2018
03.20

レベチラセタムとビタミンB6

 今回は以下の論文をちょっと見てみましょう。てんかんの実臨床でも役に立つこと請け合い。

Alsaadi T, et al. Does pyridoxine control behavioral symptoms in adult patients treated with levetiracetam? Case series from UAE. Epilepsy Behav Case Rep. 2015 Sep 27;4:94-5. PMID: 26543816

 レベチラセタム (イーケプラ®) は小児~大人まで使用でき、副作用や薬剤相互作用が旧来の抗てんかん薬よりも少ない優秀なもの。ただし、いらいら感や興奮などの副作用があり、全年代を通じて13%ほどに見られるとも言われます。それによって中断せざるを得ないこともあり、少々これがネックとなります。そのような副作用は、レベチラセタム開始前からもともといらいらしがちな患者さんに起こる傾向にあるとも言われています。小児や青年期でビタミンB6 (ピリドキシン) がこういった副作用をある程度は緩和させることが出来るという報告があり、この論文では成人ではどうなのだろうと電子カルテをretrospectiveに調べたもの。

 レベチラセタムとビタミンB6の両方を使用していたのは51名。平均年齢は34.2歳。特発性が15人 (29.5%)で部分発作が36人 (70.5%)。レベチラセタム単剤治療は26人。平均1日使用量は2208 mgでした。しっかりとした量を使っていますね。ビタミンB6は50 mg/dayから開始され、効果を認めなければ100 mg/dayにまで増量。ただし、この研究では平均使用量は54.5 mgでした。ほとんどの患者さんはいらいら感や興奮をレベチラセタム投与後1週以内に訴えていたものの、この研究ではレベチラセタム開始前からそういった症状を認めていませんでした。ビタミンB6を使用されなかった患者さんは、レベチラセタム投与中にその症状が大きく改善することはありませんでした。ビタミンB6の副作用改善効果は最初の2週間で確認されました。てんかん発作そのものはビタミンB6で大きく改善されることはなかったとのこと。

 小児では既報がいくつかあるものの、成人でビタミンB6の効果を調べたのはこれが初ではないか、と (小児のある研究では平均で7mg/kg/dayのビタミンB6投与量)。この研究は単施設のretrospectiveでchart reviewの手法という限界があり、プラセボ対照試験ではありません。ビタミンB6を開始した66%の患者さんに大きな症状改善が見られたいっぽう、残りの1/3は効果を認めなかったようです。小児の既報と同様に、最初の1週から効果を見せ始めていました。

 ビタミンB6は神経伝達物質の合成や代謝にかかわるとされています。しかしながら、この効果を説明できるようなビタミンB6とレベチラセタムとの相互作用は知られておらず、なぜビタミンB6がレベチラセタムの精神行動面の副作用に効くのか、そのメカニズムはよく分かっていません。ビタミンB6の過剰投与による毒性は1000 mg/day以上で起こる傾向にあるため、今回の研究で用いた100 mg/dayは安全性が高く、実際にビタミンB6による神経毒性の症状は確認されなかったそうです。

 この論文を読んで、効果が60%ちょっとというのは実臨床にフィットしている感じがしました。過半数に効く、という印象だったので。メカニズムが分からないというのが残念ですが、安全性も高く、廉価でもあるため、レベチラセタムによるいらいら感にお困りであればトライしてみても良いかと思います。このいらいら感は本人が気づかないレベルのものもあり、その時はご家族から申告があります。診察では患者さん一人であっても「最近ご家族や職場の人からいらいらしやすくなったとか言われていませんか? このお薬の副作用でそういうのがあるんです」と聞いてみましょう。「あ、そういえば…」となることもありますよ。ビタミンB6の効果は早く出てくるので、効くか効かないかの判定もしやすいのがポイント高いですね。自分はまず1か月トライしてもらっていますが、もっと短くて良いのかも。

 既報ではもともといらいらしやすいとか怒りっぽい人にその副作用が出てくることが多いとのことですが、今回の研究ではそうではありませんでした。自分が診た患者さんでもレベチラセタムを飲む前はまったくそんなことがなかったのに飲んでから怒りっぽくなったという人が結構いましたし。

 レベチラセタムの精神面・行動面の副作用は用量によるところも一部にはあるのだと思います。ビタミンB6が効かない時は発作の出ない量を見定めて慎重に減らしてみる、それでも副作用が軽減しなかったり発作が出てしまったりするようであれば、他の抗てんかん薬への切り替えもしくは付加ということになるでしょうか。自分の患者さんでは、発作型や身体疾患や他の薬剤などを考慮してレベチラセタム+クロバザム、レベチラセタム+ガバペンチンなどになったかたもいます。ある患者さんは他院でビタミンB6をすでに試されていましたが効果を認めず、どうしましょうということで紹介されてきて、結局はレベチラセタムを減量したらいらいらがぱっと消えたのであります。発作もその量で出現しませんでした。

 レベチラセタムはお値段が少々 (?) 高いのですが、非常に素晴らしい抗てんかん薬です。患者さんの経済的な負担を考慮し、自立支援を使っていきましょう (3割負担が1割負担になります)。そして、精神・行動面の副作用が出た場合はすぐに諦めるのではなくまずはビタミンB6をトライ。他には減量したり減量の上で他の抗てんかん薬を付加してみたり、といった手段があります。

追記:自動車運転をする患者さんの場合は、お薬の減量はかなり慎重になった方が良いでしょう。免許を持てるのが "発作が2年間なくて安定していること" なので、もし減量の途中で発作が出てしまった場合は大変です。(3.21.2018)
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コメント
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dot 2018.03.22 10:57 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

ビタミンB6も万能ではないので、効かない人も確かにいますね。
車の運転も確かにどうしようかと悩むところだと思います。
ただ「てんかんでも2年発作がなければ安全に運転できるんだよ」というロールモデルとしての役割もあるかもしれませんね。
m03a076ddot 2018.03.24 15:47 | 編集
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