2016
08.06

開始する量

Category: ★精神科生活
 抗うつ薬を使う必要のある患者さんはやはりいます。使うにあたって考慮にいれるべきなのが、副作用。抗うつ薬の副作用で最も多いのが嘔気嘔吐だと思っています(SSRI/SNRIの場合)。何とも言いようのない吐き気のようで、患者さんはそれを経験すると抗うつ薬を飲むことがためらわれるほど。あとは便秘や傾眠でしょうか。

 そんな副作用は出さなくて済むのなら出したくない。最初からスルピリド(ドグマチール®/ミラドール®/アビリット®)や六君子湯や半夏厚朴湯などを噛ませる方法もありますが、個人的には出す薬剤の種類は少なく出来るならそうしたいところ。ということで、自分は開始用量を添付文書の半分にすることが多いです。

エスシタロプラム(レクサプロ®)なら5mg/dayから
デュロキセチン(サインバルタ®)なら10mg/day(脱カプセル)から
ミルタザピン(リフレックス®)なら7.5mg/dayから

 などなど。デュロキセチンは特に嘔気嘔吐の副作用が強いようにも感じますが、10mg/dayからだとそれが認められないか出現してもごく軽度。ドロップアウトが非常に少なくなるのでオススメ。このように、少なめからの開始は副作用でつらい思いをするのを軽減する意味合いが強く、忍容性を高めてくれます。これはイイコトだ、と思うかもしれません。しかし注意しなければならないポイントが2点あります。

 1つ目は、少なめから開始するということは有効用量までの道筋がちょっと遠くなるということ。添付文書では、サートラリン(ジェイゾロフト®)は

通常、成人にはセルトラリンとして1日25 mgを初期用量とし、1日100 mgまで漸増し、1日1回経口投与する。なお、年齢、症状により1日100 mgを超えない範囲で適宜増減する。

 とあります。50mg/dayがいちおうの有効用量とされているので、25mg/dayは”慣らし”です、いちおうね。でも半分の12.5mg/dayから開始すると、12.5→25(→37.5)→50mgなので、ちょっと到達が遅くなります。

 2つ目は、上記のように何段階も踏むことから患者さんが有効用量を”多い””そこまで増やすのが怖い””どんどん増えてしまうんじゃないか”などと感じるという点。”精神科のお薬”というだけで結構な怖さを持っている患者さんもいるので、そこに加えて”増えていく”という感覚があるとやっぱりね。その点については、投与前にしっかりと説明することが求められましょう。

 医者はお薬を出すだけですが、飲んでくれるのは患者さんです。そこには不安や期待が入り混じるでしょう。医者は念入りな説明でその不安を受け止めつつも軽くする必要があるのだと思います。それも精神療法のうちかなぁと。そして、臨床試験ではプラセボ効果はとっても困るのですが、実臨床では頼りにします。お薬のプラセボ効果を存分に高め、かつノセボ効果を出来るだけ低くする、それがお薬にまつわる精神療法。患者さんの気持ちを抱えながら、しっかりと説明もする。投与した後の診察では”飲み心地”をきちんと問う。当たり前ですが、それを忘れずに行なうことが欠かせないのだと思います。臨床では、華々しい行為よりも地味で忘れられがちなことがじわじわと効いてくるのではないでしょうか。

 ちなみに、これはあくまで個人的な意見ですが、抗うつ薬に反応する患者さん(抗うつ薬が効果を示す患者さん)って、開始用量でもある程度の効いた感じを得られることが多いです。サートラリンでも12.5mg/dayで「何となく前より楽になりました」など。だからその量で引っ張ることも結構ありまして。もちろん全部がそこで打ち止めにするわけではなく、あくまで臨床症状との兼ね合い。しっかり使わねばならない時だってありますよ。
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