2016
07.29

変化を付けたきゃ手を見てみようぜ

 家計のため、健康診断のバイトを週に1回しています。本職はリハビリ復帰の途中みたいな感じ(?)でして、健康診断を織り交ぜながら日常労務復帰を目指すのであります。

 ま、それは良いとして、健康診断を受けたことがあるという人はとても多いかと思います。そこでは医者の診察があるのですが、恐らく



ものすごい短時間



 だと思います。ちょっと頚を触ってポンポンと聴診器を当ててオシマイということもあり、「え、これだけ?」と感じたことが幾度となくあるでしょう。。。不満はあるかもしれませんが、医者側にしてみるとそれくらい短くやらないと時間内に終わらないという実情があるのです…。

 健康診断のスタッフみんなに時間のゆとりがあって、かつ受診者さん(健診の場合はお客さん?)も「別に診察くらい3-4時間は待っても良いよ」というのであれば、時間をかけることができます。でも現実は違うでしょう。スタッフは複数の会場をバスで移動して午前も午後も時間に遅れないようにバタバタと動きます。そして受診者さんも順番が遅いとイライラしてきます。健康診断の流れ作業的な雰囲気、そして医者の短時間診察はやむなくなされること、と理解していただきたいところ。

 診察以外にも心電図や血液検査とか消化管の検査なんてのが用意されている場合も多く、かつ”健康診断”というセッティングを考慮すると、診察そのものの果たす役割はそれほど大きくなく、診察以外で分かるものは基本的に診察しません(あくまで健康診断という条件で、ですよ)。健康診断に来るみなさんは基本的に健康(主訴があって自ら病院に来るわけではない)だし、時間もないし。

 しかし午前中だけでも100人近くで同じことをやっているとマンネリ化というかなんというか、飽きが生じてきてしまいます(人間なので…)。よって、自分は健康診断で受診者さんの”手”を診るようにしてます。数秒で終わるし。たまーにTerry's nailを発見して「糖尿病があるのかなー、肝臓とか腎臓が悪いのかなー」と思いを巡らすことも。そうそう見つかるものでもないですが。あとは最近”梅毒”が流行しているので、手掌に見事な発疹がポツポツ出ていないかを確認。今のところ見つけたことはないですけど、やっぱりね、用心して。

 手を診るようになったきっかけは若かりし時に買った『手で診るリウマチ』という上野先生の本(めちゃくちゃ薄い)。「色んなことが分かるんやなぁ」と面白く感じて、健康診断で診るようにしています。手を診る医者は少ないようで、受診者さんは「?」という顔をしますが。この本はもう絶版なんですかね、Amazonでは高値になっているし。

 ぱっと診て分かる所見というのは、それを伝えると受診者さんにも結構な印象を与えます。アルコールでちょっと肝臓が弱っている人にTerry's nailがあれば、その関連を示すことで、脅すわけではないですが「手にも出てきた」という感覚になります。「あらまぁ」と思っているところに「ここからきちんと立て直していきましょう」と伝えると生活習慣への助言が入って行きやすいかな? と思っています。じん肺の健康診断でばち指を見つけるとこっちも心配になって、キチンと調べたほうが良さそうだなぁという気持ちになりますし、受診者さんにも伝えやすいですし(実際、見事なばち指を診たことがあります)。脂質異常症についても、手ではないですが老人環(arcus senilis)があれば「眼に脂質が沈着している」というのは結構なインパクト。老人環そのものは高齢者にはよく見られるものですが、中年くらいの人にあるとやっぱり脂質異常症の可能性、ひいては心血管リスクが高くなります。耳朶皺襞(earlobe crease)も同様ですね。McGee先生の『Evidence Based Physical Diagnosis』にも記載があり、胸痛が繰り返し起こる患者さんでそれが冠動脈疾患なのかどうかという状況において、老人環はLR+3.0、耳朶皺襞はLR+2.3という、まずまずかな?という所見になっています。ものの1秒で分かる所見でこのLRなら悪くないですよね。

 ということで、健康診断には手を診るクセを付けてみたり、他にも視診で色々探すようにするとこっちも飽きずにこなせますし、受診者さんも「へー、手でこういうのが分かるんですね」みたいな新鮮な驚きを示してくれます。眼だと老人環以外に翼状片をよく見かけます、そういえば。

 患者さんにも”見て分かる”ものは、訳の分からない概念みたいな病気や数値で表される検査値を一段階近いものにしてくれるでしょう。患者さんと概念や数値とをつなぐのが、目で見える所見なんだと感じています。そこから健康に対する意識が高まってくれれば、言うことなしや。

 ちなみに、女性は健康診断にもかかわらずネイルをしてきたりお化粧してきたりと「うーん…」と思うところもありますが。。。頚の触診なんてしたら自分の指がキラキラ光ったり白くなったりで大変でございますよ。出来ればお化粧は落としてきて下さいね。健康診断終わったらいくらでもしてもらって良いので。。。
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コメント
「手を見る」こともいち早く異常をみつけることの材料の一つなんですね。
鍼灸師を目指す私たち東洋医学を主にする者は医療機器を用いての検査なんてできませんから脈や舌や腹診、など表面からうかがえる材料をひとつでも多く拾い集めて治療方針を決めなきゃならんです。経験の浅いうちはもちろん教科書に載ってるような典型的な症例なんかなかなかお目にかかれませんので難しいです。ひとつとってこれが何だとは決めかねますが少しでも治療効果を上げるための材料を拾い集める感じなんでしょうか。。いずれ、一人でも多く、経験を積み重ねる以外に近道はないでしょうかねえ。
象虎dot 2016.07.30 14:29 | 編集
>象虎さん

ありがとうございます。
手の所見もよく見ると意外なものがあり、大事だなぁと思っています。
でも全ての人に見られるわけではなく、所見があっても実は正常だったなんてこともあるので過信はいけないのですが。
経験を積み重ねること、そして勉強するところは勉強する、そのバランスが大事なのかもしれませんね。
m03a076ddot 2016.07.31 09:49 | 編集
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