FC2ブログ
2017
11.21

てんかん学会で勉強したこと:その1

 てんかん学会のシンポジウムやら講演やらで勉強したことを記事で残しておこうかなと思いました。こういうのはシェアするに限るのです。ただ、事前に配布される資料はなく、スライド内容と話される内容をパソコンでカタカタ打って何とか記録していたので、不足している部分やひょっとしたら間違っている部分もあるかと思います。参考文献もできるだけ記録して、記事にする際にPMIDを付けておきました(PMID付加強迫?)。長いので2回に分けて記事にします。


★高齢者とてんかん 総論

・高齢者35000000人のうち、てんかんは400000人
・高齢者はスティグマ(否定的なイメージ)が強い。遺伝を気にするので、お孫さんには関係ないということを強調する。
・老人病院ではてんかん患者さんが10%ほど(赤松ら てんかん研究2013)
・大学病院を受診した高齢初発てんかん70人で、複雑部分発作が47%、二次性全般化発作が40%、全般発作が7%(tanaka, et al. Seizure. 2013 Nov;22(9):772-5. PMID: 23849689)
・てんかんの種類は、側頭葉てんかん71%、前頭葉てんかん9%(tanaka, et al. Seizure. 2013 Nov;22(9):772-5. PMID: 23849689)
・原因は病因なし53%、脳卒中後16%、認知症10%、脳炎後8%(tanaka, et al. Seizure. 2013 Nov;22(9):772-5. PMID: 23849689)
・高齢初発てんかんは治療反応性が高い(tanaka, et al. Seizure. 2013 Nov;22(9):772-5. PMID: 23849689)
・カルバマゼピン200mg レベチラセタム500mgなど少量でも有効(tanaka, et al. Seizure. 2013 Nov;22(9):772-5. PMID: 23849689)
・久山町住民検診におけるてんかん疫学研究。40歳以上では1000人あたり7人、65歳以上では1000人あたり11人ほど


★高齢者のてんかん重積状態(SE)

・重積状態の“十分に長い時間”とは? 2000年代には5分間(5分以内で多くは停止する、また早期治療の必要性から)。2015年に新定義:発作を停止させる機序の破綻、異常に遷延する発作を引き起こす機序の開始に起因する状態→つまりは発作が自然に止まらなくなった状態、不可逆性の障害を残しうる状態
t1:発作が始まってからこれ以上続くと止まらないだろうという時間(治療開始)
t2:後遺症を残しうる時間(積極的治療)
けいれん性:5分、30分
意識障害を伴う焦点性:10分、>60分
など病態によってt1、t2が変わる
・重積状態の分類:従来はMeierkord, et al. Lancet Neurol. 2007 Apr;6(4):329-39. PMID: 17362837
新分類:ILAE 2015
重積状態:明瞭な運動症状を伴うものと伴わないもの
伴うものにけいれん性、ミオクロニー、focalなどなど
運動症状を伴わないもの(非けいれん性):NCSE with coma(これが独立した)とwithout coma(焦点性と全般性)
Without coma;慢性てんかん患者や健常人、軽度の意識障害、比較的予後良好、まれ
With coma:集中治療中の重症患者、高度の意識障害、予後不良、高頻度
NCSEはスペクトラム(with/without comaをしっかりと分類できないことも多い)(Trinka, et al. Epilepsy Behav. 2015 Aug;49:203-22. PMID: 26148985)
・高齢者SEは脳血管障害と認知症が全体の6割
・精神疾患やせん妄と間違われやすい せん妄状態の高齢者の30%弱がNCSE(Naeije G et al. Epilepsy Behav. 2014 Jul;36:18-21. PMID: 24836528)
・高齢者のSEはてんかん既往のない人に多い、難治性となりやすい、拡散強調でSEに関連した高信号
・高齢者SEの治療は、薬物動態学的・薬力学的パラメータの個人差、併存疾患、併用薬によって薬剤選択や投与量の減量を


