2016
02.24

風邪の漢方薬を1つ! と言われたら

 風邪に対する漢方薬は結構な種類がありまして、状態に応じて用いるものが変わってきます。タイミングを間違えるとかえって悪さをするものもあり、注意が必要。

 そんな中で、ある程度ブロードに使えて「これがあれば何とか対処できる」というものを1つ。それが


参蘇飲


 です。構成生薬は

人参、茯苓、半夏、陳皮、葛根、桔梗、枳実、紫蘇葉、前胡、生姜、大棗、甘草

 であり、結構多めですね。これら生薬を眺めてみると、実にバランスが取れていることが分かります。

紫蘇葉、葛根、陳皮、生姜:解熱鎮痛
半夏、前胡:鎮咳
桔梗、枳実:去痰
陳皮、枳実、人参、大棗、生姜、甘草:健胃

 熱を冷まし、節々の痛みや頭痛も軽くしてくれて、咳も改善。胃腸の保護にも抜かりありません。良い風邪薬だなぁと思います。風邪への漢方は早期にドカドカと使ってさっさと治すのが大事で、3包/dayでだらだら使っていても効果はたかが知れており、プラセボと何ら変わりないのではないかと思う時も多く、実際にコクランでは漢方はあんまり…という内容だったように記憶しています。参蘇飲も使い方が大事で、6-9包/dayくらいを最初の2日間で使うと治りが早いです(9包/dayの処方ではレセプト切られますよ)。また、参蘇飲は上記のように風邪の諸症状に効果のある生薬を盛り込んでいるオールマイティな漢方薬であるため、裏を返すと1つ1つの症状には若干弱いところもあります。そういった意味でも3包/dayではなく多めに服用することが肝腎。銀翹散も良いお薬ですけど、OTCなんですよね。残念ながら処方ができない。

 風邪は風邪でも諸症状の強さは異なります。よって、自分は、参蘇飲をベースにして他の症状に合わせて方剤を足すことにしています(生薬そのものはエキス製剤だと足せないので)。例えば…

頭痛が強ければ川芎茶調散などを追加
鼻水や悪寒が強ければ麻黄附子細辛湯などを追加
咳と痰が強ければ清肺湯などを追加
空咳が強ければ麦門冬湯などを追加
咽頭痛が強ければ桔梗石膏などを追加
後鼻漏っぽさが強ければ排膿散及湯などを追加

 ”など”としたのは、合方の候補は他にもあり上記が絶対ではないため。

 参蘇飲単剤ではなく他の方剤を足すことで対応可能な範囲が広がります。しかしながら、単剤でももちろん使い、「あー、風邪ひいたわ」というような典型的な風邪にとっても良いですよ。傷寒論でいう太陽病の時期(正気も実、外邪も実)は一発療法をするためこれだけではちょっと力不足ではあるものの、熱があって咳が出て頭も痛いし…というような”ザ・風邪”にはもってこい。この参蘇飲はなぜかマイナー扱いされている漢方薬なのですが、風邪には主役級の働きをしてくれる名手です。葛根湯なんて適応時期と範囲が狭くて…。ぜひですね、参蘇飲にスポットライトを当てていただきたい。”漢方版 総合感冒薬”としてお使いくださいまし。

 ちなみに、子どもは風邪をひくと吐いてしまうことが多く、その時に使用するのは参蘇飲ではありません。子どもの風邪にベースとするのは


小柴胡湯


 です。これもまた症状によって他剤を合わせます。中でも高熱から脱水も来たしやすいので、白虎加人参湯を合わせることが多いでしょうか。嘔吐や下痢がひどければ五苓散も足すことが多々。”柴苓湯”というエキス製剤がありますが、これは小柴胡湯と五苓散を合わせたもの。この柴苓湯に白虎加人参湯をうまく合わせてあげると嘔吐下痢の子どもさんの熱も下がりやすく脱水にもなりにくいため良いかと。咳が強い時は小柴胡湯に麦門冬湯と白虎加人参湯を合わせて使います。
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コメント
こんばんは。

参蘇飲!
本当に風邪にオールマイティーに使えて、隙のない漢方薬ですね。
今度風邪を引いた時に、主治医に処方していただけるようお願いしてみたいと思います。

ところで漢方薬に限らず、風邪薬の役割についてご質問があるのですが、宜しいでしょうか?
風邪薬(というか薬全般?)というのは対処療法に過ぎず、風邪を治すのは本人の自己治癒力だという文言をそこら中で見かけます。
風邪薬はあくまでも風邪の諸症状を緩和させるだけで、治癒スピードを上げないと僕は解釈しています。

僕の認識で合っていますでしょうか?
匿名dot 2016.02.25 19:03 | 編集
>匿名さん

ありがとうございます。
参蘇飲は良いお薬なのですが、マイナーなので扱っていない病院もあるかと思います。
また、多くの医者は3包/dayで出すので、ちょっとそれだと効きが弱い印象です。
いわゆる風邪薬は、症状を少し軽くする程度というお考えで間違いないでしょう。
漢方薬も合うものを使用しなければかえって良くないことがあります。
しかしながら、市販の風邪薬は症状を長引かせますし、処方薬のPL顆粒やSG顆粒、子ども用のペリアクチンシロップなども実は治りを遅くします。
よって、風邪をひいたらハチミツ入りのコーヒーを飲んでおとなしくしているのが一番でしょう。
自分が漢方薬を出すのは、外さなければ治りが早いと実感しているからですが。
m03a076ddot 2016.02.28 09:13 | 編集
お返事ありがとうございます。

あらー、やはりマイナーなお薬でしたか…。
自分の通っている病院は漢方内科があるので、もしかしたら取り扱っているかもしれませんが。

しかし、漢方はハマればいい働きを見せてくれるようですね!
一度漢方内科にかかってみようかなと思います!
不思議で胡散臭い印象もある漢方薬ですが、精神科でも使いこなせるお医者さんが増えるといいなぁ。
匿名dot 2016.03.05 23:09 | 編集
>匿名さん

ありがとうございます。
漢方内科であれば、参蘇飲もあるかもしれませんね。
ただ、漢方は医者によって考え方がかなり異なってしまうのが難点です。
参蘇飲も「そんなの効かないよ」「あなたの風邪には向かない」と言われる可能性も十分あります。
そこが、漢方の胡散臭さ、どこかで信用しきれないマイナス点だと思います。。。
精神科に関して言えば、患者さんのサポートとしてうまく働いてくれると感じています。
もちろん、そこでも考え方の違いが結構あるのですが…。
自分の処方の仕方は日本漢方の先生方には奇異に映ってしまいますし、自分からすると日本漢方の処方は「漢方の理解に基づいていない」とも感じてしまいます。
漢方が”学”になりきれていないところなのでしょうね…。
m03a076ddot 2016.03.06 14:05 | 編集
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