2015
07.03

もう少し深いところに

Category: ★研修医生活
 今の研修医は物知りだと思います。鑑別疾患もまずまず挙がりますし、最低限の検査項目も押さえてくれています。そこは頼もしく、自分が研修医だった頃よりも色々知ってるんじゃなかろうか、とも感じます。

 しかし、何というか、もう一歩進んだところに触れてこない印象はあります。鑑別疾患をパーッと挙げるのは良いんですが

自分「じゃあその鑑別が挙がる理由は?」
研修医「え? このマニュアルに」
自分「何か機序とかで共通点があるとか?」
研修医「うーん」

 というような。疾患の特徴は

自分「この疾患はどうだろう。悪化すると痛みに特徴が出てきそうだね」
研修医「え? そうですか?」
自分「どんどん周囲に波及するということは?」
研修医「うーん」

 もう一歩踏み込めないもどかしさ、とも言えるでしょうか。診断を付けても

自分「どんな理由でその診断? この疾患を弾いたのは何か思うところあった?」
研修医「あ、この検査で」
自分「この検査が陽性だった時は検査後確率どれくらい? 一発でRule inできそう?」
研修医「うーん」
自分「もし陰性だったら次はどうしてたかねぇ」
研修医「うーん」

 自分の若い頃を見ているようだなぁと思いながらも、最近は特に応急処置的な覚え方をたくさんしている研修医が多いでしょうか(漢方で言うと口訣を大量に覚えているだけの状態?)。もちろん最初はマニュアル的な暗記で良いんですけど、有機的なつながりを持たせるには、ちょっと面倒でしょうけど病態生理や解剖学的な部分を思い浮かべて、さらにそこから診断の総論的な、自分はOS(基本ソフト)って表現しますけど、その部分を整理していくと様々な症候でも原則的な考え方が見えてくるんじゃないかなって思ってます。もしろん最後は各論的な知識がモノを言うところは大きいですが。

 やはり、鑑別に挙がる疾患そのものを掘り下げるというところがまだ出来ていないのかもしれません。主訴から鑑別が挙がり、それぞれのポイントとなる症状と診察項目と検査項目を覚える、というレベルでおしまいになっていると、疾患たちの顔つきがなかなか見えてこない。1つの疾患についても横断的な知識になっており、幅・流れを持たせた典型的なヒストリーを頭に入れる必要はありそうです。


ある疾患を診断するには、その疾患そのものをまず知らねばならない。そして、それ以外の鑑別疾患を知ることで違いが浮き彫りになる


 と言えると思うのです。精神科も同じで、統合失調症と診断するには統合失調症自体の厚みを知って、かつそれ以外の精神疾患を知ることでやっと”統合失調症”が浮き上がってきますでしょ。”診断”そのものについても


診断をするには、診断の仕方を知らねばならない


 と表現できましょう。この2つを意識しておくことが大切。

 マニュアルに書かれてあるのはそこが薄い。もちろん厚くしたらマニュアルではなくなるので、例えば腹痛ならベタですけどCope先生の『急性腹症の早期診断』を3回くらい読むとか。病態での裏付けをしっかり記載した重みのある本は必要だと思います。そういった疾患ごとの顔つきを知り、同時並行で診断そのもののOSを学んでいく。すると、”らしさ””らしくなさ”がより明確になり、次にどういうアクションをすれば良いかが少しずつ分かってくる、と自分は思っています。ただ、研修医1年次からSapira先生の本を読む必要は全くないでしょうけど…。診断に至る思考過程、つまりはOSについては、かなり難しいですが、頑張って『Learning Clinical Reasoning』を読んでみても良いかもしれません。この本は脳天を貫かれるような衝撃があります。和訳を岩田健太郎先生がなさっており、『クリニカル・リーズニング・ラーニング』という題名で出されています。和訳でも難しいですけどね…。でもこれを何回か繰り返して読むと、診断とはどういうものかがつかめてくる。そうするとゾクゾクしてきますよ。1年かけてじっくり読んでも構いません。

 ティアニー先生のパールをまとめた本もお手軽に知識が入るので人気がありますが、良いところ悪いところがあると感じています。パールは重厚な病態生理や病理学的な思考を勉強した後に定着させるもの、もしくはパールを見て「おぉ!」と思ったらその背景をしっかりと学ぶべきものであり、その手順を踏まずパールだけを覚えてそこでおしまいになったら、それは単なるプラスチックのエセ真珠になってしまう恐れがあります。パールも使いようかなぁと思いますが、はてさて(パール自体に罪はありませんよ)。

 研修医自身でそういったことに気づくのはとても難しいでしょう。自分も研修医が終わってから振り返ってみて「あぁ、ああいう風にすれば良かったのかな。あの時はただガムシャラにやってただけだったなぁ」と感じています。今は良い意味で肩の力が抜けたのかしら。

 疾患の病態生理に基づいた理解、診断推論のOS、そして最後に忘れてはならないのはカルテの書き方。研修医の勉強度合いを調べるには、本棚を眺めるのではなくカルテを見るのが一番。カルテから患者さんの状態が浮かび上がり、研修医がどう考えてそう判断したかなど、時間経過を含めて透けてくると素敵。マニュアル的な知識のみで対応をしたカルテはのペ~っとしている印象で、平面的というか動きを感じません。

 換言すると、静的なカルテではなく動的なカルテを意識する、ということ。ただし! 「美しく書くのか」とか「たくさん書くと良いよね!」というのは違います。往々にしてそれは自己満足になりがち。他人が見ても「おー。論点がはっきりしていて分かりやすい!」と感じるように、しっかりと基本枠組に則り、その中で書くことが大事です。まとめる力、プレゼンする力の基礎になると思いますよ。電子カルテで何ページにも渡り1つの記事をダーッと書くのはちょっとどうなのかな…と。こっちは見る気がしないですもん。

 ”明日すぐ使える知識”も大切でありそれを求める気持ちもとても良く分かります。医学書もその系統が随分と多くなっていますが、ちょっとアンチョコ的ですよね。しかしながら、通奏低音のようにじっくりと根底で響く智慧を手に入れることも忘れてはならないでしょう。

 そんな偉そうなことを話しながら、自分が研修医2年次の頃のカルテはやや崩壊気味でしたし、疾患の深いところまで勉強できていたわけではなかったのでした(おい)。
トラックバックURL
http://m03a076d.blog.fc2.com/tb.php/1907-4dba2777
トラックバック
コメント
スレ違いの質問だったらすみません。雷恐怖症や嘔吐恐怖症などの特定の恐怖症は分類としてら何になるんですか?うつ病?不安障害?ちょっとわかりません。
かものはしdot 2015.07.06 23:17 | 編集
>かものはしさん

ありがとうございます。
特定の恐怖症は不安障害に入ります。
googleなどで検索をして調べると見つかることが多いので、一度ご自身で調べてみてください。
m03a076ddot 2015.07.08 09:49 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top