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2017
11.25

てんかん学会で勉強したこと:その2

 てんかん学会のシンポジウムやら講演やらで勉強したことを記事で残しておこうかなと思い、前回がその1でした。今回はその2でして、これで最後。学会で学んだことは共有していくと良いんじゃないかな?と思っています。こうすれば医者がたくさん参加する必要もないし、病院がスッカラカンになることもないし。事前に配布される資料はなく、スライド内容と話される内容をパソコンでカタカタ打って何とか記録しています。よって、ちょっと追いつけない部分や間違って記載してしまっているかもしれません。参考文献は記事にする際にPMIDを付けておきました。


★てんかんと自動車運転

・高齢社会で求められていること:自動車の運転を念頭に
自動車事故の10%ほどは運転者の体調変化が原因(Tervo, et al. Traffic Inj Prev. 2008;9(3):211-6. PMID: 18570142)(Oliva, et al. Atherosclerosis. 2011 Sep;218(1):28-32. PMID: 21663913)
運転中の病気発症の割合(Hitotsugi, et al. Scand J Work Environ Health. 2012 Jan;38(1):84-7. PMID: 21850364)
意識消失が先行した運転者の事故:事故を起こした7.5%
その内訳は、低血糖、運転直前に向精神薬や常用薬を怠薬(抗てんかん薬など)
どんな病気でも事故の原因になる。適切な薬剤を用いること
・運転と薬剤と法
法律では道路交通法第66条にあるだけ
本人がそれを飲んで普通に運転できれば大丈夫ということ。どの薬なら云々というのではない。運転に支障のない薬剤を処方すること
添付文書はPL法に関わる。企業は書いておけば良いという立場になる
抗てんかん薬はほぼすべて運転禁止という記載
整合性を取りながら現実に沿うように見直しが必要
その人にあった薬剤、そして病気のコントロールができればO.K.なのだ
司法の判断で、自動車運転は自己責任と。アドヒアランス低下し運転中にてんかん発作で人をはねてしまった→運転者自身が第一義的に責任を負うべきだ。裁判長は薬を飲んでいれば防げたと話した
ドライビングシミュレーターを使うとどうなるか(Hitotsugi, et al. Int J Gen Med. 2011 Mar 3;4:191-5. PMID: 21475633)
・てんかん患者さんが事故率高いということは結論が出ていない。ただ怠薬があれば処方どおりに服用している場合の2.1倍(Faught E, et al. Neurology. 2008 Nov 11;71(20):1572-8. PMID: 18565827)
規則正しい服薬、睡眠不足、疲労や精神的ストレスの蓄積、発熱などを避ける。怠薬や発作誘因があったら運転を控える
医者が運転ダメよと言ったにもかかわらず運転をしてしまっている人。そういう人がいたら公安委員会がその人に対して指導する。なので、その人の名前を公安委員会に。守秘義務は守られる


