2015
01.03

臨床のワンフレーズ(5):つらさの代名詞

Category: ★精神科生活
 統合失調症の患者さんは幻聴に苦しむことが多いです。被害的な幻聴が聞こえてくると、それをのほほんと聞いていられないでしょう。

患者さん「幻聴聞こえて苦しいんだわぁ」
自分「そうでしたかぁ。うーん」
患者さん「聞こえちゃって聞こえちゃって」
自分「うーん。どんな時に聞こえるかしら、幻聴さん」
患者さん「どんな時って、家にいる時」
自分「今は?」
患者さん「聞こえない」
自分「家にいると必ず?」
患者さん「必ずってわけでもないけど」
自分「○○さん、ひょっとして眠れん日が少し続いたり、あとそういえばデイケアで最近△△さんとケンカしましたでしょ。あれ以来ちょと幻聴さん強くなってません?」
患者さん「あー、そうだなぁ。ケンカしてから眠れんし」
自分「仲直りしました?」
患者さん「まだしとらん」
自分「そこかなぁと思いますよ。○○さんの幻聴さんって、つらさの代名詞みたいなところがある感じ」
患者さん「そうかぁ」
自分「つらさとか寂しさとか、そういうのがあると幻聴さんがコンニチハと」
患者さん「そうだなぁ」
自分「だからサインだと思うのよね。あなた今こころが苦しいのよって知らせてくれる様な気がする」
患者さん「そうかぁ」
自分「幻聴さんは性格きついもんで嫌なこと言ってきますけど、それを活かしていくと少し生活しやすくなるかも」
患者さん「分かったわ」
自分「意外と幻聴さんヒント出してくれとるかもしれんでね」
患者さん「おー、そうだなぁ」
自分「となると、まずは△△さんと仲直りですね」
患者さん「うん、そうだな」

 残念ながら現代の精神医学では、全ての患者さんの幻聴をゼロにすることはできません(ゼロにするとかえって恐怖が強くなるという患者さんもいます)。どうしても残ってしまう患者さんに対して何ができるのか。それを考えると、幻聴に対して肯定的な意味付けをすることは1つの方法だと思います。この図のように、幻聴は”不安・不眠・過労・孤立”という4つの要素と関わっていまして、この要素が強くなると幻聴も憎悪します。そうすると更に4要素も強くなり…。自分は幻聴に限らずどんな症状もこの要素が大事だと思いますが、とりわけ幻聴については難しく考えずこの4つに絞って患者さんとお話しして、幻聴を”いなす”もしくは”活かす”ことを考えていきます。

4要素

 患者さんには、この時「幻聴さんは”つらさの代名詞”かもしれませんよ」とお伝えしてみます。断定せずに”かもしれない”くらいにとどめておきますが。具体例を挙げて、あとはこの4つの要素との関わりを絵に描いて示してみても良いでしょう。そこで、幻聴はその要素を知らせてくれるサインという風に自分はとらえなおして、患者さんにお話ししてみることが多いです。真剣になり過ぎず、「幻聴さんってホント性格きついんだけどねぇ、意外とこういうとこ鋭く教えてくれるんじゃないかしら」という感じでゆるーくふわっと。大きな声では言えませんが、”幻聴のツンデレ化”を内心ひっそりこっそり目指してます。幻聴を活かして生きることができれば、それは症状という枠からはずれてくれるんじゃないか。そう願いながらの診察。

 どんな症状も肯定的な意味が付与されれば、それと敵対せずに見つめながらやっていけそうな気もしています。でもなかなか難しいのが事実…。それを一人一人の患者さんで探求するのが精神医学の醍醐味なのかもしれませんね。

 ちなみに医者も幻聴を経験します。当直中…

自分「お。救急車来ましたよー」
看護師さん「え?」
自分「だってサイレン鳴ってますよ。迎えに行きますわ」

-----外に出る-----

自分「あれ? いない…。おっかしーなぁ」
看護師さん「先生、聞こえてないですって。大丈夫?」

 とか

自分「なんかありました?」
看護師さん「先生、どうしたんですかいきなり」
自分「あれ? さっき電話かけてきませんでした?」
看護師さん「かけてませんよ」
自分「え? おっかしーなぁ。PHS鳴ってすぐ切れたから…」
看護師さん「履歴見たら分かるじゃないですか」
自分「あ、そっか」

-----見る-----

自分「なかった…」
看護師さん「誰も鳴らしてないですよ。今患者さんいないから少し寝てきてください」

 なんてのが自分は研修医時代に結構ありました。。。精神科当直では、病院にもよるんでしょうけどめちゃくちゃ忙しいことはあんまりなく、救急車がひっきりなしに来るということもありません。でもたまに電話が鳴ったかもという感覚にはなりますけど。
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コメント
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

非常に環境がよろしくない中、ご兄弟は頑張っていらっしゃるのだと思います。
自分はどの病院が良いかというのは全く分からないので「ここが良い」とは言えないのですが、ご本人とご家族から見て「転院した方が良い」と思うのであれば、その方向で動くことも1つの選択肢です。主治医の先生への相談と、あとは転院を考えている病院に家族相談やお電話という形で聞いてみることをお勧めします。
山梨の多飲水専門の病院というのは山梨県立北病院のことでしょうか。そこは多飲水専門ではなく、多飲水にも強い精神病院です。見学に行ったこともありますが、確かクロザピン(治療抵抗性統合失調症用の薬剤)も使える、進んだ病院です。
行動を起こすことが何よりも大事です。ご家族の行動が、現状を良い方に向かわせる手段になります。良い病院を見つけて良い治療が受けられることをお祈りしています。
m03a076ddot 2015.02.21 10:43 | 編集
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