2016
02.16

研修医の先生にオススメ出来る本をダラダラと

Category: ★本のお話
 このブログでは、研修医の先生がたに役立ちそうな本を、思い出したかのようにちょろちょろと紹介しています。ブログトップの記事で”研修医のためのテキスト紹介”として各項目にまとめていますが、今回はこの中にはない本を。国試も終わったことですし、ピカピカの研修医の先生に読んで欲しい! という医学書をちょっと挙げてみようかと思います。ただ、自分は精神科医なので、精神科以外でかつちょっと専門的な新しい本の多くには眼を通せていません。逆に「これ読んでみて!」というのがあったら教えてほしいくらいであります。キリの良さから5冊紹介していますが、本当はもっとたくさん読んで欲しいところ。でも紹介しすぎてお腹いっぱいになるのも大変でございます。他の本については、ブログトップの記事のリンクから眺めてみてください。記事の中には少し古くなって、紹介している本も改訂されてしまったものもありますが。いつかアップデートしたいんですけどね…。

 1つ目は、岸田直樹先生の『誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた』です。

 これを読んだ時は眼からウロコというか何というか。自分が研修医の頃にあったら良かったのに…と残念な気分にもなります(?)。類書には『かぜ診療マニュアル』があり、そちらの方が後に出版されかつ分担執筆のためか岸田先生の本よりも厚くて詳しめ。しかし、岸田先生の本はスコアリングの見かた(単なる点数付けのためのものとして見ないこと)もしっかり教えてくれていますし、風邪診療にとどまらない”智慧”を学べるような感じで奥行きのある本だと思います。後は、本の経歴を見て知ったのですが、岸田先生って同じ高校卒業なんです(大先輩)。そんな理由もあって(?)研修医に勧める本の第一選択。

 2つ目は、松本俊彦先生の『もしも「死にたい」と言われたら』です。

 医療従事者であれば、誰しも患者さんから「死にたい」と言われたことはあるでしょう。研修医の先生もこれから言われることがあると思います。その患者さんの「死にたい」にどんな意味があるのか? を考えさせてくれる好著。そういえば、かなり昔の論文ですが、自殺についての金言がありました。それは

They may not hope to get to heaven but they know they are leaving hell.

 というもの(Price JS. Chronic depressive illness. Br Med J. 1978 May 6;1(6121):1200-1.)。彼らは決して天国に行きたいわけではないのです。今苦しいこの地獄から抜け出たい気持ちでいっぱい。その地獄が変わってくれたら、彼らは死を選ばないかもしれない。「死にたい」を「生きたい」に変化させるために、この本は必読と言って良いでしょう(特に”あとがき”が素晴らしいです)。

 3つ目は、黒田康夫先生の『神経内科ケーススタディ - 病変部位決定の仕方』です。

 これは学生の時に読んだ本で当時も感銘を受けたのですが、最近ふと読み返したら実にクリアカットで、一定の質を保ちながらもこれ以上に読みやすい神経内科の本を自分は知りません。しかも薄いのも魅力的。臨床でのファジィさを排している印象があるため実際にはこの本に書かれてあるようにはいかないことも多いのですが、原則を知り神経内科の論理性を覗くにはとても良い本だと思いました。「神経内科は得意」「神経診察はいつもやっているし症状から病変がたいてい分かるよ」という人には浅いかもしれません。あくまでも「神経内科ってちょっと難しいイメージあるよねー」という、苦手意識があり本を読む前から白旗を挙げているような研修医の先生に。少し神経内科が楽しく感じられるようになります。

 4つ目は『こんなに役立つ肺エコー』です。

 自分が研修医の頃はようやくちらほらと肺エコーの有用性が言われ始めた時で、研修した病院では一切行なわれていませんでした。なので論文を読みながら独学でやって、肺水腫のB-lineとか気胸のlung sliding sign陰性を見て一人で感動していた記憶があります。それが今ではこんな本が出るくらいにまで広まったんだなぁとしみじみ。肺炎もエコーで分かることも当時言われていましたが、自分は経験がないまま研修が終了してしまって、以降はエコー自体に触れることが激減(精神科なので…)。研修医の皆さんは、必ずエコー全般に強くなってください。そして、この肺エコーも大きな武器です。そんなに難しいものではないので、食わず嫌いをせずに是非。教えてくれる人がいれば一番良いのですが、1人でもできますよ。肺炎は単純レントゲンではなかなか写らず、エコーのほうが感度も特異度も凌駕しているという報告も多いのです、実は。自分は消化管エコーも好きで良く行なっていましたが、肺エコーの方が取っ付きやすくて分かりやすいでしょう。この本を読みながら実践を重ねましょう。心エコーについては、定性的な評価で十分だと思います。無理にEFを出しても、うまい先生が出したものと数字がかけ離れていることがとても多いのです。

 5つ目は、田中竜馬先生の『Dr.竜馬の やさしくわかる集中治療 循環・呼吸 編』です。

 2016年2月に羊土社から出たばかりの本。田中先生の人工呼吸の本は分かりやすく、精神科医でも「何となく呼吸器使えそうかも!」と思わせてくれる良書でした(実際は怖くて使えないと思いますが…)。そして今回は敗血症性ショックや肺塞栓など、集中治療で欠かせない病態をイチから分かりやすく教えてくれます。マニュアルではなく、生理学から活きた知識を教えてくれて応用力も与えてくれますよ。羊土社は研修医フレンドリーな出版社なのですが、難しく教えないようにしすぎて内容が骨抜きになっている本も実に多いのです。だから上級医の先生は”羊土社”と聞いただけで「ムムム…」と思ってしまうこともあり、実際まぁそれも無理ないなぁと感じないわけでもありません。でもこの本は生理学の基礎から組み立てていく感じで、まさに”理解”をもたらしてくれます。2年目でバリバリやっている研修医にはちょっと物足りないでしょうか。1年目や、国試が終わった学生さん向けという気がします。こういった良い本で基盤をつくっていくと、他の知識がどんどんつながっていきますよ。”循環・呼吸 編”ということは他にも刊行予定なんですよね、たぶん。ちょっと期待してしまいます。もちろん、人工呼吸も田中先生の本が抜群。

 こんな感じ。ぜひですね、立ち読みをしてみて、「良いな」と思ったら読み込んでください。読んで損することはない、はず。
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コメント
もしも死にたいといわれたら

は、前にも私なにか書いたような気がしますけど
今回入院中に再読する機会がありました。
やはり読んでいて思うのは、こういう本を読んでいたら
あのときの自殺患者さんにもっと良く対応できていたのかな?
という過去の風景ですかね。
死なせてくれという若い女性患者さんを押さえるとき
ここで、死なせる訳にはいかんのよ。病院だし。
と事務的に対処していたのは態度にも出ていたでしょうしね。

医療職であれば若いうちに読んでおいた方が良いと思います。
さくらdot 2016.02.16 16:25 | 編集
>さくらさん

ありがとうございます。
凄い本というのは、自分の過去の体験に響いてきますね。
後悔ももちろん出てきますが、明日からまた良い診療をという気にもさせてくれます。
仰るとおり、医療者全体が一読しておくべき本だと思います。
m03a076ddot 2016.02.20 12:03 | 編集
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