2018
03.03

発言にはお気をつけあれ

 お薬についてお話しすることがあるんですが、以前に「その内容は文献 (特に比較試験のもの) にないじゃないか!」と間接的にご批判を受けたことがあります。それは自分の個人的な感覚での違いであり「Aという薬剤はBという薬剤よりもここがこうなっているのが特徴です」というような言い方をしました。しかも、自分自身で内服してみてその差を実感しておりました。そうしたところ上記のようなことがあり…。かつ、自分が言った内容はMRさんがよく言うセリフでもあったため、「製薬会社の言うことを真に受けて!」という考えも働いたのだと思います。

 昨今は、文献できちんと指摘されていないことを軽々しく言ってはいけない/書いてはいけない雰囲気で、それ自体はもちろん素晴らしいことです。何でもかんでもMRさんの言うことを真に受けて製薬会社の提灯持ちになってしまっては、医療者は魂を売ったと言われても反論できません。しかし、文献で指摘されていないことを言うと批判される、というのもちょっと堅苦しいかな?とも思いまして。ここは人によって意見は変わってくるでしょうけれども。

 お話をする/書くという時、文献のみで固めるのであれば、味気ない印象が自分の中にはあるのです (文献を無視しろと言っているわけではありませんよ!!!)。演者や筆者の個人的な意見というのは、エビデンスの質が最も低いものではありますが、それなりに面白いものだとも感じています。特に精神科は疾患そのものが症候群的なものなので「こういう感じならこういうのが良いかも」という感覚レベルが良くも悪くも生きています。非定型抗精神病薬をいくつか使用しても芳しくなかった患者さんがおり、上級医が「こんな感じの患者さん? ならこれが合うかもね」と、ある定型抗精神病薬を使うように勧めてくれ、実際に使ったらあれだけ大変だった症状がぐぐっと軽くなる、なんてことは精神科病院で複数回経験します。これは文献ではなかなか得られない情報で、その最たる例が神田橋條治先生かもしれませんね。

 こういったエキスパートオピニオンはとても大事なのだと、自分は思います。もちろんそればかりになってしまうのはダメなのは言うまでもないですし、質の非常に高い文献と明らかに相反するような内容であれば慎重にならざるを得ません。特に糖尿病治療薬では頑健なエビデンスを提供しているメトホルミンが日本では軽視されてきた過去があるので (今も?)、おエラがたのオピニオンばかりにひれ伏すのは厳禁です。しかし、文献でしっかりカバーされていないといけない、というのでは、お話する/書く人の個性がちょっと出にくいかもしれません。もちろんそれで主観が消えることはないのですが、面白味はちょっと減ってしまいそうだなぁという気持ちがあるのです。文献の部分と個人の感覚の部分のバランスが大事かなと。

 そして、自分がお話をする/書くのであれば、自分ならではのものを提供したい、とも思うのです。確かに、ご批判をいただいたお話では自分のまずい点もありました。お話しした内容をしっかりと「あくまでも自分の経験ですよ」と強調すべきだったでしょう。そこは改善せねばならないと考えています (自分でも服用して云々、とは言いましたが)。

 そういう演者/筆者自身の意見は、言うなれば



豆知識



 なのです。

 豆知識ばかりで武装してはいけません。大事なのは核となる取扱説明書のような存在。その上で、豆知識をいくつかくっつけていくと、味わい深くなるのでは、と自分は考えているのです。豆知識はあくまで "豆" ですから。いくつかくっつく、くらいが良いのだと思います。繰り返しになりますが、「文献に載っていないじゃないか!」という流れは決して悪いものではありません。むしろ正しい方向に進んでいるのでしょう。提示されたものに対し、裏付けがなされているのか、そしてその裏付けはいかほどの質なのか、と立ち止まって考える、鵜呑みにしないことをまず訓練しましょう。そこにちょこっと上乗せされた豆知識は、診療の奥深さをもたらすのかもしれません。

 そんなこんなで、何が言いたかったかというと、「ごめんちょ、許してねん」ということでした。いやはや、最近は厳しいですな。こちらもかなり気をつけねば。
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