2015
06.04

自殺について学ぶ

Category: ★本のお話
 今回は本の紹介(2つの記事をアップしています)。

 中外医学社さんから2015年5月30日に出た、松本俊彦先生の『もしも「死にたい」と言われたら』

松本俊彦先生

 患者さんから希死念慮を話されたら、患者さんにその危険性があると感じたら…。その時に医療者はどう対応すべきかを分かりやすく示してくれています。各精神疾患の自殺の起こりやすさを対人関係の面で解説し、過量服薬についても述べられており、医療者が安易に処方している事実も隠すこと無く記しています。

”診療において心がけるべきなのは、まずもって向精神薬乱用・依存をつくりださないことである”(96ページ)

 これはすべての医療者が肝に銘じるべきであり、過小評価してはいけないでしょう。

 そしてこの本には、自傷についても述べられています。自傷は患者さんがつらさから何とか逃れるために必死でなされる対処です。その自傷にしっかりと意味があるんだという認証が書かれてあり、しかしながら、ずっと行なっているとそれが効力を発揮しなくなり、希死念慮が頭をもたげてきます。生きるためになされる自傷が”死への迂回路”(60ページ)となっていることを指摘しています。自傷そのものには生きるための意味があります。しかし、それを続けていては死がやってくる懸念もあります。そこを医療者が支えていくという思いが強く出ています。

 松本先生は自傷や薬物依存にとても長けており、読み込むべきと思います。

 希死念慮のある患者さんは、死にたいくらいにつらい状況にいます。このつらさが軽くなるのであれば、生きていたいという強い声なのだと思います。そこを医療者とともに少しずつ取り組んでいければ、その積み重ねは良い結果を産んでくれるかもしれません。

 自分がいちばん衝撃を受けたのは、あとがきです。自殺で有名な橋があり、そこには固定カメラが設置してあり、著者の松本先生はその映像を見ます。飛び降りる人の一部始終が映し出されているのですが、その人が最後まで持っていたものがあったというのです。それは



携帯電話



 その人は最後の最後まで人とのつながりを欲していたのです…。もしそこにメールや着信が来ていたら、ひょっとしたら、と思わざるを得ませんでした。

 死にたい、死にたくない、生きたい。自殺する人は本当にギリギリまで揺れています。そして、つながりを希求しています。私たちの出来る精一杯のことは、人との温かなつながりを、押し付けではなく添えることなのだと実感しました。医療者は、このあとがきだけでも買って読む価値があるでしょう。

 この本の他の良い点としては、とても薄いことが挙げられます。130ページちょっとなので、興味が薄くても読むことができます。自殺に関する良い本でも、ものすごく分厚ければ、興味のある人以外は手にとってくれません。この本は薄いながらも必要な情報を入れて、「もっと勉強したほうが良い」と思わせることに優れています。自殺を学ぶための入門として、患者さんにかかわる医療者にオススメできます。

追記:自傷をしているかた、自傷をしている人にどう接していけば良いのか悩んでいるかた。そういった人たちは、同じく松本俊彦先生の『自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント』(講談社)をぜひ読んでみてください。きっと助けになってくれるはずです。自傷に対してマイナスイメージしか持てない医療者も読みましょう。症状の意味を肯定的にとらえ、そこから患者さんと一緒にスタートし、症状を手放せるようになるために支えていける、そんなヒントがあります。
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コメント
最後に人を救えるのはひとの力なのかもしれないと、思いました。時代が進んでも、いつまでも、そうあってほしいと思いました。キレイごとかもしれないけれど・・・。
ノラdot 2015.06.06 22:51 | 編集
>ノラさん

ありがとうございます。
そうですね、人の持っている力を信じたいものです。
ただ、人を絶望に追いやるのも人の存在なのかもしれません。
とても両義的な生きものです。
それを認識して、人との良いつながりを保つことが重要なのでしょうね。
m03a076ddot 2015.06.07 11:28 | 編集
読みました。良かったです。
患者さんとしている時「自殺したいけどどうすればいい?」って聞かれる事はたまに実はあるので、困っていました。
医療者として仕事に出ていたときは、死んだ人は接するのですが、死にたい人にはあまり会わなかったので。

そういう発信を受けた時、患者として患者に何か声をかけるとしたら
「傷つけるのって気持ちいいけど、あと残っちゃうからやめよ」
とか
「頓服飲んで寝るんだよ。一時的に心が悲鳴をあげているだけだからね」
とか、優しくいうようにはしていますが(若い人が多いので)
こう、的を絞って書かれると凄く明快で良かったです。

うたdot 2015.06.17 18:17 | 編集
>うたさん

ありがとうございます。
自殺や自傷への取り組みは、医療者もやや敬遠しがちなので、薄めで良くまとまっている本は、垣根が低くてみなさんの役に立つのではないかなと思っています。
m03a076ddot 2015.06.22 20:24 | 編集
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