2017
12.13

LEAPをまなぶ

Category: ★本のお話
 現在、東京におります。ちょっと研修会に出てまして…。またいずれその辺りの記事もアップできればなと思います。

 さて、今回は本のお話。「病気じゃない」「もう治った」と話して医療につながらない、医療から離れる患者さんがいます。未治療の期間が長いと病気はどっしりと根を下ろしてしまい、治療を行ってもすっきりと良くならず ”治療抵抗性” となりがち。早期介入が求められますが、患者さんのこの考え(病識がない、とも言われますが、実際は病気の症状のひとつです)によって、なかなか適切な時期に治療を行うのが難しくなることがやっぱりあるのです。

 ご家族や医療者と押し問答になって、結局はご家族間での関係性や病院との関係性が悪くなり、ますます病気は悪くなる…。そうなると本当に厳しい。そういう時の技法として、LEAPがあります。これは星和書店から翻訳が出ている『病気じゃないからほっといて』という本の著者が作り出した方法。ちょっと横道に逸れますが、星和書店さんの本は全体的に装丁とかフォントとか、そういうのが野暮ったいのが特徴。もう少し洗練させても良いような気もしますし、でもこの地味さが星和書店さんらしいっちゃらしい。

 さて、その本には、このようなことが書かれています。


まず言い争うのをやめて、耳を傾け始めましょう。妄想的な考えや、自分は病気ではないという思いも含めて、自分のものの見方が尊重されたとその人が感じるようにするのです。


 大事な導入ですね。何度言ってもダメだったら、これまでとは違うやり方をトライする必要があるでしょう。それの大枠がまずコレになり、LEAPのLに当たる部分です。

 LEAPはListen-Empathize-Agree-Partnerの頭文字をとったもので、以下のようにまとめられています。


L(傾聴)
理解しながら耳を傾け、批判したり、防衛的になったり、否定したりすることなく、聞いたことを相手に返す。
自分の意見はできるだけ後で言う。

E(共感)
妄想的な思い込み、病気ではないと証明したいという欲求、治療したくないという気持ちに共感して体験を分かち合う。

A(一致)
意見が一致するところを探し、意見が合わない点もそれをお互い認め合う。

P(協力)
一緒に作った目標の達成への協力関係を築く。


 傾聴と共感はとても難しいものです。これができる人は医療者でも少ないのでは…。相手との”あいだ”で成立するもので、相手が「傾聴してもらった」「共感してもらった」と思って初めて傾聴と共感は傾聴と共感になる、と言えるでしょう。本には、傾聴のポイントとして ”あなたの意見を言わないこと、異議も唱えないこと、議論をしないことがコツです” と書かれており、共感については ”誰かにあなたの考え方を真剣に受け取ってもらいたいのなら、あなたが真剣にその人のことを考えていることを、その相手に感じてもらわなければならない(中略)どんなに「おかしな」ものと思っても、あなたはそれに共感しなければなりません” とあります。これって本当に難しいですよ。この2つが達成できたら7-8割は成功と言えそう。この辺りは平木典子先生のアサーション本などを補強として読んでも良いでしょう。

 一致のところでは ”互いの立場が完全に対立しているようでも、一致できるところは必ず見つかります。ここで大切なことは、自分の人生について決める際には、その人なりの選択と責任があるという点です。(中略)あなたが力を注ぐべきことは、その人と一緒に物事を見直してみて、最終的にお互いに一致できる事実を見つけることです” とあります。

 LEAPでは最初の傾聴と共感がどれだけ出来るかというのが大事なのだろうなと思いました。そして、同じ目線に立つことが出来るところを探していき、人生について考えそして決定する権利と責任の両方が患者さん自身にあるということをしっかりと伝えます。そうしたら、それに向かってお互い協力して進んでいくというやり方。これらの詳細は本を読んでいただきたく。訳本ですが訳の硬さもほとんどなく、全体的にとても読みやすいです。患者さんのご家族が読んでみると良いかしらん。

 病識のことがこの本には出てきますが、個人的には病識を持たせるのは残酷なこともある、と思います。無理にそう ”教育” するのも何か違うんじゃないかなと。ほのかな ”病感” が持てれば御の字でしょうか。病識を強いるのは患者さんを引き裂くことにもつながりかねないと思いますし、病識のない患者さんのこころこそ医療者は大切にそっと触れる必要があるでしょう。
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