★高齢者てんかんと認知症(の中のアルツハイマー病)の病態

・アルツハイマー病の10-60%にてんかん合併(Friedman D, et al. CNS Neurosci Ther. 2012 Apr;18(4):285-94. PMID: 22070283)、てんかん発作はアルツハイマー病の認知機能障害の進行速度を高める(Volicer D, et al. Dementia. 1995 Sep-Oct;6(5):258-63. PMID: 8528372)
・アルツハイマー先生の記したアルツハイマー病の最初の患者さんにもてんかん発作の記載がある
・タウ病理は出現する場所と順番が決まっている(側頭葉内側から始まる)。神経線維の連絡に沿って脳内を広がる。神経細胞に出来たtauが細胞外に放出され、次の神経細胞内への取り込みが行なわれる。可溶性高分子量リン酸化tauが伝播を介在(Takeda, et al. Nat Commun. 2015 Oct 13;6:8490. PMID: 26458742)し、tauは髄液中にもある(Takeda, et al. Ann Neurol. 2016 Sep;80(3):355-67. PMID: 27351289)
・tauは神経活動の閾値の低下をもたらす(神経細胞活性化)。活動によってAβが分泌されたまっていく
・CSF tauは明らかな症状が出る前から上昇(Bateman RJ, et al. N Engl J Med. 2012 Aug 30;367(9):795-804. PMID: 22784036)
・アルツハイマー病でのてんかん合併見逃し:認知症の症状と混同、せん妄と混同、非運動性が多い


★脳卒中後てんかん

・脳卒中は死亡率が下がってきてsurvivorが増えてきている。高次脳機能障害、運動機能障害、認知障害といった症状。最近は気分障害、誤嚥性肺炎、神経痛、排尿障害などが問題に。そして脳卒中後てんかんが話題。脳卒中罹患の7%が脳卒中後てんかんを発症(Zou S, et al. Top Stroke Rehabil. 2015 Dec;22(6):460-7. PMID: 25920619)。
・脳卒中後てんかん第1ステージ:脳卒中による脳損傷、early seizure 発症7日以内
第2ステージ:潜伏期間、グリオーシスなどによっててんかん原性がつくられる。数カ月から数年
第3ステージ:再発性てんかん発作を繰り返す慢性期 late seizure
Early seizure:BBB破綻によってアルブミンやトロンビンが出てきてアストロサイト活性化などなど(Tanaka, et al. Neurochem Int. 2017 Jul;107:219-228. PMID: 28202284)
Late seizure:まだメカニズムは不明。リスクは脳出血や出血性梗塞、くも膜下出血、病巣は皮質、領域はMCA領域、高い重症度など。重責例はlateに移行しやすい
CAVE score:皮質領域、65歳未満、10mL以上、early seizureをそれぞれ1点。3点以上でとても起こりやすい(Haapaniemi E, et al. Stroke. 2014 Jul;45(7):1971-6. PMID: 24876089)
・脳卒中後てんかん:非痙攣症例、非典型例、検査は陽性率が低く、脳波判読能力が必要。脳波は取ることは取るけど読むのが難しく発作波も出にくい…。発作間欠期の脳波では異常検出率が低い…。
・じゃあ診断は? SPECT検査が有用かも。SISCOMという方法(最初と1週間後?に計2回撮ってその差分をみるらしい)や急性期MRIだとASL法というもの。でも確立はしていない
・治療:earlyもlateも一次予防は推奨されない。二次予防は、earlyはRCTなく抗てんかん薬は推奨されない。LateもRCTがないが、観察研究からカルバマゼピンなど?が使用される:European stroke organization guidelines for management of post-stroke seizure and epilepsyより
バルプロ酸単独だと再発が多い
理想的な抗てんかん薬は、発作予防効果が高く副作用が少なく薬物相互作用も少ないもの
脳卒中高齢者だと多くの薬剤が使用される。抗血小板薬や抗凝固薬、降圧薬、スタチン、血糖降下薬などなど。新規抗てんかん薬は相互作用がまれなので安全
カルバマゼピンやフェニトインはDOAC(ダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバン)の効き目が減る。ワーファリンはINRでモニタリングできるが。バルプロ酸はワーファリンの作用がupする


★高齢者てんかんと自己免疫

・VGKCc-Abといった自己抗体 自己抗体陰性なら扁桃体の腫大が見られることあり
・自己抗体陽性の自己免疫てんかん(Toledano M, et al. Semin Neurol. 2015 Jun;35(3):245-58. PMID: 26060904)
・原因不明のてんかんで自己抗体はどれだけ陽性になるのか? APE socoreが4点以上であれば自己免疫性を疑おう(Dubey D, et al. JAMA Neurol. 2017 Apr 1;74(4):397-402. PMID: 28166327)
Epilepsia 2017でもっと症例数を増やしたものを報告(Dubey D, et al. Epilepsia. 2017 Jul;58(7):1181-1189. PMID: 28555833)
・late onset seizureでは6%が自己免疫による(66例中4例)(von Podewils F, et al. Epilepsia. 2017 Sep;58(9):1542-1550. PMID: 28681401)
・抗VGKC複合体抗体の関連する疾患(Irani SR, et al. Ann Neurol. 2014 Aug;76(2):168-84. PMID: 24930434)
・高齢者で炎症所見がないCNS症状で自己抗体が関わるもの(Escudero D, et al. Neurology. 2017 Oct 3;89(14):1471-1475. PMID: 28878050)
・抗LGI1抗体陽性脳炎について
健忘や情動発作
FBDS(Faciobracial dystonic seizure)
MRIで側頭葉内側異常信号
髄液の細胞数やタンパクなどの異常はまれ
SIADHを合併
免疫療法が有効
・扁桃体腫大の自己免疫てんかん(Malter MP, et al. Epilepsia. 2016 Sep;57(9):1485-94. PMID: 27418040)
抗体陰性で扁桃体腫大であれば免疫療法を積極的に行なうかは難しい。抗てんかん薬で対処しても良くなることあり。抗体陽性(特に高齢者では抗LGI1抗体)ならしっかり早期の免疫療法


