないことを意識しすぎると固くなります。そして、変わらないことが患者さんからすると "まぶしく" 感じられることだってあります。自分自身にある "揺らぎ" を知っておくことがやっぱり大事になりますね。それを意識するだけでも違ってきます、たぶん。
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