2015
03.26

臨床のワンフレーズ(10):ネガティブを大切に

Category: ★精神科生活
 世の中、ネガティブになるのは悪いことでポジティブになるべしという論調になることが多いように思います。ポジティブそのものは決して悪いものではありませんし、それを非難するつもりは全くありません。

 ただし、ポジティブが押し付けられ、それが教条やルールとなってしまっては、ポジティブに冒された状態となってしまうでしょう。ポジティブ教というかポジティブ病というか。ネガティブを許さずポジティブを強いることは、自らに嘘をつく事にもなります。そういう空気ですと、患者さんの中にも、ネガティブになってしまう自分自身に焦るかたがいらっしゃいます。

患者さん「休職してからどうしても自分の悪いところばかり考えてしまって。。。ダメですよね、こんなにネガティブじゃ」
自分「ネガティブになる自分に嫌気が差してしまうんでしょうか」
患者さん「はい…。もっと前向きになろうと思うんですけど…」
自分「前向きになろうとして、苦しんでいる」
患者さん「そうかもしれないです」
自分「○○さん、ネガティブってそんなに悪いことかしら」
患者さん「え?」
自分「会社を休まざるを得なくなる状況で常にポジティブでいられる人って、なかなかいないっていうかむしろ脳天気みたいな」
患者さん「そうですね…。でもマイナス思考ばかりじゃ良くないですよね」
自分「良くないです?」
患者さん「え、だって…」
自分「マイナス思考とかネガティブも大切だと思いますよ」
患者さん「そうですか?」
自分「自分の悪い点を考えるってことでしたけど、それって改善点が見えてるってところでもありますよね。ならそれを活かすことも可能なんだと思います」
患者さん「あ、確かにそうですね…」
自分「今の状況でネガティブになるのはむしろ当然で、ポジティブに明るく振る舞うほうがちょっと心配です。ネガティブは自分自身の現在地点がしっかり見えている証拠ですから、それは○○さんの強みなんじゃないかしら」

 ネガティブになることが人生の敗走者のように扱われる風潮はいかがなものかと思います。ポジティブになるにはそれなりのネガティブを経る必要があるでしょうし、様々な感情や思いを受け入れて成熟させるという行為がとても大切。ネガティブをまとわないポジティブは、剥がれやすいお化粧を施したようなもので、どこか頼りない。

 会話でも出てきましたが、ネガティブになるということは、自分の現在地点が見えていることでもあります。そこを強調ししっかり見つめてもらい、ネガティブから学ぶことが真のポジティブにつながっていくのだと示唆します。ポジティブのみというのは、臭いものにフタをしているだけ。診察する身としては、患者さんがネガティブでいられるように支えて、そこからみせかけではないポジティブが芽生えてくるのを待ちます。ネガティブに身を置くことで、人は醸造されていくものでしょう。その様子を、大事にしたいですね。
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コメント
経験的に
「ネガティブを知らないとポジティブになれない」
ような気がしますね。
私も基本ネガティブのドンドン思想沈没型ですが、そこで得る気付きで
浮上して…また沈没しての繰り返しですね。
ベースがネガティブなのでしょう。
場に合わせなくてはいけない時は
ポジティブを演じている自分が良くみえます。
それで良いと思ってます。
が、やりすぎないように注意してます(笑)

うたdot 2015.03.26 12:54 | 編集
先生 おはようございます。

“明るく元気な子”が是でそんな学級が一番だと思いこんでいたあの頃,「うちの子は皆がわいわい楽しんでいるのを眺めて楽しむ子なの」との言葉に考えさせられたことを思い出しました。
“様々な感情や思いを受け入れて成熟させるという行為がとても大切”心に響きました。
annedot 2015.03.29 08:01 | 編集
>うたさん

ありがとうございます。
ネガティブになってはいけないという世の中はとても窮屈に感じますね。
ポジティブになりすぎると”空回り”になるのでご注意ください。
m03a076ddot 2015.03.31 22:33 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

思い込みから云々というコメントへのお返事ですが、この欄ではお答えできないくらいに長くなると思われたため、ここでは本を紹介させていただきます。
大野裕先生の『はじめての認知療法』『こころの自然治癒力』の2冊です。
まずはこちらを読んでみてはいかがでしょうか。
m03a076ddot 2015.03.31 22:58 | 編集
>anneさん

ありがとうございます。
人を一つの面からは見ず、いろんな面で見てみることも大事ですね。
特に集団だと、その子がそのように振舞っているのはそういう役割があるからなのでは、と思うようなことが多々あります。
m03a076ddot 2015.03.31 23:04 | 編集
私も基本的にネガティブ人間です
ネガティブというか心配性というか・・・
家庭環境でそうなったんだろうと気付いたのはここ数年です
ただ、心配性なお陰で気付けた副作用や処方ミスもあるし、職種によってはそれがプラスに働くときもあると思います
それにネガティブでも他人を否定しなければ、他人を傷つけないから良いとも思ってます
自分がネガティブだから、同じくネガティブ発言な患者さんの気持ちも少しわかって服薬指導をしていて誘導しやすいです((´∀`*))
NKdot 2015.12.29 17:48 | 編集
>NKさん

ありがとうございます。
心配性ということは、心配する能力があるということでもありますね。
その特性を活かすことも大事なのだと思います。
m03a076ddot 2016.01.01 13:07 | 編集
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