2015
07.21

夏バテの漢方と言えば?

 漢方の世界では、夏バテの漢方といえば”清暑益気湯”が代表例です。もちろんこれだけではありませんが、あくまでも例として。”清暑”だなんて、まさに名前も夏を思わせますね。

 この方剤のどの作用が夏バテ向きなのか、口訣(決まり文句)として「夏バテには清暑益気湯」と覚えても悪くはないんですが、せっかくなので構成生薬を見てみましょう。漢方は生薬を勉強すると方剤の特徴が見えてきて応用が利くようになります。

 清暑益気湯の生薬は以下になります。

人参 朮 麦門冬 陳皮 黄耆 黄柏 当帰 五味子 甘草

 ちょっと1つ1つ簡単に追ってみましょう。

 人参は補気作用が強いため、消化管の機能を回復してくれます。また身体を潤わせる作用も持ちます。

 朮は本来であれば白朮とすべきところですが、清暑益気湯をつくっている唯一のメーカーであるツムラさんが蒼朮としているため、エキス製剤では蒼朮のものしかありません。白朮は自汗を止めて利水作用を持ち、下痢も軽くしてくれます。蒼朮はむしろ汗を出して身体の余分な水分を出す方に向きます。補気という点では白朮の方が強いとされます。

 麦門冬は熱を冷まし身体を潤わせ、空咳を軽くします。

 陳皮はミカンの皮でして、気管支や消化管の中の余分な水分を発散させる作用を持ちます。嘔気嘔吐を抑えて、痰が多い時は喀出を容易にしてくれます。

 黄耆はだらんと弛緩した筋肉を引き締めてくれ、汗を止めて身体のむくみも尿にして出してくれます。消化管の機能も補います。

 黄柏は清熱薬と言って、消炎解熱作用を持ち、身体を乾燥させる作用もあります。

 当帰は補血作用を持つため、漢方で言う血(けつ)の不足を補います。血液の巡りを良好にし、気と血が相まって臓器を元気にします。

 五味子は汗を止めることで身体の乾燥を防ぎます。いっぽうで、寒による多量の痰を散らしてくれます。

 甘草は様々な生薬を調和してカドを取ってくれます。消化管の機能も回復してくれ、身体を潤わせる作用も持ちます。

 これら生薬を総合すると、熱を冷まして必要な水分の喪失を防ぎ、消化管の機能を助けてくれます。夏バテでは身体に熱がこもってしまって汗も出て水分が逃げていき、また胃腸が弱ってしまいますね。それらにうまく対処できていると言えましょう。ただし、冷房に負けてしまったような状態には全く向きません。

 もちろん夏バテのみならず、もともと陰虚(血虚+熱)傾向の患者さんに使うこともありますし、身体を乾かす方剤とセットで用いて、その乾かし過ぎを防ぐという使い方もします(半夏厚朴湯合清暑益気湯など)。

 生薬の足し引きで考えると、この方剤は補中益気湯から柴胡と升麻と大棗を除いて、麦門冬と五味子と黄柏を足したものと表せられます。


清暑益気湯=補中益気湯-[柴胡・升麻・大棗]+[麦門冬・五味子・黄柏]


 ということは、印象として補中益気湯の補気作用に麦門冬湯の滋潤作用を乗せたような感じでしょうか。ただ、升提作用(筋肉の引き締め効果)は補中益気湯よりも弱くなっており、細かいですが抗炎症という点では柴胡と黄柏という違いもあります(散寒解表・疎肝止痛 vs. 清腸止痢・利湿退黄)。

 しかしながら細々としたことは覚えきれず情報量も多くなるため、この方剤は身体を冷まして潤わせる補気剤なのだな、と認識しておくと良いでしょう(自分もほとんどそのレベルで覚えています)。名前で「夏に使うんだな」というだけではもったいない。
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