2015
07.30

極論で語るシリーズ

Category: ★本のお話
 香坂俊先生が監修されている『極論で語る○○』ですが、2015年8月の段階で

極論で語る循環器内科
極論で語る神経内科
極論で語る腎臓内科

 が丸善出版さんから出ています。名は体を表すという言葉はあるものの、この本は体を表していないと感じていました。つまりは


極論ではなく原則が書かれてある


 ということなのです。Pro/Conで熱い議論を交わしているような部分にズバッと切り込むようなものではなく、研修医が読んでいても勉強になるような、臨床で外せない知識が書かれてあります。これを「丁寧なつくりだ」とするか「タイトル通りじゃないなぁ」とするか。個人的には、「おぉっ、これを言ったか! 賛否両論あって面白いよねぇ」みたいなのを期待して買ったので、ちょっと肩透かしを喰らった印象。

 でも、実はその肩透かし感は自分の不注意によるものであり、本にはきちんと書かれてありました。『極論で語る循環器内科』の初版まえがきに


この本では、なにはともあれこれを抑えておけばその循環器疾患の実態をつかみやすくなる一言を「極論」としました。


 と記してあったのです。なるほど、そういう意味での極論なのね。自分はタイトルだけでてっきり「どんな目からウロコが待っているのか」と勘違いをしておりました。。。

 特に『極論で語る循環器内科』と『極論で語る腎臓内科』の2冊は本当に診療上の基本的なポイントを押さえてある出来になっており、知っていることが多いです。知識の整理に良いですし、極論という名の原則をフレーズで示しているので印象をつかみやすいと感じました。

 ただ、循環器内科の方はちょっと「あれ?」って思うような部分も。例えば第10章ではSan Francisco Syncope Ruleですが、原著論文をそのまま踏襲しています。このRuleは他の論文で結構ボロクソに言われているので、それも記載しておかないとちょっと危ないかも。同じく第10章のコラムでは”ほとんどのてんかんがそれ以前に、例えば幼少期などに、神経内科などですでにてんかんと診断されているということです”と書かれていますが、ここも実は違うのです。高齢で初発のてんかんは意外に多く、側頭葉てんかんが認知症的に見えてしまうこともあり、また認知症患者さんにもてんかんは合併しやすいことも知られています。精神科医として注意を促しておきたい部分。

 腎臓内科の方は教科書的なイメージを持つと良いかもしれません。輸液の項目は柴垣有吾先生の本と同じような展開になっていますね(あとがきでフィードバックを受けたと書かれていますし)。自分は「Starlingの法則って実はちょっと古いんだぜ」的な引き込む展開を期待していましたが、それは先述のように極論の意味を取り違えていただけでした。。。教科書として必要なところをしっかりと丁寧に追っているなという感じ。

 このシリーズの中で最も著者の色が出ているのが神経内科でしょうか(極論というよりは”心得”みたいな印象ですが)。経験から滲み出てくる大事なメッセージがほとばしっており、『極論で語る』シリーズの中ではこの神経内科が最も熱意を感じて好きです。

 今後のシリーズで出る分野があれば、まさに極論的な、ある方面にカドが立つくらいの本(いわゆる”トンデモ本”とは違いますよ)であっても、それはそれで面白いと思います。評価は分かれるでしょうけれども、極論なんだから分かれて当然くらいのポジションを確立するのも良いかもしれませんね。とは言え、その極論も文献と経験に裏打ちされたものであるべきですが。

 ということで、『極論で語る』シリーズは、循環器内科と腎臓内科は研修医の先生が読んでも実に勉強になると思います。特に腎臓内科はそうでしょう。神経内科は、実際に神経疾患の臨床に携わっている若手の先生がたが読まれてみると良いのではないかと感じました。
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