2016
09.27

国家資格ということで

Category: ★本のお話
 医学書院さんから出ている『公認心理師必携 精神医療・臨床心理の知識と技法』を読みました。

 いわゆる”心理士”は国家資格ではありません。2016年時点で最もメジャーな資格が”臨床心理士”でしょうか。”○○心理士”や”○○カウンセラー”という資格がものっすごくたくさんあり、乱立の様相を呈しています。通信教育で取得できたり(臨床経験がなくても!)、中には資格ではなく名乗ったモン勝ち的なものだったり。怪しげな自己啓発本を出している”~~カウンセラー”というのも職業としての意味合いが強く、料理研究家と似たような気分になってしまいます。ちなみに自分は勝手に料理愛好家を名乗っていますが(料理が好きなら誰でも名乗れるし)。

 そのような現状なので、国家資格の誕生が求められており、紆余曲折を経てようやく”公認心理師”が誕生することとなりました。自分はあまり詳しくないのでこれ以上の言及はできませんが、”心理士”だと集合が大きすぎて、また知識の多寡や偏りが激しく、ちょっと良く分からなかったのが正直なところ。臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理士ならまだイメージが沸くんですが、それ以外となるとどんな知識を持っていてどんなお仕事をしているのか分かりません。よって、公認心理師という”国家資格”が出来れば、医療者も何となくホッとできるのではないかと。「国の定めたこのラインは超えてきてますよ!」というお墨付きはやっぱりあると安心します。特に精神療法(心理療法)は療法間での対立も強く、自分みたいな部外者から見ていてあんまり気持ちの良いものではありません。とってもクセの強い人たちも多く、「心理士の世界は怖いのかしらん」と思うこともちょろっと。最近はそのケンカも大人しくなっているでしょうし、多くの心理士の先生がたはうまくバランスをとっているのでしょうね。声の大きな人たちの意見が大きく見えるということなのかも。

 さて、そんな国家資格が出来る、ということは試験が行なわれるということでもあります。それに向けて複数の出版社が本を出していますが、ご多分に漏れず(?)医学書院さんも参戦。「公認心理師ってどんな知識が必要とされているの?」という興味もあり、読んでみることとなったのであります。

 この本、一言で言うと


THE☆医学書院


 です。医学書院さんの本道を行っている感じで、学生時代に読んで情報の多さと文字の小ささに打ちのめされた『標準生理学』をちょっと思い出させてくれました(今は『標準生理学』を読んでもそんなにストレスを感じませんが、何も知らない学生時代はきつかった…)。”情報の多さと真面目さ”においてまさに「これぞ医学書院だなぁ」と思わせるもので、本のつくりといい表紙の色合いといい、あえて言うなら『標準心理学』でしょうか。ホント”標準シリーズ”に加えても良いくらい。最近はナンパな本が多くなっており、出版業界もユーザーフレンドリーな流れになっていますが、この本はそんな流れを気にせず「真面目につくりました! どうぞ本気で読んでください!」という気概を感じます。

 国家試験ではどれくらいのものが出るかがまだ分からないので、試験対策本として的を射た内容かは不明です。しかし、目次を見てもらうと分かるかと思いますが、本当に幅広く扱っておりどんな内容の問題が出ても掠ってはくれそうですし、試験対策としてのみならず心理士として知っておくべき事柄を網羅している本としての側面も持ち合わせているでしょう。ページ数は300ページちょっとなのでそんなに厚い部類ではありません。これも読む気にさせてくれます。

 とは言いながら、そんなに厚くない本にたくさんの範囲を詰め込んでいるとも表現でき、残念ながら各範囲の内容の浅さにつながります。こればかりは何ともしようがないのですが、例えば向精神薬全般については8ページのみ、本領が発揮されるべき個人心理療法では認知行動療法が約2ページ、対人関係療法も約2ページ、精神分析的心理療法は約1ページのみの記載。

 そんな中でも無駄話を一切なくし、回り道なしで直進して伝えたいことを記載しています。削って削って何とかギリギリ詰め込んだ、執筆した先生がたの苦悩が浮き上がってきそうな気も。ホントはもっと書きたかっただろうに…。でもこれだけのものをこのページ数に収めたな。

 ということで、心理士の先生がたのご意見も聞いてみたいところではありますが、自分から見ると「公認心理師とか関係なく医療職として働くのであれば知っておきたい内容」です。しかし、読んでいて「もっと知りたい」「ちょっと説明が少ない」という部分が多く見られるため(仕方ないんですけどね)、そこは個人個人で掘り下げる必要はあるでしょう。試験対策本としては、明確な範囲の公開(もうされているかは寡聞にして知らないのですが)や今後行なわれる試験によって試されることになるかと思います。でも単なる試験対策本に成り下がってほしくはないなぁという気持ちもアリ。
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コメント
まだ合剤が珍しかった頃、ベゲタミンに「なんじゃこりゃ」と思った記憶がよみがえりました。
ベゲタミンを割る・・・なんて処方もつい最近まで見かけていたので、皆さまの症状が悪化しないといいなと思います。
精神科疾患をお持ちの方に極端に差別的な発言をする医療従事者の友人にガッカリした週末だったので、何だか悲しくなってます。
完全に愚痴です。笑
NKdot 2016.10.03 20:50 | 編集
>NKさん

ありがとうございます。
ベゲタミンはなかなかカオスなお薬ですね。
これをポンポン出す精神科医も中にはいるので、困ったものですが。
世の中、差別はなくならないなぁと思っています。
どこかで差別をしなければ生きていけないのかもしれませんが、それでもやはりしてはいけないことですね。
m03a076ddot 2016.10.05 13:47 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

あの本は久々に「正統な医学書院を見たなぁ」と感じ入ってしまいました。
標準シリーズの青表紙は文章が難解なものもあり、「本当に日本人が書いているのか!」と疑問に思ったこともあります。
おっしゃるように、医学書院さんも柔らかめの本が増えていますね。
”ケアをひらく”シリーズは読みやすくかつ結構深い内容のものが多く、気に入っています。
本を読むと知識が増え、そのこと自体に楽しみが出てきます。
役に立つとか立たないとかはどうでも良く、知識が増えて自分の考えが深くなったり新しくなったりする感触がとても良いなぁと考えています。
m03a076ddot 2016.10.05 13:59 | 編集
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