★ウイルス性脳炎・脳症後てんかん

・急性脳炎:単純ヘルペス、帯状疱疹ウイルス、サイトメガロ、トガウイルス(日本脳炎が好例)、エンテロウイルスなどが小児に多い
・ラスムッセン脳炎(Pardo CA, et al. Neurotherapeutics. 2014 Apr;11(2):297-310. PMID: 24639375)
・小児急性脳症の定義:急激に発症した意識障害が24時間異常持続する状態
意識障害はJCS20以上、GCS10-11以下
感染症の経過中に発症することが多い
頭部画像CT・MRIで脳浮腫が描出
脳炎髄膜炎など他の疾患が否定される
意識障害は薬剤や心因発作などではない
・急性壊死性脳症ANE
・痙攣重積型急性脳症
重責から意識障害、4-5日で群発する(late seizure)そこから後遺症(精神遅滞、てんかん、高次脳機能障害、麻痺)
・急性脳症における脳波の意義と後遺症としてのてんかん
急性脳症に認める脳波:異常全般性徐波化、局所性徐波化(後頭部優位)、片側性徐波化、低振幅化+過剰な速波、PLEDs(あまり多くない、他の病態にも出る)、Electrical storm(発作が連続している状態?)、FIRDA(様々な病態)
MERSでは高振幅徐波が84%(鈴木健史 日本小児神経学会 2016年)
AESDでは徐波が少なく紡錘波の消失が目立つ、速波の減少も(大野敦子 日本小児神経学会 2016年)
熱性けいれんとの鑑別(Oguri M, et al. Yonago Acta Med. 2016 Mar;59(1):1-14. PMID: 27046946)
急性脳症では脳波異常が高率、サブタイプで所見に違いがある
critically illの小児であれば持続脳波モニタリングで脳波異常が見つかる事が多い(24時間でほぼ見つかる)(Abend NS, et al. Neurology. 2011 Mar 22;76(12):1071-7. PMID: 21307352)
脳波モニタリングで早期治療が可能に(Williams RP, et al. Epilepsia. 2016 May;57(5):786-95. PMID: 26949220)
重積状態があれば予後が悪いのでは(Topjian AA, et al. Crit Care Med. 2013 Jan;41(1):215-23. PMID: 23164815  Wagenman KL, et al. Neurology. 2014 Feb 4;82(5):396-404. PMID: 24384638)
ICUでの脳波モニタリングquantitativeを使う(Haider HA, et al. Neurology. 2016 Aug 30;87(9):935-44. PMID: 27466474)
まとめ:持続脳波モニタリングの応用、subclinical seizureがしばしば、予後を改善するかどうかは今のところ不明
・インフルエンザ脳症:日本の小児の急性脳症で最も多い(Hoshino A, et al. Brain Dev. 2012 May;34(5):337-43. PMID: 21924570)
MERSが20%を占める、てんかんの後遺症は多くない
AESD後のてんかん発症率は23%、脳症から発症まで8.5ヶ月、スパズムと焦点性驚愕発作が多い
インフルエンザ脳症ではてんかん発症は多くない、ANEおよびAESDでは重症で認知機能障害を残した症例にてんかんが高率、重症例では薬剤抵抗性てんかんを認める
・単純ヘルペス脳炎後てんかん
アメリカでHSEは成人含む脳炎全体の13.8%で最多
日本では、小児急性脳炎・脳症の6-9%
・HSV-1の脳炎
成人だと再活性化、神経行性、局在性脳炎、頭痛、発熱、意識障害など、再発は10%前後?
小児だと1/3が初感染、痙攣が主症状、再発14-27%
新生児だとウイルス血症、CNS型汎脳炎、痙攣は25%、再発20%
小児HSE後てんかんの発症例:てんかん発症頻度高い、観察中央値7.3年、観察が短いと発症頻度は低くなる(Pillai SC, et al. Epilepsia. 2016 Jan;57(1):e7-e11. PMID: 26592968)
小児脳卒中後てんかん:10年後では33%、若年や急性期発作があるとてんかん発症リスク(Fox CK, et al. Ann Neurol. 2013 Aug;74(2):249-56. PMID: 23613472)
単純ヘルペス脳炎ではてんかん発症が高率&てんかん潜伏期間が2峰性(2つ目は自己免疫が関連?)
・HHV-6による急性脳症後てんかん
熱性けいれんや急性脳炎、脳症を引き起こすことがある(中枢親和性)、潜伏感染して宿主が免疫抑制となった時に再活性化して脳炎を起こすことがある
痙攣重積型が多い、後遺症としては音やstartle(驚愕)に誘引されるspasmを示すことが多い、知的予後は様々
内側側頭葉てんかん
乳幼児期に熱性けいれん重責の既往、数年から10年以上の間隔をおいて学童期にてんかん発作が出現


