2017
03.07

臨床のワンフレーズ(17):こころのお天気

Category: ★精神科生活
 患者さんの中には、自分自身の気持ちをうまく表現できない人もいます。特に子どもがそうですが、大人でももちろん。

 また、ちょっと膠着状態で患者さんの言葉も「別に…。変わらないです」くらいでそれからの広がりが出てこず、こちらが患者さんの世界をイメージしづらくなる時もままあります。こういう時は、患者さん自身も現在位置を見失っていることがありますね。

 そのような状況が続いた場合、ちょっとした比喩を用いると閉塞を突破できることがあります(絶対ではないですけど…)。

 例えば、激うつは抜けたけれど、なかなか今の状態がはっきりしてこない患者さん。実際にどのような感覚なのかを知りたい時に使ってみるのも良いでしょう。

自分「○○さん、前回の診察から1ヶ月ですけど、どうでした? その間何か」
患者さん「うーん。変わらないですね…。特に何も」
自分「良かったなぁということとか、困ったなぁということ」
患者さん「うーん、まぁないですかねぇ…」
自分「ちょっと変なことを聞きますけど」
患者さん「はぁ」
自分「○○さんのこころのお天気って、今どんな感じです?」
患者さん「こころの天気ですか…。そうですね、まぁ曇りですかね」
自分「どんな曇りかしら? どよーんとしたものか、うっすらかかっているのか、とか」
患者さん「そうですねぇ。もうちょっとで晴れてきそうだけど、だらだらと続いてるような」
自分「もうちょっとのところで停滞。雨は降っていないんですね」
患者さん「ですね。前は土砂降りでしたけど、今は雨が上がって、曇りが残ってるみたいな感じですかね」
自分「なるほど。晴れ間は見えてきそうで見えてこない」
患者さん「そうですね。もどかしい感じですね」
自分「もどかしい感じ。このまま待っていると晴れてきそうかしら?」
患者さん「いやぁ、どうでしょうね。晴れてきそうで晴れないっていうのが続いてるんで」
自分「待っていてもなかなか」
患者さん「そうなんですよね。確かに何か行動を起こさなきゃいけないですね」
自分「何か行動が出てくると、少し晴れてくるかも」
患者さん「はい」
自分「そうでしたか。良かったです、一定の目安が見えてきたので」
患者さん「そうですね。晴れるためには何かしないといけないですよね、すみません」
自分「いえいえ、何かするというのを見つけたのは○○さんですよ。そう思うこと自体が大きな一歩だと思います」

 ”こころのお天気”というフレーズで、患者さんも自分自身の状態に色んな思いを巡らせることができます。曇りや雨であっても、どんな曇りなのか、どんな雨なのか、そしてどうなって行きそうかなど、具体的で動的な感覚を得てもらいます。子どもであれば、ペンと紙を用意して話し合いながら描くのも有用でしょう。

 患者さんの状態をつかみかねている時や、ちょっと新鮮な風を診察室に入れたい時に使ってみると良いのではないでしょうか。そして、この比喩が合うような患者さんであれば、次回以降の診察もお天気を聞くところから始めてみると診察と診察につながりが出来てきます。
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コメント
統合失調症の陰性症状で苦しんでおります。
こんな風にじっくり話を聞いてくださるのはありがたいですね。

私の主治医は不調を訴えても「はいはい」と言うだけで、
薬の変更どころかろくに耳も傾けていただけません。
診察はいつも2〜3分で終わってしまいます。

相性のよい先生に出会えるかどうかは、
偶然のめぐり合わせなんでしょうかね……。
ぽんぽこdot 2017.03.08 06:16 | 編集
>ぽんぽこさん

ありがとうございます。
陰性症状は他人が理解しづらいところも多く、そこも患者さんが苦しむ要因かもしれませんね。
『統合失調症のひろば』という雑誌や、『マンガでわかる!統合失調症』という本は当事者の立場からの発信なので、ご自身が楽になるコツがあるかもしれません。
医者については、ある患者さんと相性が良くても他の患者さんとは良くないということもあり「この医者ならみんなにオススメ!」とはならないのが難しいところですね…。
おっしゃるように、めぐり合わせという要素が大きいのかもしれません。。。


> 相性のよい先生に出会えるかどうかは、
> 偶然のめぐり合わせなんでしょうかね……。
m03a076ddot 2017.03.12 12:08 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2017.03.12 13:24 | 編集
このコメントは管理人のみ閲覧できます
dot 2017.03.13 21:18 | 編集
こころのお天気ですか!
トラウマの記憶がよみがえってきた日に、カウンセリングの先生が、「雨が降り続いてるんです」というわたしに、『もう止みましたよ』と言ってくださったのがものすごくこころに残っております。。
ちょうどフラッシュバックを起こして、退行していたので、もう止んだよと言われて素直に受け入れたら、なんとも楽になったこと・・・。

でも、主治医の先生は、そういう比喩を使うタイプではないので、こころのお天気を訊いてもらったことはないです。
確かに、こころが鈍くなって、すべてが平坦になって、「変わったことはないです」と言ってしまうことはあります。。
こころのお天気はとてもわかりやすくて、説明もしやすくていいいですね!
雛瀬 なな。dot 2017.03.15 18:18 | 編集
>雛瀬 なな。さん

ありがとうございます。
お天気を用いると、細かい表現ができるかなと思っています。
あとは、一面の雲と答える患者さんでも「曇っていても、その上にはかならずお天道さまがいるので、安心していてください」とお伝えできるのがポイントです。
ちなみに、トラウマだと白川美也子先生の本(『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア』)が患者さんにとって攻撃的ではなくてやんわりとしていて良いかと思います。
m03a076ddot 2017.03.17 11:01 | 編集
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