2015
02.14

そういえば

Category: ★本のお話
 医師国家試験が終わっていたんですね。受験生のみなさん、本当にお疲れさまでした。人生最後(?)のモラトリアムを堪能しておりますでしょうか。

 自分は大学生活では”ぼっち”だったため、卒業旅行などにも行かずに自宅で寝て過ごしていました。社会性の無さがその時点から輝いていたんですねぇ…。することがなかったため、何と研修に備えて勉強をしていたんですよ。昔は真面目でした。今はちょっと疲れてしまってピットインをすることになりましたが。。。

 さて、研修を既に終えている身として研修医になるまでの間にざくっと学んでほしいことは、最低限のTOP 3として

・診断学
・感染症
・輸液


 です。研修医の日々の臨床は、学生の時とはやっぱり異なります。診断をどうやって組み立てるか、どの科でも出会う感染症の診断と治療はどう行なうか、学生の時はほとんど勉強しない輸液をどうするか。この辺りをちょいちょいとおさえておくと、初期研修もスムーズに始めることができると思います。特に感染症を勉強することは、論理的に診断し正しい治療をするということを学ぶ機会にもなります。あと、この3項目って研修中にしっかり教えてくれる先生が少ないのが事実。自分でやらねばならない研修病院も多いでしょう。だからさっさと大枠を掴んでおくと楽。

 診断学では、もうすっかり有名になった野口善令先生のこの本。

誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか
(2008/04/01)
野口 善令、福原 俊一 他

商品詳細を見る

 2008年の本なのでだいぶ昔になってしまいましたが、名著色褪せず。これで診断の基本を学んでみましょう。

 感染症ですが、抗菌薬において読みやすさと新しさでは矢野邦夫先生の書かれた本がベスト(2015年2月下旬に続編の『もっとねころんで読める抗菌薬』が出ます)。

ねころんで読める抗菌薬: やさしい抗菌薬入門書ねころんで読める抗菌薬: やさしい抗菌薬入門書
(2014/07/24)
矢野 邦夫

商品詳細を見る

 本当に寝っ転がりながら読めるという、書名に偽りのない素晴らしい入門書。矢野晴美先生の『絶対わかる抗菌薬はじめの一歩』も薄くてまとまっていて頭に入りやすいですし、ロングセラー。2010年ということで、改訂してほしいなという気持ちがちょっとありますが。もちろん岩田健太郎先生の『考え方、使い方』でもO.K.ですよ(ちょっと新しいし)。

 感染症診療そのものの骨格は大曲貴夫先生のこれを。

感染症診療のロジック感染症診療のロジック
(2010/04/01)
大曲 貴夫

商品詳細を見る

 硬派。青木先生の『マニュアル』の総論部分を丁寧に解説している様な感じ。これを読むと診断学そのものの力もアップ! 自分は研修医にしつこいくらい勧めています。必読と言って良いくらい。

 輸液は柴垣先生の薄い本を。これで最低限をカバーしてから他の本に進むべし。

輸液のキホン輸液のキホン
(2010/03)
柴垣 有吾

商品詳細を見る

 ちょっと昔の本になりかけてますが、超薄いっていうのがポイント。とはいえ、最近はスターリングの法則がもう古くなったと言われ、血管内皮のglycocalyxへの注目がなされ、そして敗血症へのEGDTもちょっとどうかなぁと言われておりますよ。だいぶこの本が出た時と状況が変わりましたね。でも原則は不変ということで。

 ちなみに、こちらの本は初期研修のスターターキット的なものを狙っています(診断・感染症・輸液・栄養・エコーをまとめています)。

こうすればうまくいく! 臨床研修はじめの一歩こうすればうまくいく! 臨床研修はじめの一歩
(2013/04)


商品詳細を見る

 研修の始まる前、1年次が終わる時、2年次が終わる時、それぞれで読んでみると自身の成長ぶりが分かるような感じでつくられており、『はじめの一歩』というタイトルですが到達目標としての『まとめの一歩』という意識もあります。ちょろっと宣伝。

 最後の1冊は蛇足でしたが、こういった本を読んである程度は実践に備えておきましょう。実践を重視し机上の勉強を”頭でっかち”とマイナスイメージで語ることが多いかもしれませんが、最初は頭でっかちになっちゃいましょう。そこから経験を積んで身体も大きくしていけば良いんです。一番ダメダメなのが、頭でっかちを悪く言っておいて、自分は勉強も少ないというもの。頭も身体も小さい状態で臨床を行なうと、患者さんにとって害になりますよ。勉強は大事。

 あ、コモンディジーズへのエビデンスに基づいた的確な診療、そしてエビデンスの使い方というのもざざっと知っておくと良いかも。それには谷口先生の本を。

内科診療 ストロング・エビデンス内科診療 ストロング・エビデンス
(2013/12/16)
谷口 俊文

商品詳細を見る

 この本って、ぶっちゃけるとフツーの事が書いてあるんです。ちょっと調べて勉強する癖が身に付いていると、ここに書かれてあることは「ま、そーですよね」という内容。でも実際の臨床ではこういったエビデンスに基づかない(製薬会社に踊らされた)治療がはびこっています。ACE阻害薬ではなくARBが頻用されている、メトホルミンをしっかり使わない、などという残念な治療が実に多いです。こういった不勉強な医者にならないためにも、読んでみることをお勧めします。認知症の項目は、精神科医からすると「うーん」と思うところもありますが。3つあるコリンエステラーゼ阻害薬はエビデンス的には同一なので好きなのを選べ、とかはちょっと…。

