2015
09.11

病院見学をする時

Category: ★学生生活
 学生さんは5-6年生の段階で、研修希望の病院を見学することが多いでしょう。多くは”大病院”や”ブランド病院”に憧れるとは思いますが、看板に惑わされずそこで働いている研修医の先生の活躍ぶりを見てみることが大事。そりゃそうだ、と言われそうですが。中にはわざわざ研修医を試すような質問をする学生さんもいますが、それはあんまりやらない方が良いのでは…と思ってしまいます。

 では、どういったところを見るのか? あくまでも個人的な意見なので外れている部分もあるでしょうけれども、思ったことをいくつか絞って述べてみたいと思います。

 まずは


院内での勉強会の体制があるかどうか、研修医の出席率はどうか


 病院の中には研修医が野放しになっているところも多く、そこでは自発的に勉強する人としない人とで大きく差が出てしまいます。勉強会は病院側が研修医全体の底上げを考えてくれている証拠なので、やっぱりあるに越したことはないですし、それは定期的になされるべきであり、幅広い分野であるべきです。ただし、病院の姿勢として研修医の自発性をあえて重視しているところもあるので、その場合は勉強会がなくても手を抜いていることにはならないでしょう。ちなみに、勉強会と言っても製薬会社主催のものではありませんよ。病院や指導医の先生が行なっているものです。

 また、そこに研修医がキチンと参加しているかどうか。勉強会があっても参加しないような研修医が多い場合、「こいつらやる気ねーな…」とちょっぴり思っちゃいます。ただ、勉強会がなくても猛者が集まるような病院なら、それは問題ないでしょう、たぶん(もともとみんな勉強するので)。こんなこと言ってナンですけど、自分は集まって勉強というのが好きではなく1人で黙々と本を読んでいる方が良かったりします…。ま、人それぞれですよね。

 なので、見学に行く学生さんは、もし見学期間中に勉強会が行なわれているのであれば、ぜひそれに参加してみてください。そこで研修医や教えてくれる先生の活気を感じ取ると良いかと思います。

 さて次は

 
うつ病の研修医はいないか


 いきなり深刻なところを突いてしまいましたが…。これは判別するのは難しいかもしれませんけど、何故か研修中断になってしまっているとか、そんなブラックな空気を感じ取ることも大切です。研修医の4人に1人はうつ病になるとも言われている時代、限界の3歩手前くらいできっちり病院側が配慮をしてくれるか、救急外来の連続で研修医をフラフラにしてないか、というのは要注目。もちろん「忙殺上等!」「救急命!」「うつ病カモン!」みたいな学生さんは話が別でしょうけれども(うつ病カモンはいないですな、さすがに…)。

 ちなみに自分は”ゆとり”が大好きで、忙しいのは体力的に無理です。「あ、自分ってこんなに体力がないのか」と研修中に判明いたしました。実は学生の頃や1年次研修医の頃はチラッと感染症とか総合診療に憧れていたんですが「こりゃムリだわ」と諦めて撤退した既往がありまして。今は日々ぐでたま先生やリラックマ先生のように生きていきたいと真剣に考えております。

 さてさて、3番目は


1人の患者さんをしっかり診ることができるか


 これは大事なポイント。勘違いしやすい学生さんもいますが、診る患者さんの数は多ければ多いほど良いというわけではありません。研修医の中にも「これだけ診た!」「病棟の患者さん全部診てるぜ!」というのを勲章的に話す人がいますが、それが医者としての良さを表すとは限らず、特に病棟で多くの患者さんを担当するのはお勧めしません。上の先生や同僚からは「すごい!」と思われるかもしれませんが、それは本質ではないでしょう。

 数を診るということは、動詞が”さばく””こなす”になってしまいます。病棟という環境では、患者さんは孤立する傾向にあり、それは物理的にも心理的にも、です。それは想像に難くないでしょう。医者はそれを慮る存在であるべきで、”こなす””さばく”からは、それが感じ取れません。研修医というどう足掻いても未熟な存在が、患者さんという1人の存在のためにしっかり悩んで考える。そして患者さんのもとに足繁く通ってお話をしながら状態を診る。そういった時間、空気がとても大切なのです。研修医だからこそ患者さんが話してくれる内容もあるでしょう。1人にかける時間がしっかりあり、その患者さんの持っている疾患を勉強する時間も確保できる。そんな環境であるべきです。

