2016
10.15

コトとしての母乳

 ”母乳神話”というのがあり、ちょっと前のYahooニュースにも出ていましたね。「母乳は人工乳よりもすべてにおいて優れているのであり、育児をするのであれば母乳でなければならない」、そんな母乳至上主義を指します。確かに母乳は人工乳に比べてアレルギー疾患のリスクが下がったり感染症に罹患するリスクが下がったり、最近では自閉症リスクも低下するのではないかと言われており、飲ませて悪いことはないと思います。育児雑誌やネットでも程度の強さこそあれ「母乳ってすごい!」という記事は結構眼にします。

 ただ、母乳礼賛は行き過ぎると”押し付け””暴力”になります。「母乳で育てないと…」とお母さんは焦り、また人工乳で育てていると「可哀想」と言われてしまうこともあり、そして、そこを突いてくる”母乳ビジネス”もあります。「母乳、母乳…」ととらわれたお母さんは苦しくなります。育児を取り巻く環境はあまりよろしくありません。

 確かに母乳は人工乳と比較すると良い点が多いと思います。でもそれは100%を保証しません。母乳で育てたらアレルギー疾患に絶対ならないかと言うとそうではないのです。あくまでも可能性、リスクのお話。ちなみに自分は母乳で育ちましたが、幼少期はアトピー性皮膚炎と気管支喘息に悩まされ、それは治ったもののアレルギー性鼻炎はずっと続いていて今も酷いのであります…(あらら)。

 母乳って、出ない人はホントに出ないですし、また出てもHTLV-1感染症などによりあげられない人もいるのです。お母さんがおらずお父さんが育児をするのであれば、母乳はそもそも出ません。そういった人たちを”母親(父親)失格”と批判するのは、彼女(彼)らを傷付けこそすれ救うことにはならないでしょう。

 大事なことは、人工乳であっても親がこころにゆとりを持ちながらあげられたら、それは立派な母乳なのだという点。反対に母乳であっても、子どもが飲んでくれないと怒鳴る、思い通りにならないとイライラする、夫婦喧嘩が多いなどこころにゆとりがなかったら、母乳の利点は打ち消されてしまうでしょう。親の焦りや苛立ちは子どもに伝わってしまいます。もちろん、ゆとりも伝わります。

 母乳は”モノ”ではなく”コト”として考えるべきです。現象であるという理解を持ち、ほどよい(good enough)親であるならば、人工乳はいくらでも母乳になることが出来るのですよ。そこを忘れてはなりません。今の時代は少子化によって、”うちの子”にかける時間やお金がどんどん増しています。(他の子よりも)良いものを食べさせたい、(他の子よりも)素敵に育ってほしい、そんな思いが強烈になっている昨今、親は妙なビジネスにコロッと騙されてしまうことが多くなりました。母乳もそうですし、ワクチンにまつわるデマや食べ物など、ニセ科学・ニセ医学は儲かるためなら何でもするのです。焦りの真っ只中にいると落ち着いて考えることができなくなり、餌食になってしまいます。しかもその餌食は親だけでなく、子どもも、です。そこをしっかり考えていただきたいのです。

 離乳食についても、日本は手作りにこだわりますが、それに時間を消費してしまうと他の事ができなくなり焦りを生み出し、さらに子どもが思うように食べてくれなければ「なんで!?」と子どもや自分を責めるでしょう。そうではなく、必要に応じて出来合いのものを買って時間にゆとりをつくるのも重要だと思うのです。育児には親のゆとりが最も大事。親がゆとりを持てれば、子どもはそれに憩うことが出来るでしょう。それはさらに親のゆとりを強くして、関係性を良好にしてくれるのです。

 ”母”と”子”と考えるのではなく、”母子”というユニット、あいだで育児を考えてみましょう(ウィニコット的に)。そうすると、ゆとりや焦りがどんな影響を及ぼすかがイメージできるかと思います。「母乳でなければ!」と固執するのではなく、どういう関係性が親と子どもにとって大事なのかを根本から考えてみましょう。
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コメント
私も母乳で育ったようですが小5頃から大学卒業までアトピーで苦しみました。そして現在も鼻炎。
アトピーはストレスで悪化していたし、最近鼻汁多いのはアレルギーよりストレスで神経バランス乱れてるせいかもしれませんが。

ちなみに少し前に出席した勉強会で腸内細菌叢の話題が出て、それも経腟分娩か否かも関係あるとかないとかいう研究も出てきました(-_-;)
私は妊娠したとしても帝王切開と産科から決められているし、貧・・で恐らく母乳でないし、私の子に産まれると可哀そうな体質になっちゃうから産まない方がいいだろうな・・・と思います。
こういう話って知らない方が幸せなんだろうな。20代の無邪気な頃にちゃちゃっと結婚しとけば良かった!と最近思います。結婚してても離婚してた可能性大ですけどね。笑
NKdot 2016.10.16 16:21 | 編集
>NKさん

ありがとうございます。
経膣分娩か帝王切開かというのもよく言われますね。産道を通らねばならないという固定観念の人も多く、それは帝王切開を否定する方に傾いてしまいます。
帝王切開する必要のある人もいますし、細菌叢も”程度”問題ですから、帝王切開で産まれた子が劣っているということには全くなりません。
貧…でも巨…でも母乳が出る人は出ますし出ない人は出ませんし、こればかりは産んで飲ませてみないと分からないかなぁと思っています。
最近は結婚→家族というシステムが崩れてきた感じがあります。それが決して悪いことではなく、新しい時代に入ってきたのかもしれません。家族という大きな物語が失効して、多様性ある小さな物語の時代に来たのでしょうね。
m03a076ddot 2016.10.19 09:55 | 編集
確かに”程度”の問題ではありますよね。
昔と比べて豊かな時代になったから、生活リズムや食生活のバランスが乱れているから、生活習慣病や睡眠障害なんかも出るのかなーと思います。
規則正しい生活と食生活の栄養バランスにこだわってるので、血液と睡眠は健康そのものです。笑
NKdot 2016.10.23 22:38 | 編集
>NKさん

ありがとうございます。
極端な論調は明快なので人を惹きつけますが、分かっていないことを排しているのでちょっと怖いところです。
リズムはとても大事ですね。
リズムを立て直すことが養生の基本なのかもしれません。
m03a076ddot 2016.10.26 11:00 | 編集
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