★てんかんと発達障害、精神障害

・PNES
1000人に1人くらい
知的障害や発達障害をもっている人も(25%ほど)
診断基準で、clinically establishedなら1.6%、possibleやprobableなら11%が誤診(PNESと思ってもてんかんだった)
本人の脆弱性と環境負荷が合わさって発症。脆弱性にはCBTがなされるが、難しい。ただその数が多いというわけではない。診断告知や受信環境を調整するだけで改善する人が多い
・精神病状態
てんかん患者酸では急性一過性精神病状態の出現は珍しくない(10%前後)が、慢性精神病状態はずっと珍しい(1-2%)らしい
発作後精神病は発作後もうろう状態が終了した後に出現する別の病態
抗てんかん薬によって発作が抑制されたあとに精神病状態が出現する場合があり、交代性精神病(強制正常化)という
発作時精神病(非痙攣発作重積状態に伴う夢幻精神病、持続性前兆に誘発された幻覚妄想状態)、発作後精神病、交代性精神病、発作間欠時精神病(発作と関係なく出て来るもの:急性一過性精神病、慢性てんかん性精神病)
発作後精神病:意識清明下の幻覚妄想、発作後3日間以内の意識清明機を挟んで発症、ほとんど1ヶ月以内、多くは1週間以内に収束、幻視・誇大妄想・宗教妄想・談話心迫・親近性の錯覚(デジャヴ)・精神性複視(離人?)、軽躁状態から始まることが多い、気分障害の家族歴との相関
交代性精神病:外科治療後に抑制された後のものも含めることがある 強制正常化とは、抗てんかん薬によって急激に発作活動が抑制され、脳波が正常化された後、かえって生体の平衡が乱されて精神病状態が出現するという概念
てんかん発作と精神病症状とは拮抗関係があると昔から言われる(ECT)、抗精神病薬はけいれん閾値を下げる、抗てんかん薬には精神病状態誘発の副作用、発作後精神病と交代性精神病はてんかん発作の抑制機構自体が精神病状態を誘発しているかも
てんかん性精神病の発症機序:発達障害などの素因がある場合にてんかんが非特異的誘発因子として働いて精神病を発症、脳内でのてんかん性活動自体が精神病状態の原因、などの考え方。発作後の疲弊状態や発作抑制機構が関与しているか
慢性てんかん性精神病:てんかん発症後平均15年を経て発症。発作間欠時精神病と発作後精神病はどちらも10年以上の潜伏期を経て発症して、後者のほうが潜伏期が長い。統合失調症は20代前半にピーク、発作間欠時精神病は30代前半、発作後精神病は30代後半
発作後精神病のみを呈していた患者の一部が15年ほどの経過で慢性精神病状態に移行していく
精神病キンドリング説:てんかん発作に誘発される急性精神病状態の反復によってキンドリングに類似の機序によって精神病症状の発症閾値が低下し、次第に急性精神病状態の出現頻度が上昇し、さらに慢性精神病状態に移行
抗てんかん薬による精神病症状:直接の副作用として精神病状態を引き起こす、ゾニサミドやトピラマートなどは統合失調症と極めて似た症状。ゾニサミドは投与中止後も残存して慢性化することがある、レベチラセタムは健忘の副作用以外に激しい焦燥を引き起こし自殺行動につながることも
抗精神病薬とてんかん:フェノチアジン系、クロザピン、ゾテピン、オランザピンなど(ハロペリドール、スルピリド、アリピは閾値を下げない)、てんかん患者に抗精神病薬を投与する時は抗てんかん薬による酵素誘導があるため、結構な量が必要
急性一過性精神病状態が初回だけなら抗精神病薬は不要、明らかにてんかん発作が原因でそのたびに精神病状態が出るなら抗てんかん薬で。抗精神病薬の継続投与によって精神病状態の慢性化が予防できるかどうかは不明なので、抗てんかん薬に加えて抗精神病薬を継続投与するのは出来る限り避ける
・てんかんを併存する発達症
知的能力障害:気づかれやすく、知能検査で診断されやすい、包括的な支援体制が確立されてきた
自閉スペクトラム症、ADHD、LDは認識されにくい
てんかんとASD:両者の併存に関する疫学はばらつきが大きい
小児てんかん患者のASD有病率5-37%(Jeste SS, et al. J Child Neurol. 2015 Dec;30(14):1963-71. PMID: 26374786)
ASDではIQが低いほどてんかん発症率は高い(Mouridsen SE, et al. Brain Dev. 2011 May;33(5):361-6. PMID: 20655678)
女性の方が多い(Amiet C, et al. Biol Psychiatry. 2008 Oct 1;64(7):577-82. PMID: 18565495)
てんかんの好発年齢は小児期早期と青年期の二峰性
ADHD:てんかん患者の30-40%、女児に多い、不注意型が50%超、多くはADHD症状がてんかんより先行(木村記子, 岡田俊. 児童青年精神医学とその近接領域. 2010)
LD:てんかん患者のLD有病率は30-40%ほど
症候性てんかんや早期てんかん発症は予後不良サイン
発達症の診断の難しさ、児童青年期特有の問題点、てんかんの影響で典型的な症状を示さない
発達症の症状の現れ方は個々や性別や年齢や環境で変わる、個性との連続性、診断に多くの情報が必要
それぞれの発達性は一見同じようにみえる行動や症状を示すことがある
発達症同士は併存しやすく病像が異なってくる
てんかんの併存や二次障害も
児童青年期の特徴では、養育環境がある。日々の環境変化が大きく心理的不安定さ、症状や環境が発達にさらに影響する。よって、多くの要因が互いに影響しあい、症状の変動も大きい
てんかんの併存:抗てんかん薬や発作;認知機能や行動面に影響、心理社会的な問題もある(問題をてんかんに帰着させやすいなど)
発達評価はてんかん治療や発作が安定してから。経時的に複数回の評価を行う
てんかんの評価、発達の評価(併存しうる発達症の可能性について検討)、その他(今の生活状況、家庭環境、学校での様子、他の併存症の所見)
てんかん病態や環境の変化に関係なく同じ特性に由来する問題が継続して見られる:発達症によるもの