 ”さばく””こなす”様なテクニックが”1人と向き合う”大切な時間を上回るような、そんな味気ない診療を若いうちからするのは避けましょう(あくまでも個人的な見解ですよ)。どうせ研修医が終わったらイヤでもそんな技術は身に付きますから。

 救急外来でも患者さんの数が多すぎると、すべてマニュアル的にしか動けなくなります。「他の病院よりも数は少ないけれど、それだけに考える余地があるよ」というのが良い塩梅でしょう、たぶんね。数が少ないと不安かもしれませんが、1人の患者さんから学べることはとても多いのです。その人の疾患の有病率や典型的な経過、病歴や身体所見の尤度比、必要な検査、不必要な検査、初期治療…。それに加えてその疾患の各種鑑別疾患についても同様に学ぶ。みなさんそれを本気でしているでしょうか。いざそれを実行してみると、本当に時間がいくらあっても足りないと感じますよ。診る前に学ぶ、診た後にも学ぶ、そんな時間がある病院は大切です。

 また、「救急車をうちは断らないですよ」を売りにしている病院もありますが、マンパワーが確保されていればそれは素晴らしいことです。でもそんな理念だけが先行して、スタッフは疲弊している、なんてことも往々にしてあります。学生さんは研修医の先生のみならず看護師さんや技師さんの余裕のあり/なしをそっと見学してみましょう。

 では次にまいりましょう。


研修医を守ってくれる病院か


 ウログラフィン誤投与の事件は覚えているかたも多いでしょうけれども、後期研修医が執行猶予付きではありましたが禁錮刑になった痛ましい判決があります(世界ではありえない判決です)。病院は全く研修医を守ろうとせず、組織全体の体裁を守るために研修医を切ってしまいました。こんな病院は最低です。きちんと守るシステムがあるか、それがとっても大事。研修医のみを犠牲にしてしまうような病院に決して行ってはなりません。

 日本には医者個人を追求する悪しき習慣があり、1人の患者さんでミスをすると、それまでに99人を救っていたことなんか無に帰してしまいます。そんな不条理に対しては病院が盾となり、ミスそのものには組織として患者さんやご家族に誠心誠意謝ることが欠かせません。

 そして、こちら。


時間差で見学しよう


 あからさまに研修医の先生を試すようなことは避けた方が良いとお話ししました。でもどんなものかな…と知りたいのなら、長期計画になりますが5年生の時に例えば春にいったん1年次研修医を見学して、秋か冬にもう一度見学します。すなわち、時間経過で研修医の臨床能力がどれだけ向上しているかを見てみるのです。これだと、研修医を直接試す雰囲気をもたらさず、「春に見学してすごく良かったのでもう一度来ちゃいました!」みたいな流れを与えてみんなハッピー。

 もちろん秋や冬に見学して、春にもう一度行って2年次になった研修医のたくましさを感じるのも素敵。新しく入ってきた1年次研修医に教える姿は少し先の自分かもしれないなぁ、なんて思うかもしれませんね。「半年で研修医がどれだけ変わっているか」というのは1つの目安かも? と考えています。

 そして最後は


みんな仲良しかな?


 研修医同士がギスギスしていないかどうか、2年次と1年次の風通しはどうか。やっぱりそれは共に生活していく上で軽視してはいけません。後は救急外来での看護師さんでしょうか。研修医を虫ケラの様に扱う人がいるところは「ちょっとなぁ…」と思いますし、何も出来ません! みたいなのも「あらら…」と思います。

 研修医の先生の雰囲気が良くて、学生さんが「この病院の短所って強いて言えばどこですか?」と聞いても大丈夫そうだと思える病院がポイント。見学後にちょっと飲み会なんか開催してくれると良いですね。また、小さい病院は学生さんが嫌う傾向にありますが、小規模だからこそスタッフの疎通性が良いところも多いです。そこも大切ですね。

 ちなみに自分が研修医だった頃の研修医同士の仲は、うーん、普通でしょうか(たまーに同窓会しますよ)。でも見学の学生さんを積極的に飲み会に誘おう! と音頭を取ってくれる同期がいて、それは頼りになって良かったなーと思いました。それで色んな話(”ぶっちゃけトーク”みたいな)も学生さんに出来ますし。

 ということで、本当につらつらとここまでお話ししてきました。網羅的ではないでしょうけれども、チェックポイントがたくさんありすぎるのも困ってしまうので、これくらいで。1つでも参考になるのがあれば幸いでございます。
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