2016
03.23

不安でいること

Category: ★研修医生活
 研修医のみなさんが主戦力となる場、それは救急外来ではないでしょうか。自分が研修した病院では診た患者さん全員を内科直もしくは外科直に上申するという安全第一のシステムでしたが、病院によってはそうでないところもあります。

 特に救急外来デビューの日はめちゃくちゃ緊張する/したと思います。自分が初めて当直で救急外来に来た時、第一診察室では心肺蘇生が行われていた真っ最中でした。同期が頑張って胸骨圧迫をしていたのを見て、「おぉ、やっていけるかな…」と怖くなったものです(同期も初日に胸骨圧迫でくじけそうになったと言っていました)。ちなみに初めて診た患者さんは「喉が痛い」というかたで、典型的な咽頭炎。でもわたわたとしてしまって、カルテ記載も恥ずかしいレベルでした。そしてその日は色んなマニュアルやテキストを持って来ていたのも覚えています。重かったのですが、この重いのがお守り的な。ただ、色々と持ち込むのは研修医の2年間を通じてずっと不変でした。

 そこで、1つ重要なことを。それは


不安でいてほしい


 ということです。「救急外来怖いな」「何か失敗するんじゃないかな」という思いは、必ず持っていてほしい。なぜなら、その気持は真摯な勉強につながるからです。医学の勉強もそうですし、患者さんの勉強も。「いつまで経っても不安で、こんなんでオレ大丈夫かな…」と感じることもあるかもしれませんが、その不安があるからこそ、しっかりと勉強できるんですよ。だからその感情があるのは素敵なことなんです。敵視せずに、医者として生きていく上で大切なパートナーだとすら思ってみてください。

 逆に怖いのが「救急外来慣れたし、もう大丈夫だな」というこころ。確かにとっても優秀な人は大丈夫なのかもしれません。ですが多くの研修医にとって、それは”慢心”に変換されるでしょう。そうなると、自分自身にスキが出来てしまい、手痛いしっぺ返しを喰らうことだってあります。自分の経験では、エコーをたくさん練習して「結構イイ線行ったんじゃない?」と感じた時期がありました。今思い返すととても恥ずかしくて黒塗りにしたいくらいなんですが、その当時はそんな気分でいたのです…。しかし、ある患者さんの胆石を見つけられず、結果的にCTで判明したということがありました。内科直の先生からは「この部分のは見づらいよ」と慰めとも言える言葉をもらいはしたものの、エコーにちょっと自信が出ていた自分の鼻はポッキリと折れました。慢心の典型的な例でしょう。ふくらし粉で見かけだけ大きくなった安物のパン、そんな空虚な自信だったのです。

 自信を持つな、というわけではありません。自信が出ることはそれだけ勉強した傍証でもあるでしょう。しかしながら、自分1人が体験した世界の中、しかもそれは研修医の短い期間で得られた狭い自信であるということも忘れてはなりません。その部分では、不安を捨てずに持っていてほしいと思います。

 救急外来の怖さが抜けない研修医のみなさん、デビューを控えてちょっとドキドキしているかたがた、その姿がいちばんです。その怖さ・不安を忘れずに最後まで持っていてください。それは大きな武器です。

 自信が出てきたかたがた、しっかりと勉強しており、とっても素晴らしいと思います。でも、みんなが体験した”あの頃”の怖さも思い出してあげて下さい。今までの勉強は、その怖さがあったからこそ進んできたのかもしれません。それを糧にすると、もっと診察の質が向上されることでしょう。

 総じて、不安は決して悪者ではありません。その不安を不安として見つめてあげることが大切なのです。その上で、研修医として何をしていけば患者さんのためになるかをじっくりと考えて、その道を進んで欲しいと思います。不安はその道中を共に歩いてくれる仲間となり得るでしょう。
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コメント
他の業種ですが、初めての救急当直の時はテンパりました(笑)
死ぬほど怖かったです。足震えましたね。
日常業務でもそうですが、なれが出てくると確かに甘さが出てしまいました。
不安感をもつということは緊張感を持つという事でしょうかね。
先生方の場合、その持続時間が長いので負担が大きいとは思いますね。
常に緊張していると言うか。だからこそ、先生のように少し日常から
離れる日を意識的に作る方が体と脳には優しいのかも。
そろそろ病院では国家試験を終えた新人さん達が沢山デビューしますが
初診を忘れずに…ですね。
さくらdot 2016.03.24 16:31 | 編集
>さくらさん

ありがとうございます。
慣れると「もしや…?」という感覚が薄れてしまいますね。
もちろんずっと不安や緊張の中にいるとものすごく疲れますし、その疲れからミスをしてしまうと患者さんに不利益になってしまうこともあるかと思います。
やはりゲームセンターは必要なようです(自己正当化)。
医療現場や介護現場は世の中のドロドロした汚いところがたくさん露呈していますし、新しく入ってくる若い人も大変だと思いますが、燃え尽きずにたまにはぐでたま先生のように息抜きをして乗り切ってほしいなと思っています。
m03a076ddot 2016.03.26 11:48 | 編集
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