2016
11.10

デモ禁止!

Category: ★精神科生活
 時期が時期だけにタイトルはキナ臭さがありますが、あのデモンストレーションの”デモ”ではありません。問診上の発言でなされる「でも」でございます。これは逆説を表し、古くは懐かしの評論文読解で「大事なところ!」として取り上げられた記憶のあるかたもいらっしゃるかと。


なるほど~だ。しかし~ではないだろうか。


 という、アレです、アレ。大学受験で小論文を勉強したかたは、「良いか、イイタイコトは逆説で書け」と教わったかもしれません(樋口式とか…)。

 この「でも」は結構強力でして、前に言ったことを打ち消してしまいます。だから、対話でこの言葉を使うのはリスキー。

患者さん「車に乗ろうとしたらいきなり息が苦しくなって…」
医者「でも調べてみたところ、異常なかったんですよ。大丈夫」

 こういう表現だとちょっと患者さんは取り付く島もないという感覚になるでしょうか。ちょっと変えてみましょうかね。

患者さん「車に乗ろうとしたらいきなり息が苦しくなって…」
医者「車に乗る時に苦しくなったんですね。でも調べてみたところ、異常なかったんですよ。大丈夫」

 これだとどうかな? 患者さんの言葉を繰り返して、前よりは柔らかくなりました。人によってはこれでO.K.ですが、これでもちょっとなぁというかたもいる。それだけ「でも」の力は強く、言葉の繰り返しのクッションを取り払っちゃう可能性もあります。

患者さん「車に乗ろうとしたらいきなり息が苦しくなって…」
医者「車に乗る時に苦しくなったんですね。びっくりしたでしょう」
患者さん「はい」
医者「いきなりそうなると不安になるのも無理はないですね。でも調べてみたところ、異常なかったんですよ。大丈夫」

 認証(validation)が入ることで、かなり良い感じ。ここまで来ると「でも」の強さは小さくなったでしょうか。いやいや、「でも」はこの組み立てをもひっくり返しちゃうこともあります。相手の意見を抑えて自分のイイタイコトを前面に出す手法なので、「でも」を使うとdia-logueになりづらく、mono-logueと受け取られてしまいそう。

 ということで、「でも」を他の言葉に置き換えてみることを推奨します。逆説ととられないような工夫ですね。

患者さん「車に乗ろうとしたらいきなり息が苦しくなって…」
医者「車に乗る時に苦しくなったんですね。びっくりしたでしょう」
患者さん「はい」
医者「いきなりそうなると不安になるのも無理はないですね。そこで調べてみたところ、異常なかったんですよ。大丈夫」

 「でも」を「そこで」に変えてみました。ちょっと良くなった気がします、何となく(どうかな?)。「そこで」に限定する必要はないのですが、この言葉は流れをそのまま受けて次に持っていってくれます。逆説のような流れの屈曲を感じさせないのがポイントかと。「そこで」以外には「実際に」なんていう表現のしかたもあるかしらん。

 流れがいきなり曲がると、相手は「おっ、何だ何だ。こっちの言うことは否定するのか」と感じることが多いのです。「でも」は言い合いになりがちでして

医者「でもね」
患者さん「いやでも先生」
医者「うーん、でもねぇ」

 こんな感じになると、お互い「聞いてもらえなかったなぁ」というくすぶりが出てしまいます。対話では流れを折り曲げないことが原則で、曲げるにしても緩やかな曲線を描くように。もちろん意図的に「よいしょ!」と曲げることがあり、それは患者さんに「おっ?」と注目してもらうためであります。

 自分は「でもねぇ」という言葉がつい出てしまうことがあるので、意識的に注意して言い換えるようにしております。
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コメント
否定しない
上から目線な物言いはしない

大事ですよね。丁寧に喋ってるのに傍から見てると失礼な発言してる医療従事者って意外といます・・・
「腎障害が~前立腺肥大が~」とか、普段何ともない人からしてみたら何のこっちゃ??な説明の仕方の子も結構います。

カウンセリングじゃないけど、口調や表情で患者さんの不安って拭えてるような気がしてます。

NKdot 2016.11.11 23:51 | 編集
他者との対話でも話をまとめたければ意識的に
「でも」よりも「そうですね。まあこういうのもありますよね」「あらーそうねえ」的にマイルドと否定形を使わずして自己の意見を述べることもありますよね(ご近所とか、子供を介して交際している人などは特に)
あとは自己対話でしょうか。
嬉しい!!でも泣く。
よりも
嬉しい!!だから泣く。
否定より受容主にしていると前向きになれるような
気がします。
さくらdot 2016.11.12 15:34 | 編集
>NKさん

ありがとうございます。
身振り手振りもそうですし、他には声のトーンや声色なども注意したいですね。
前者をnon-verbal、後者をvocalと言って区別しています。
この辺りの配慮が日常の話でも大事なってくるかと感じています。
m03a076ddot 2016.11.14 22:03 | 編集
>さくらさん

ありがとうございます。
話の流れをどうイメージして、急に曲げないかというのが大事なのかもしれませんね。
おっしゃるとおり、自己対話も大きな役割があると思います。
感情も、”悲しい”ではなく”悲しい、と感じている”と言い直すと距離感が出て来ることもありますし。
m03a076ddot 2016.11.14 22:13 | 編集
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