2015
04.15

大御所改訂

Category: ★本のお話
レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版
(2015/03/23)
青木 眞

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 満を持して登場、という表現が適切でしょうか。医療者としては渇望すらしていた本。自分が紹介するまでもないのですが、青木眞先生の『レジデントのための感染症診療マニュアル』第3版です。

 これまでの単著から共著に変更になったことが大きいのですが、読んでも論調がガラっと変わるようなことはなく、一貫性を感じます。一般的に、共著は単著に比べて味わいが落ちることが多いものの、この本は違いました。青木先生がしっかりと眼を通してくださっているのだなと実感。

 第2版まではお一人で書かれており、しかも第2版は1400ページ以上。このページ数をお一人でというのは凄いとしか言いようがありません。第3版も、この第2版があったからこそ共著になり得たのだと思います。

 自分はちょっとこの第2版には苦い経験がありまして…。第2版が出た時は嬉々として即座に第1刷を買ったのですが、何と誤植のオンパレード。正誤表が差し替えのものを含めてPDF16ページに渡るなど、なんかすごく唖然とした記憶が。結局修正された第2刷を買いまして(第2刷も誤植がままありましたが…)。10000円の買い直しはちょっと痛かった。第3版はどうなんでしょ、この前買っちゃったけど。

 青木先生は日本の感染症診療の質を高めてくれた第一人者。アメリカから帰ってきた当初は随分と批判もされたようですが、それにめげずしっかりと若手医師を育ててくれました。当時のおエラがたからすると、間違いを指摘されるのは面白くなかったでしょう。何せ「日本は感染症で最も優れている!」と言って憚らないような人たちでしたから…。

 今回共著になったことは、青木先生が2000年の第1版を出して、それ以降もくじけずに努力した結果だと思います。孤軍奮闘から、青木先生の本を読んで正しい感染症診療を行ない、かつ支えてくれる医師たちが増えたということの証でもあります。

 今でも抗菌薬が適正に使用されているとは言い難いです。自分の知識をブラッシュアップしようと思う医者は問題ないのですが、最も難しいのが”無関心”な人々。自分のスタイルが出来てしまって、比較するということをしません。そういう人たちが、単なる風邪に抗菌薬を出してしまいます。例えばクラリス®とかメイアクト®とかセフゾン®とかフロモックス®とか…。ひどいのは何でもクラビット®やら果てにはジェニナック®なんてのも…。そういう医者は闇討ちでもしたくなりますが(←卑怯)、そんなことは絶対にしてはいけません。とはいえ、彼らを振り向かせるのは容易ではないことも事実。今の日本は青木先生のおかげで意欲ある医師の感染症診療レベルはとても高くなっており、良い本もたくさん出ています。しかし、無関心な人々はそれを手にすることすらしません。そこをどうしていくかが今後の課題だと思います。

 ドイツでは、国の広告で国民の皆様に「風邪なんかで抗生物質を医者に要求しないようにしましょう」と知らせるんだそうです。ヨーロッパでもドイツ、オランダ、ノルウェー辺りはとても進んでいます。アメリカは訴訟大国なので、安全のため処方してしまうことも多いようで…。日本も国レベルできちんと動いて、全体が知識(トンデモ知識ではなく正しい知識)を付けなければなりません。そこが無関心を振り向かせる条件なのだと考えています。それは感染症にかぎらずどの科でも言えることですね。

 この本は『レジデントのための~』となっていますが、純然たるレジデントのためだけのものではありません。医者はいつになっても学ぶ態度を忘れない”レジデント”としての心構えを持つべきでしょう。その意味では『レジデントのための~』は適切なネーミングだと思っています。
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