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2018
09.21

臨床のワンフレーズ(27):何ができるだろう

Category: ★精神科生活
 問題の解決には、自ら行動するということがとても重要になります。もちろん心身ともに休むべき時は休んでもらいますが、それが過ぎたら今度は動く時に移行します。

 うつ病の患者さんでなかなかおっくう感が抜けない時や、社交不安障害の患者さんで怖くてなかなか外に出られない時など。これまでも記事にしてきたように、症状と行動が強く結び付いている患者さんは、症状がある”から”行動できないという思考に陥りがち。でもそれは絶対ではなく「症状を症状のまま受け止めて、それでいて行動することができるんだ」「症状があっても、行動を選ぶ自由があるんだ」という実感をじわじわ得てもらうことが改善に重要です。”症状を見つめる”ということが出来るようになるってのが目標。そのためには、症状が "やってくる" ような気持ちが重要で、「うつになる」「不安になる」ではなく「うつがやってくる」「不安がやってくる」、と言い換えます。そうすると、症状の主体からちょっと離れられるのです。

 行動については、患者さんの希望を踏まえ、現実に即した目標を設定。症状がやってくることを認めながら目標を少しずつ行なっていくことで、これまた少しずつ自由を得られるようになります。

自分「○○さんは人の目が気になってなかなか外に出られない、そんな不安がやってくるんですね」
患者さん「はい。ここに来るのも主人の車で送ってきてもらってます」
自分「○○さんは、この状況をどう感じます?」
患者さん「なんか、悔しいです。もっと楽に外出できたらなって。情けないって言うか…」
自分「気になる自分が情けない感じ。分かっちゃいるけど気になる感じがやってくる」
患者さん「はい」
自分「確かに、今の状況ではそう思うのも無理はないかもしれません。それを踏まえた上でなんですが、○○さんはどうありたいですか?どうなってほしいとか」
患者さん「やっぱり一人で外に出てみたいですね」
自分「一人で外に出てみたい。そうですよね。じゃあ○○さん、そのために今の○○さんにできそうなことを教えてほしいんですけど、どうでしょう?」

 3段論法ではないですが


・今の状況がどうなのか
・どうありたいのか
・そのために”患者さん”が何をすべきなのか



 これを確認。他人にしてもらう、のではなく、自らがすることが重要になります。あんまり「あなたが」というのを強調しすぎると押しつけになってよろしくないのですが…。治療というのは、自分がすることと医者がすることの両方から成るもの。することとすることとのあいだに生まれてきます。ただ、最初から非現実的な目標であれば、治療者と話し合って達成可能なものに変更。

 症状を消そうとすると対決になってしまい疲弊すること、症状があっても行動はそれにコントロールされるものではないこと、それをお伝えした後で、行動をしてもらい”小さな自由”を積み重ねること、これがポイントになります。こういったことを診察の度に表現を変えてお話し。もちろん、そこには治療者と患者さんとの温かみとゆとりのある信頼関係が前提ではあり、治療者はそこにも工夫をしていきます。そういった自由は、症状を持つ私という主体をいったん解除し、症状との関係性を考えなおすことから生まれてくるでしょう。症状をちょっと浮かせておき、それを見つめることができれば、少し余裕が生まれてくるのです。

 とてもつらく苦しいことを、ありふれた苦しさにダウンサイジングする。これが大事なのだと思います。生きていく中で苦しみはツキモノであり、それをゼロにしてハッピーだけの人生なんてのはありません。症状との対決姿勢が強すぎると「これさえなければ幸せなのに…!」と思いがち。決してそうではなく、その先は平凡で苦楽のある人生です。そこを認識してもらわないと、また別の症状がやってきたり、症状の複雑化にもなったりするでしょう。

 ありふれた苦しさを認めつつ生活できるようになれば、それが良いのかなと。そのためには、苦しさと直接対決するのではなく、その苦しさがあっても選択できるのだ、行動できるのだという経験を積むことも方法の1つなのだ、そう思います。症状を浮かせる、症状を”現象”のようなものととらえる、そんな工夫が必要になりますね。
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