 こういう勉強も必要不可欠ですが、他に、医者という職業についてしっかり考えてほしい、と思います。医者になるにはいろんな理由があるでしょう。お金を稼ぎたいからとか親の後を継ぐからとか安定した職業だからとか、そんな現実的な理由でも全く構わないです。でも患者さんからすると、私たちはひとしく”医者”です。研修医だって、研修”医”です。学生のうちは学ぶだけで良いのですが、研修医ともなると”医者”としての判断、そして行動が求められます。自分の考えが患者さんの人生に揺らぎを与えかねない、そんな立場にいるのが医者。ですから、しっかり勉強してほしい、そう思います。医者であることに、矜持と責任を持ってください。原点、というワケではありませんが、そういう意識を持つためにこういった本たちを折に触れて読んでみると良いですよ。

医者が心をひらくとき-A Piece of My Mind (上)医者が心をひらくとき-A Piece of My Mind (上)
(2002/09)
ロクサーヌ・K.ヤング

商品詳細を見る

医者が心をひらくとき-A Piece of My Mind (下)医者が心をひらくとき-A Piece of My Mind (下)
(2002/09)
ロクサーヌ・K.ヤング

商品詳細を見る

医師は最善を尽くしているか―― 医療現場の常識を変えた11のエピソード医師は最善を尽くしているか―― 医療現場の常識を変えた11のエピソード
(2013/07/20)
アトゥール・ガワンデ

商品詳細を見る
決められない患者たち決められない患者たち
(2013/04/05)
Jerome Groopman MD、Pamela Hartzband MD 他

商品詳細を見る

 研修の始まる前や、ちょっと研修に疲れた時、何かを見失ったと感じた時に読み返してみてくださいまし。この4冊は医療関係者以外の方々が読んでみても、興味を魅かれるところがあるかと思います。

 医者というのは、人の生きる道の支え手になれる職業です。でも、あくまで支え手でしかないという意識も必要な職業です。限界と成長を繰り返し、本当に色んな事を学ぶことでしょう。これから研修医になる人たちや研修を行なっている最中の人たちは、立ち止まり、迷い、またちょっと回り道をすることもあると思います。でも、それらをした分、多くの景色を眺めていることにもなりますよ。一本道をスムーズに歩かないからこそ見えてくる景色、これを大事にしてください。それは医者としての土壌を豊かにしてくれるものだと思います。
トラックバックURL
http://m03a076d.blog.fc2.com/tb.php/1875-decafcc5
トラックバック
コメント
先生 おはようございます。
この記事は日を置いて何度も読みました。研修医の方々への手引きではありましょうが,まるで私への道標のようでもありました。
“回り道をすること”でこそ見えてくる景色のおもしろさ愛おしさを実感しているからです。こうあらねばならないと頑なになっていた捉え方が,少し立ち止まって見方を変えられるようになったように思います。“ゆとり”“あそび”とでもいうのかしら?

疲れが溜まってきたので今日はお休みをいただいてのんびりしています(こんな風に・・・)。
先生,次年度はよりスムーズな走りに備える年ですね。
annedot 2015.02.16 08:12 | 編集
>anneさん

ありがとうございます。
”回り道の景色”は患者さんにも良く使っているフレーズです。
特に回復期に入って苦しかった頃を想起した際に、こちらがお話しすることが多いです(いずれ記事にもしますが)。
疲れはたまりますね。。。疲れを疲れと自覚して、ちょっと休憩できるというのが大事なのだと思います。
m03a076ddot 2015.02.18 07:37 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

勉強時間や仕方はかなり個人差があるかと思います。
自分は通勤に電車を使っており、そこが最も集中して勉強できます。仕事中は外来で少し時間が空いたら本や論文を読むくらいでしょうか。
あとは「今日は勉強しない日だ!」と決めてその日一日は他のことだけするのも良いですよ。
勉強そのものですが、論文についてはある程度読む論文雑誌を決めておいて、タイトルで面白そうなものを探してabstractを読んで更に興味が魅かれれば全文を読む、という感じにしています。自分が不慣れな疾患についてであれば、質の高いreview記事をまず読んでおくと良いと思います。自分が属している大学医局では教授がきちんとご自身で「これは!」という論文をメールで送って下さるので、大変助かっています。
本については書店で選びますが、総論部がしっかり書かれてあるか、また自分がある程度勉強している分野を立ち読みしてそこがどれだけ良い内容か、で買うかどうかを判断します。
また、勉強する内容は、精神科ばかりの勉強では疲れるので、気分転換に内科の勉強をして、それで疲れたら漢方の勉強をして、それで疲れたら精神科の勉強に戻って、、、という流れにしています。
こんな感じでしょうか。
m03a076ddot 2015.02.18 07:53 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

ドラマは観ていませんが、世間での評価はどうなんでしょうね。
変なイメージがつかなければ良いなと思ってはいます。
出身大学のことは、少なくとも自分の医局では一切関係ありません。
確かに出身大学によって扱いが異なるという閉鎖的なところもまだあると聞きますが、ごく一部になってきているようです。
自分の医局以外でも、知人など周囲ではそのような扱いを受けたという話は聞きませんし、やはり少なくなっているのではないでしょうか。
m03a076ddot 2015.05.14 19:27 | 編集
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top