★てんかん診療ガイドライン2018(パブコメ募集中)

・NICEガイドラインでは第一選択では発作型によっても複数が第一選択となっており、今回の改訂で日本も同様になった
新規発症の成人部分てんかん:第一選択としてCBZ、LTG、LEV、ついでZNS、TPM
新規発症の成人全般てんかん:全般性強直間代発作に対してはVPA、第二としてLTGやLEV、TPMなど。妊娠可能年齢ではVPA以外が推奨
欠神発作:VPA、ESM、ついでLTG
ミオクロニー発作:VPA、CZP、LEV、TPM(ガバペンチンは増悪させる)
全般発作ではバルプロ酸の発作抑制効果の優位性は他剤より高い
精神症状のリスクを有する患者では、多剤、急速増量、高用量に注意。病名別に使用してはならない・使用を考慮して良い薬剤が記されている
小児思春期で部分か全般か分からない:2010年ではCBZで全般(強直間代発作以外)が悪化する可能性があるためVPAが推奨→2018年ではVPA、CBZ、ZNS、LEV、LTGこの中で有効発作スペクトラム、年齢性別、副作用プロファイル考えての選択
小児欠神てんかん:VPA、ESM、第二選択はLTG
若年ミオクロニーてんかん:VPA、妊娠可能年齢ならまずVPA以外で。LEV、LTG、ZNS、TPMなど
・妊娠可能年齢への薬剤:VPAは奇形や知的発達障害、行動障害の発症リスクが高い。LTGとLEVは奇形発症、知的発達障害のリスクが比較的低い
Major congenital malformation(見て分かる奇形):一般2.4%、バルプロ酸6.7%、CBZは2.6% in UK
基本的にはLTG、LEV、次にCBZである。
VPAは自閉スペクトラム症の発症率も高い(HR2.9)(Christensen J, et al. JAMA. 2013 Apr 24;309(16):1696-703. PMID: 23613074)
VPAは投与をなるべく避け、使うにしても600 mg/day以下を目指す。そして非妊娠時から葉酸を(0.4 mg/day程度)
LTGは妊娠中に血中濃度が変わる
・参考域濃度(有効濃度)は測定があまり有用ではない薬剤や注意すべき変動を示す薬剤もある。非常に有用なのはPHTやLTG、有用はCBZ、PB、VPA、RFN、PERなど


★てんかん国際分類(発作分類とてんかん分類)ILAE 2017

●発作の分類
ILAE 2017 classification:Basic versionもあり。Expandedは詳細版
Focal(partial)はaware、impaired awareness(昔で言う複雑部分発作)と分けて、さらにmotorかnonmotorかに、またfocal to bilateral tonic-clonic(昔で言う二次性全般化)がある
Generalizedもmotorかnonmotor(absence)か
Unknownもmotorかnonmotorか
Unclassifiedというのが単独グループに(情報不足や他の分類に入れられないもの)。てんかん発作でないときにはこの分類に入れてはいけない。一部の例外的な状況のみで使用。初診時や診療前、紹介状の情報だけの状況など??(演者の意見)
今回の分類は63個もあって大変だ(Beniczky S, et al. The new ILAE seizure classification: 63 seizure types? Epilepsia. 2017 Jul;58(7):1298-1300. PMID: 28677857)
●てんかん分類
局在関連と全般てんかん、それぞれに特発性と症候性。これが1989年の分類の大まかな分け方。新しいのは
Seizure types:focal、generalized、unknown

Epilepsy types:focal、generalized、combined generalized and focal(DravetやLennox-Gastautが好例)、unknown

症候群分類がある
プラスして、病因(structural genetic infectious metabolic immune unknown)と併存症(学習障害、精神障害、行動障害など)
また、ILAE2017では特発性と症候性という区別はしていない。ただし、小児欠神、若年欠神、若年ミオクロニー、全般性強直間代発作のみを示すてんかんは例外


