2015
06.13

高度のDehydrationはVolume depletionを伴う

Category: ★研修医生活
 この前は研修医勉強会があり、1年次研修医から脱水について質問がありました。そこで、話をしていくうちにタイトルの通り

自分「Dehydrationは高度になるとVolume depletionも伴うよね」
研修医「う…、はい」
自分「だから、Dehydrationでも血清Na濃度がめちゃくちゃ高かったら生食を入れることがあるんだよ」
研修医「Dehydrationでもですか?」
自分「血清Na濃度が高すぎると生食ですら相対的に低張になるでしょ。Volume depletionも伴うし」
研修医「おぉ。でも先生、高度のDehydrationだとVolume depletionを伴うって、どういうことですか???」
自分「お、そこか」

という展開。

 まずこの”脱水”という表現。日本では”脱水”ですが、これはVolume depletionとDehydrationとを含んだ概念です。前者は細胞外液が主に減少していること、後者は細胞内液が主に減少していることを指します。話をする時はそこをハッキリさせて、お互いのイメージする脱水を適合させて進めることが必要。

 その前に、輸液の大前提を2つ。

 1つは、水の出入りは血管内を通して行われる、ということ。経口や輸液による水の摂取は血管内にまず入り、汗や尿といった水の排出も血管内からです。この血管内ので起こる変化が細胞間質や細胞内液にも波及していき、水の引っ張り合いに動きをもたらす、と考えてみましょう。

 もう1つは、水は濃い方(張度が高い方)に引っ張られるというイメージ。例えば、細胞外液が張度をつくるNaばかりでむさ苦しいと、水が細胞内液から引っ張られて来ます。バランスというのをイメージしてみると良いですね。血管内での変化がまず起こり、それによって細胞間質や細胞内液から水を引っ張るか、それらに水が引っ張られるか。

 もちろん、その他にも様々な要因がありますが、まずは上述の2点を押さえます(輸液についてもう少し踏み込みたいかたは、看護師さん向けの雑誌ですが、エキスパートナース2015年5月号の附録『ビジュアル輸液BOOK』を見てみてください)。

 さて、”高度のDehydrationはVolume depletionを伴う”というところの説明。これはお鍋にスープが入っていると想像してみましょう。このスープは細胞外液です。

 そうなると、以下のイラストのように整理できます。

脱水

 イラストの上半分はVolume depletionを示しています。これはスープそのものの量が少なくなってしまった状態。細胞外液、特に血管内容量の減少であり、そのため循環障害が所見として見られ、血圧低下や頻脈や乏尿/無尿になります。熱傷や大手術などの侵襲もそうでして、これはサイトカイン放出につながり、glycocalyxが損傷されます。そうすると水が血漿蛋白とともに血管内から細胞間質に移動して循環障害になってしまいます。血管内容量の低下は有効循環血漿量低下とイコールだと思うかもしれませんが、“有効循環”とは“めぐりの良さ”を示すため、血管内に水が十分にあっても有効循環血漿量低下は起こりえます。代表例は心不全。心臓のポンプ機能が弱まってめぐりが悪くなります。

 イラストの下半分はDehydrationを示しています(お鍋が火にかかっています)。これはお鍋のスープが煮詰まって濃くなっていることを指します。“水の出入りは血管内を通じて行なわれる”という原則がありました。Dehydrationというのはまず汗や不感蒸散(汗以外の皮膚や呼気からの水分喪失)によって、薄い水が血管から出て行くことから始まります。スープを煮た時に出る湯気みたいなもの。ずっと煮ているとスープは少し量が減って味が濃くなりますね。それをイメージ。濃くなるということは細胞外液の張度が上昇することを示し、細胞内液から水を引っ張ってきます。そうなると、細胞内液が減少。これがDehydrationです。スープが濃縮されるため、高Na血症が所見として出てきます(しょっぱくなる)。他には↑Alb, ↑BUN/Cre, ↑UA, ↑Hbなども濃縮の所見ですね。

 特に注意して欲しいのは、今回のポイントである”Dehydrationが高度になるとVolume depletionも伴う”という点。すなわち、スープが煮詰まり過ぎると、スープそのものの量もかなり減っちゃうのでした。

だっすい2

 ということを研修医に話したら、何となく(?)納得してくれた様子。濃縮され過ぎてしまうと、血清Na濃度もぐんぐん上昇して、果ては生食のNa154mEq/Lを超えてしまいます。ここまで来るとVolume depletionも相当なため、バイタル安定のために外液を使うこともあるのです。
トラックバックURL
http://m03a076d.blog.fc2.com/tb.php/1900-74128899
トラックバック
コメント
先生こんばんは。

今日は体育祭でした。熱中症? 痺れや過呼吸で数人病院へ搬送されましたが大事には至らず胸をなで下ろしました。これもスープが煮詰まりすぎたと考えて良いのでしょうか?

練習中の補水は禁止、ウサギ跳び全盛期の中学時代を過ごした私。あの頃とは気候が違うのかな。
ほんとに暑いです。アイス・ココアが飲みたいな。先生もどうぞご自愛下さいませ。
annedot 2015.06.13 22:46 | 編集
>anneさん

ありがとうございます。
熱中症もスープの煮詰まりがありますね。ただ、身体のミネラルが大幅に変動してしまうことと体温が不自然に高くなってしまうのも加味されています。
ほんとうに最近は暑くて、北国生まれには厳しい季節がやって来ました…。
m03a076ddot 2015.06.17 09:23 | 編集
専門的なことは解りませんが、脱水がひどくなると、細胞内の水が浸透圧で出て行ってしまう、そして経口では間に合わないので輸液してでも濃度を下げる、というお話なのかな、と思って読ませて頂きました。

時に脱水を自覚しにくいこともありますが、夏場の炎天下とかで妙にトイレが遠い(頻尿の逆)とか、尿の色が濃いときは、要注意なのかな、と思うことにしています。(起床直後でも、夏場は尿の色が濃いことがあり、そのような時は就寝中の発汗で多くの水を失っているのかもしれません。)

ここで経口摂取するのは、単に水でよいのか、(汗で塩分も失われている筈なので)塩分を含んだものがよいのか...一般人に分かりやすい基準は、ありませんでしょうか。

先生は北国のご出身とのこと、暑さにはお気を付けになられてください。
メイラックス減量中dot 2015.06.18 22:55 | 編集
>メイラックス減量中さん

ありがとうございます。
脱水は分かりづらいですね。医者も身体診察のみでは正確に判断できないと言われます。
尿の色はある程度の目安になるかと思います。
水分補給は大事ですね。
脱水は多くの場合は汗で水と少しの塩分が逃げて行くことが多いため、普通の水では塩分不足になることがあります。
ポカリスエットやアクエリアスなどを薄めて、ちょっとお塩を入れると良いかもしれません。
もしくはお味噌汁の上澄みも良いですし、あとは1日1個梅干しを食べておくのも塩分補給になりますね。
ただし、腎臓が悪かったり血圧が高かったりというかたはそのまま実行しないようにしてください。
m03a076ddot 2015.06.22 21:02 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top