2016
05.27

臨床のワンフレーズ(16):症状をガイドに

Category: ★精神科生活
 精神疾患を持っている患者さんに対して、「こころが弱いからだ」「精神が弱いからだ」ということをさも当然のように言い放つ人がいます。患者さん自身も「私はこころが弱いからこうなったんだ…」と自責的になってしまうことも。

 精神症状は誰もが呈するものであり、こころの強さや弱さということが要因ではありません。というか、「こころが強い/弱い」という言葉自体がどういうことなのか、自分には良く分からないのであります。

患者さん「こころが弱いから、イライラしたり落ち込んだり…」
自分「こころが弱いから?」
患者さん「はい…」
自分「うーん、そう感じるのね。○○さんの言う”こころが強い”って、どんなの?」
患者さん「え、何を言われても平気というか、何があっても元気みたいな…」
自分「そうか。そういうイメージね。落ち込んだりすると心が弱いからかなぁと考えてしまうのも無理はないかもしれんけど、私はね、それって弱いというよりもしなやかさだと思うのよね」
患者さん「しなやかさ?」
自分「こころって水風船みたいなもので、つらさがどんどんたまると、どこかで水を抜かないと破裂しちゃうのよ」
患者さん「はい」
自分「○○さんのイライラとか落ち込みって、水を抜いた証拠なんですよ」
患者さん「そうなんですか?」
自分「そう。水を抜いて”ちょっと風船膨らんできたから注意してね”って言ってる感じかしらね」
患者さん「ふーん」
自分「そ、だから、症状って言っちゃうけど、症状はサインでもあるのよ。膨らんできたから水抜いたよ、注意してねって。それを知らせてくれる」
患者さん「そうなんですか」
自分「もし症状が何も出て来なくて水が溜まってるのに気づかなかったら…」
患者さん「割れちゃう…」
自分「そう。○○さんはさっき”何言われても平気な人が強い”って言ったけど、風船が膨らんでるのに気づかない人だったら、それは大変よね。だから、○○さんはこころが弱いんじゃなくて、きちんと破裂する前に知らせてくれるしなやかさがあると思うのよね。だからそれを大切にして欲しいかな」
患者さん「はい」
自分「症状はガイドさんやね。ガイドさんがいなかったら道に迷ってしまう。症状が出てきたら、どっか無理してるんやないか、緊張が続いてるんやないかって考えてみて。そして、しっかり身体とこころにゆとりを持つ時間をつくって」
患者さん「はい」
自分「症状はそのためのものよ。うまく活かして、養生しましょ」

 症状は、うまく活かすことが出来れば生活のひずみを見つけてくれます。それに耳を澄ませて、生活全体を整えてみましょう。不安、不眠、過労、孤立…。生活の中に潜む”あせり”を照らしてくれるでしょう。それに気付き、心身ともに”ゆとり”を感じる時間を少しでも良いのでつくってみることも大事、というか治療の基盤。

 また、このように例えることもあります。

自分「台風が来た時に、太い幹で堪える木もあれば柳のように揺れてしのぐ木もあるでしょう。どっちが強い弱いじゃなくて、それぞれにしのぎ方があるんだと思いますよ。○○さんは柳みたいにしのぐタイプかしらね」
患者さん「そうですね…。そうかもしれません」
自分「こころは色々だで。しのぎ方も色々や。自分のしのぎ方を知って、うまく生活に活かしてみると良いですよ」
患者さん「はい」

 自身の持つしなやかさに気付くこと。レジリアンス(レジリエンス)という言葉があり、それは日本語で”回復力””抵抗力”、はたまた”回復弾性”などと訳されますが、自分はこの”しなやかさ”がしっくりくる訳なんじゃないかなと勝手に思っています。ま、訳はどうでも良いかもしれませんが、人にはそういう力が備わっていおり、患者さんにはそれを大事にしてほしい、そう思います。
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コメント
精神疾患を患ったことがない人たちは、精神疾患を患った人に対して、無理解な姿勢を見せることがよくありますね。私もそうゆう場所に第三者として同席しているとき、少し悲しくなったり、違和感を覚えます。否定はせず、ただそっとしておいてあげてほしい・・いつもそんな風に感じます。

症状について、敵視するよりも、耳をすませることのほうが得られるものが多いかもしれないですね。
ノラdot 2016.05.29 11:34 | 編集
私の中では幹が妙に太いのが「松岡修造」
しっかりとしなやかなのは「ぐでだま先生」です。

私の養生のコツは
症状を感じたら
「そのうち本気出す」
そのうちで良いと思ってます。

お薬も先生のお力も借りますけど
基本「治るまで待つ」って感じかな。
精神力よりも、休養力で勝負です(笑)
最近になってようやく「脳を休める」って技を知りましたけど
なかなか難しい事ですね。

ちなみに、私の言われた過去最高の言葉は
「お母さんのくせに、こんな精神力でよくやれるわね」
でした。










さくらdot 2016.05.29 23:16 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

無理解な発言はひとを傷つけるものですね。
確かに”甘え”という視点もありますが、そういう形でしか甘えを表出できないという悲しい子どもたちもいるのだと知らない人たちが多いのではないだろうか、と思っています。
精神論で責めるのではなく、解決志向で取り組む姿勢が大切ですね。
m03a076ddot 2016.05.30 23:13 | 編集
>ノラさん

ありがとうございます。
無理解が患者さんの孤立を強めてしまい、それが症状にも反映されますね。
それは抑うつでも不安でも、統合失調症でも同じことです。
疾患そのものはなかなか理解できない部分もあるかもしれませんが、病んでいる”人”に対しては理解していくという姿勢がとても大事だなと感じています。
症状も見方を変えればその人の無理を知らせてくれるサインなので、指標の1つとして考えると良いかと思います。
m03a076ddot 2016.05.30 23:18 | 編集
>さくらさん

ありがとうございます。
ぐでたま先生はしなやかぷるぷるですね。
確かに”休養力”は大事だと思います。
症状にとらわれていると休養力を発揮できないことも多くなりますので、それを意識するだけでも違うかもしれませんね。
最後の言葉はなかなかスパイスが効いているというか何というか…?
m03a076ddot 2016.05.30 23:21 | 編集
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