2015
11.18

ツムラさんの漢方講演会

 今日は、タイトルの通り講演会で喋ってきました。ツムラさんは業界最大手で扱っている漢方薬の種類も最も多いため、お世話になっております。

 内容は以前にお話ししたクラシエさんの時とあまり変わりませんが、少し精神科以外の先生がた用に強弱を付けてみました。

 90分ずっと声を出していると、もう今はガラガラですね…。こういう時は麦門冬湯を1回2包くらいで頓服として飲むと良いですよ、というのも記事にした記憶があります(お湯に溶いて喉に染み渡らせるようにして飲む)。

 講演会ついでにこの麦門冬湯のお話を少し。良く空咳に処方される漢方薬ですが、構成生薬は以下。


麦門冬湯=麦門冬 半夏 人参 粳米 大棗 甘草


 この中で、半夏というのが鎮咳去痰作用と制吐作用を強く持ち、メインの働きです。ただし、半夏は身体を乾かしてしまうため、それを相殺というかもっと潤す方向に持っていくために、他の生薬(半夏以外は身体を潤す作用を持ちます)を足している形になります。強力な半夏の作用を持ちつつ、空咳には短所となる身体を乾かす(燥性)点を他の生薬でカバーし、結果的に潤う方向になっていると考えられます。

 とても良く出来た漢方薬だなぁと思います。先ほどの声がかれたような時、風邪は治ったんだけど空咳だけまだちょっと残っている時、なんてのが良く効く症状。注意点としては、1日3包では効かないことも多いため、そういう時は増量するということと、やっぱりできるだけお湯に溶いて喉に行き渡るようにして少しずつ飲むようにするということでしょうか。自分で飲む時は6-8包くらいを1日で飲みます。咳が強くて夜眠れないという時は、寝る前に2-3包飲むなど、1日の中でも強弱をつけてみましょう。1日3包で固定せずに増量してさらに柔軟性を持たせることが、麦門冬湯に限らず漢方薬を効かせるコツ。ただ、空咳に麦門冬湯を出していて「効かないなぁ」と思っていたら実は結核だった、なんてことはないようにしましょう。きちんと原因を探ることは忘れずに。

 麦門冬湯の注意点は、痰の多い咳にはあまり効かない、むしろ悪化させる(痰が多くなる)ことです。この漢方薬は喉を潤わせて気道にバリアを張って過敏性を緩めてくれるようなイメージなので、痰が多い時はこの潤わせる作用が悪さをしてしまいます。

 ちなみに、空咳が多いことで喉も痛くなって来た時、自分は麦門冬湯に桔梗湯を合わせて飲んでいます。桔梗湯は構成生薬が桔梗と甘草だけというシンプルな漢方薬で、甘くて美味しい。この中の桔梗がちょっとした喉の炎症を抑えてくれるので、合方としています。お気に入り処方の1つでして、鼻閉により寝ている時に口呼吸になって朝起きたら喉が痛いなんてのは、桔梗湯の適応ですね(自分はアレルギー性鼻炎なので、ひどい時はいつも口呼吸…)。ただし、強い炎症の時はさすがに効きません。そういう時は柴胡や黄芩や石膏など、もっと炎症を抑えて冷ます作用の強い生薬が追加された小柴胡湯加桔梗石膏なんていう漢方薬が適します。

 こうやって見ると、漢方薬は生薬をうまく組み合わせているなと感心してしまいます。この奥深さが漢方好きにはたまらない。講演会でこの流れの話もすると良かったかもしれませんね。”生薬の妙”を知るには好都合だったかしら。



c.f. 量を増やしてみるというところでちょっと追加しておきますが、例えば芍薬甘草湯や甘麦大棗湯を「そうか! 量を倍にしよう!」というような考えは怖いです。甘草が増えすぎて大変なことになりますよ。。。この2処方は原則として頓服、もしくは毎日使うにしても1包というのが多いと思います。そういう薬剤を増やして処方すると副作用が強いでしょう。また、黄連や大黄など”黄”が含まれている生薬は少なめでも効果は割りと高いため、黄連解毒湯も1日2包程度で効くことがあります。しかし、基本的にはエキス製剤は絶対的な量が足りないので、添付文書通りでは効果が及ばないことがままあります。十味敗毒湯なんかも1日3包では効きが悪いですね、そう言えば。
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コメント
茯苓飲合半夏厚朴湯を利用中の私には大変面白い記事でした。
個人的にはこれマイルドな頓服利用が良いかな?と
試しに一日三回飲んでみましたが、あまり回避的な意味合いでの効果は
内容に思いました。
あくまで、不安症状が出そうな時に飲むとマイルドに効く感じがします。

さくらdot 2015.11.21 21:03 | 編集
>さくらさん

ありがとうございます。
不安症状は下から上に”湧き上がる”ものであり、茯苓飲合半夏厚朴湯、特にその中の茯苓飲は上から下に気を”降ろす”作用を持ちます。
頓服とするか定期とするかは人によるのだと思いますが、フィットした飲み方を見つけることが大事ですね。
m03a076ddot 2015.11.22 00:36 | 編集
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