★てんかんの精神症状

・てんかんの合併症は精神疾患が一番多い
うつ病、ADHD、不安症、パニック障害、精神病など
・高齢者のてんかん発症リスク:脳卒中も多いが、精神疾患もリスクが高い 精神疾患とてんかんは両方向性(Martin RC, et al. Epilepsia. 2014 Jul;55(7):1120-7. PMID: 24902475)
・てんかんに伴う精神病
発作間欠期と発作後がある。側頭葉てんかんでは前者5%、後者2%
急激な高用量で交代性精神病が生じることがある(↓発作、↑精神病症状)
発作後精神病は暴力22.8%と自殺関連行動7%であるため注意(Kanemoto K, et al. Epilepsy Behav. 2010 Oct;19(2):162-6. PMID: 20727827)
・てんかんに伴ううつ病
原因と考えられる抗てんかん薬もある(PB、PRM、ESM、CLN、ZNS、TPM、LEV、PERなど)(Stephen LJ, et al. Epilepsy Behav. 2017 Jun;71(Pt A):73-78. PMID: 28551500)、PERの論文もある(Steinhoff BJ, et al. Epilepsia. 2013 Aug;54(8):1481-9. PMID: 23663001)
治療の第一選択薬は新規抗うつ薬
LEVによる行動障害はドパミン関連遺伝子多型が関連?? 何とも言えないが(Helmstaedter C, et al. Epilepsia. 2013 Jan;54(1):36-44. PMID: 22881836)
・自殺関連行動
抗てんかん薬による自殺関連行動
2008年にFDAが声明、すべての抗てんかん薬の添付文書にそのリスクが高まると記載せよと警告
しかし、抗てんかん薬は自殺リスクを高めない、との報告(Grimaldi-Bensouda et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2017 Mar;26(3):239-247. PMID: 28052554)。しかし注意は必要だ
・てんかん外科術後も精神症状がある
精神症状の既往歴、術後に発作が残存、また発作予後良好例でも適応障害が(burden of normality)
・PNESとてんかん発作との鑑別や治療
PNESの10項目(Avbersek A et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2010 Jul;81(7):719-25. PMID: 20581136)
てんかんとして初診する患者の5-20%
手術が必要となる難治てんかんでは15-30%
失禁や咬舌はPNESを否定しない
発作後に10-20分以内にプロラクチン濃度上昇があればPNESではないかも?? でも絶対ではない
ある徴候をもってPNESとはいえない。あくまで除外診断である
PNES診断基準(LaFrance, et al. Epilepsia. 2013 Nov;54(11):2005-18. PMID: 24111933)
治療は、良い知らせとして告知する
仮病や詐病ではない、偽物という価値判断を交えずに説明を
抗てんかん薬は必要がないと説明(本物の発作が現れるリスク、減量中止で精神状態の一時的悪化はある)
PNES告知は新たなアイデンティティの形成とセットで。てんかん否定はアイデンティティ喪失による動揺
真の発作を合併している場合は、患者家族にどのタイプの発作がPNESでどのタイプが本物かに関する十分な説明を

トラックバックURL
http://m03a076d.blog.fc2.com/tb.php/2167-bc1209a4
トラックバック
コメント
最中先生お疲れ様です。
最新のてんかん治療エッセンスが散りばめられており非常に勉強となりました。

>・精神疾患やせん妄と間違われやすい せん妄状態の高齢者の30%弱がNCSE(Naeije G et al. Epilepsy Behav. 2014 Jul;36:18-21. PMID: 24836528)

確かに臨床上、せん妄なのか発作後もうろう状態なのか判断に悩むことありますね。個人的には30分以上異常行動が続くようなら、せん妄と考え対処しております。


>・妊娠可能年齢への薬剤:VPAは奇形や知的発達障害、行動障害の発症リスクが高い。LTGとLEVは奇形発症、知的発達障害のリスクが比較的低い

おっしゃる通りですね。加えてVPAの若年女性への投与は「多嚢胞性卵巣症}を惹起する可能性も指摘されていますね。研修医にはVPAの安易な処方は控えるよう指導しております(確かに使いやすいですが・・)

寒さ厳しい折、ご自愛ください(^.^)
通りすがりの精神科医dot 2017.11.24 12:11 | 編集
>通りすがりの精神科医先生

ありがとうございます。
せん妄と思われた患者さんに少しバルプロ酸シロップを入れると良くなることがありますが、ひょっとしたらそういう患者さんはてんかんだったのかもしれませんね…。
やはり脳波はとれる環境であればとることも大事だなと思いました。
バルプロ酸は急速飽和も可能なので、精神科医にとって使いやすい薬剤ですね。
でもすぐそれを使うようにするとナントカのひとつ覚えになってしまってもいけないので、この患者さんには何が良いのかというのを常に考えて選ばねばいけませんね。
m03a076ddot 2017.11.25 09:20 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top