2015
01.28

お薬は必要最小限に

 現在の精神医学では、統合失調症の患者さんに対してD2受容体阻害能を持つお薬のグループ”抗精神病薬”が用いられます。ただ、D2受容体への親和性が低いクロザピンが抜群の効果を示すように、これから色々と解明されていけば、患者さんによって使うお薬が変わってくるのかもしれません。これは、統合失調症という疾患が単一ではないことも示しているでしょう。精神医学は症状のまとまりを疾患として認定せざるを得ず、私たちの診断する”統合失調症”も恐らくは未だ同定されていない疾患群の集まりとして名づけられているのだと考えられます。糸川先生の提唱されている”カルボニルストレス性統合失調症”は、現在活性型ビタミンB6による治験が行なわれており、一筋の光明になる可能性がありますね。少し将来に期待しますが、抗精神病薬を用いて治療することが主流であるのはそうそう変わらないのではないかとも感じます。

 抗精神病薬の副作用に錐体外路症状というものがあります。ドパミンを抑えることで相対的にコリンが上昇してしまい、それが”手が震える、うまく歩けず小刻みになる、身体がそわそわする、表情が乏しくなる”などなどの苦痛を産みます。

 その副作用を抑えるために処方されるのが抗コリン薬なのですが、ちょっとクセモノで認知機能を落としてしまうんです。抗コリン薬は使用累積量に応じて認知症リスクが上がってしまうと言われており、抗精神病薬の副作用が出たら、やはり理想的には少しずつでも良いから抗精神病薬の量を落とすことが求められます。量が多くて副作用が出るわけですから、それを抑えるお薬を新たに追加するのではなく、量そのものを下げるのが大切。長い間服用されている患者さんなら細心の注意を払ってほんの少しずつ減らしていきます。

 抗精神病薬の量が多い時は減量することで抗コリン薬を使わなくても済みますし、仮に使っていても減量中止が可能になります。また、多すぎる抗精神病薬は二次性の陰性症状を産みます。それも認知機能低下につながるため、その辺りの配慮は実に重要。お薬は必要最低限を狙いたいものです。長年の使用であれば、受容体のアップレギュレーションも考えて本当に少しずつです。これは抗精神病薬のみならず抗コリン薬についても当てはまるでしょう。急に減らしたり止めたりするとリバウンドが生じますし、それを原疾患の悪化ととらえてしまうとお薬の量が増えることもあります。ベンゾジアゼピン系も同様に考えられますね。

 もちろん簡単には行かないことが多いのが事実。でも認知機能はとても重要であり、それを保つ/改善することで幻聴や妄想に対する心理教育も通ることがありますし、患者さんの人生においても考える力や覚えておく力が低下することは彩りが乏しくなることでもあります。だからほんのちょっとでも良いから、抗コリン薬や抗精神病薬を患者さんの同意を得てゆっくりじっくり減らしていこうというスタンスを共有したいものです。

☆参考文献
Desmarais JE, et al. Effects of discontinuing anticholinergic treatment on movement disorders, cognition and psychopathology in patients with schizophrenia. Ther Adv Psychopharmacol. 2014 Dec;4(6):257-67.
Potvin S, et al. Antipsychotic-induced parkinsonism is associated with working memory deficits in schizophrenia-spectrum disorders. Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci. 2014 Jun 13. [Epub ahead of print]
Gray SL, et al. Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia: A Prospective Cohort Study. JAMA Intern Med. 2015 Jan 26. [Epub ahead of print]
Mate KE, et al. Impact of Multiple Low-Level Anticholinergic Medications on Anticholinergic Load of Community-Dwelling Elderly With and Without Dementia. Drugs Aging. 2015 Jan 8. [Epub ahead of print]
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コメント
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dot 2015.01.29 16:19 | 編集
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dot 2015.01.30 19:39 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

お薬の分類で言えば、ほぼすべてが候補になります。これは冗談ではなく、患者さんの状態や付随する症状に併せて考えていくためです。
失敗されたとはいえ、認知行動療法は第一選択です。それをもう一度試みるのが現実的かもしれません。
主治医の先生や、平行して心理療法を行なっているのであれば心理士の先生とよく相談してみることをお勧めします。
m03a076ddot 2015.01.31 18:10 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

同様のコメントを以前にいただき、またこちらもお返事を返していますので、抗うつ薬の記事内のコメント欄をご覧ください。
m03a076ddot 2015.01.31 18:13 | 編集
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