★治せるてんかん

・Glut1DS:グルコーストランスポーターの異常 成人発症のものがある。軽度の不随意運動が主体 スペクトラム理解(Mullen SA, et al. Neurology. 2010 Aug 3;75(5):432-40. PMID: 20574033)
症状、家族歴、脳波、画像などで気づくこと(Akman CI, et al. J Pediatr. 2016 Apr;171:220-6. PMID: 26811264)
年齢による症状の推移(Alter AS, et al. J Child Neurol. 2015 Feb;30(2):160-9. PMID: 24789115)
症候性てんかん、精神遅滞、構音障害、失調が多くの症状・初期診断
脱力して座り込む、腰が立たない、ぼんやりしたりよろめくなどの症状も
どんな症状?(Hao J, et al. JAMA Neurol. 2017 Jun 1;74(6):727-732. PMID: 28437535)
食事前後の脳波変化:徐波が食事後に消える
MRIはあまり手がかりにならないかも(他疾患の除外に使う)
FDG-PETの研究もあるが、特異的な所見ではなさそう(Bouilleret V, et al. Ann Neurol. 2002 Feb;51(2):202-8. PMID: 11835376)
早期診断早期治療(食事療法)が予後を改善させる可能性、症状がそろってからでは遅い、1歳までに介入が今後の目標 原因不明の発達遅滞やてんかんは全員検査しても良いのでは


★グルタミン酸受容体

・NMDA受容体
シナプス後部ではない部位のNMDA受容体も大事(シナプス前部やシナプス外)
サブユニット:NR1、NR2A,B,C,D、NR3A,B NaとCaを通す
NR1にはグリシン結合、NR2には亜鉛やグルタミン酸やNMDAが付く(亜鉛は抑制)。開閉にはMgが重要(Mgが離れて開く)
構造はレビュー論文を(Ghasemi M, et al. Epilepsy Behav. 2011 Dec;22(4):617-40. PMID: 22056342)
サブタイプによって生後及び局在発現に多様性がある
関与すること:記憶・学習・経験則の神経回路(LTP、LTD)、てんかん、神経細胞死(シナプス外の受容体)、精神疾患、神経疾患(アルツハイマー型認知症やパーキンソン病)
・抗NMDA受容体脳炎
先行感染あり、平均5日で精神症状、初期は情緒変化、1-2日は内的変化に気づくが、激しい統合失調症様症状。それが頂点になると痙攣を契機に意識障害が急速に出現。運動パターンがある。多彩な自律神経症状を伴う。不随意運動は3週から12ヶ月続く。数カ月から数年異常かけて緩徐に回復
臨床経過は特徴的(Kayser MS, et al. Curr Psychiatry Rev. 2011;7(3):189-193. PMID: 24729779)
てんかん発作や精神症状のみを呈する不全型も。統合失調症初発患者に抗体が認められるものが(Zandi MS, et al. J Neurol. 2011 Apr;258(4):686-8. PMID: 20972895)
抗原エピトープはNR1サブユニットの細胞外のATD
抗体の作用機序は細胞内に受容体が落ち込むこと(内在化)による フェンサイクリジン投与時に似ている
機序はこの論文(Dalmau J, et al. Lancet Neurol. 2011 Jan;10(1):63-74. PMID: 21163445)
脳波はExtreme delta brush pattern
びまん性に大脳が萎縮することもある。かなり長期的に見るとその萎縮も回復。小脳萎縮することあり、予後が不良だった(Iizuka T, et al. JAMA Neurol. 2016 Jun 1;73(6):706-13. PMID: 27111481)
合併症を生じる前に徹底的に免疫治療を
疑ったら血清と髄液を凍結保存(検体を送る)
・AMPA受容体
グルタミン酸シナプスの実行部隊 興奮性シナプス機能に関与する
K2というトレーサーの話。精神疾患でもAMPA受容体からの視点が重要
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