2017
06.10

Google、精神科を掌握す

Category: ★精神科生活
 統合失調症急性期のある患者さん。外来で強い不安と妄想があったため、入院での治療を行なうことになりました(今ではなく前の出来事です)。

 統合失調症の妄想は時代に影響を受けることが強く、昔は「みんな、僕のことを無線で連絡を取り合ってる」なんてのがあったようです。”無線”っていうのが古さを感じますね。他には「僕の情報が回覧板で知れ渡ってる」とか。怪奇現象が流行っていた頃は「UFOが」とか「FBIの捜査官が」とかも。しかし現代は無線が出てくることはほとんどなく、上記の患者さんでは



Google Earthで位置が分かって狙われてる



 ついにGoogle先生が妄想に登場するご時世になりました。しかもEarthですよ。ちょっとびっくりしちゃって

自分「Googleですか!?」

 って聞きなおしてしまいました。

患者さん「そうですよ! それで僕の位置が!」
自分「そ、そうか。すごいですねGoogleは…」

 妙に感心もしてしまい…。ネット社会だけでなく患者さんの妄想内容までも支配するのか、Googleは。むむむ。他にも「LINEでずっと見張られてるんです」とか、YouTubeやSNSが出てくることもポツポツ。インターネット関連は実に多くなりましたね。ネット掲示板でも「自分のことが書きこまれてるんじゃないか、暗号じゃないか」など。ネット以外では電磁波や放射能なんてのも話題に挙がり「電磁波が来るから帽子を被って守るんですよ」「放射能が身体に入ってしまって、僕がみんなに撒き散らしているんです…」というようなことも。そういえば監視カメラや盗聴器はまだまだ現役です。FBIやCIAというのは若年患者さんから出てるくことはほとんどなくなりました。

 統合失調症患者さんの思考は微分回路的認知とも言われ、細かな変化を察知する能力に長けています。ただ、それを元に行動してしまうところもあり、長期的にじっくり構えてというのがなかなか難しい。対して古典的なうつ病患者さんは積分回路的であり、過去のデータ蓄積で行動します。これは堅実ではありますが、過去へのとらわれで初動が遅れることをも意味します。両者を”世直し”と”立て直し”で比較することもありますね。

 そういった認知メカニズムを考えると、統合失調症患者さんの妄想が時代とともに変遷するのはとても納得が行きます。流れを察知して、それが妄想にも反映されます。対してうつ病患者さんの妄想は時代が変わってもあまり変化がありません。衣食住やそれにまつわるお金など、不変な生活に根差した内容になります。躁状態も基本的に生活から抜け出ませんね。

 一言に”妄想”と表現しても、疾患によって内容は異なります。精神病理学という分野は、そういったところを掘り下げていくもので、精神疾患の病態をとらえたり治療に応用したりすることに一定の役割を果たしてくれます。ただ、行き過ぎると”精神病理学・学”の様になってしまうことも。。。やはり臨床に根差したものであるべきだと個人的には思っていますし、病理学ばかり勉強するよりは薬理学やその治療学をしっかりと頭に入れた方が若手にとっては良いんじゃないかなと。モーズレイ処方ガイドライン読みましょうね。薬剤をしっかり勉強した後に、”たしなみ” として病理学や分析を、という順番が適切なのではと考えております。
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コメント
えっ。Googleがっ⁉︎
と驚きました。
でも、私も(軽く)妄想をよくしますが、
位置情報や個人情報を知られて、追われてしまうということを実際考えてみると怖いものです。
妄想なのかどうなのかわからない時があります。大体は、頭が混乱してしまったりしている時ですが…。
「現実も妄想も一脳内現象に過ぎない!
だから、お前は勉強しろ。」って、
いつも自分に言い聞かせてますね。
人間にとって妄想、つまり考え事は、
楽しいことでもあり、恐怖を導くものであり、人によっては症状として現れてしまったり、実際、多くの人が脳内現象に…というより、人間そのものが脳内現象によって支配されているのかなと思います。
また一つ勉強になりました!

私は精神科のお医者さんになりたいと思っています。
正直な所、全然向いてないと思っていて、
お医者さんより臨床心理士さんの方がいいのかなとも思います。
優柔不断なので、センター試験の一ヶ月前ぐらいまでには決めたいなと思います。
フォレスピロdot 2017.06.18 23:21 | 編集
>フォレスピロさん

ありがとうございます。
妄想の役割とは何なのだろうか、というのを精神科や心理では考えることがあります。
症状は殲滅すべきものではなく、ひょっとしたら患者さんを保護している役割を持っているのではないか、ではその症状をどう活かしていけば良いのか、などを考えていきます。
自分の同僚には、臨床心理士から医学部に入り直して精神科になった人がいます。
そのいっぽうで、臨床心理士であることに誇りを持ってその仕事をしている人もいます。
どの仕事でも、患者さんの人生に関わっているという畏怖を持ちながらなすことが大事なのだと思います。
m03a076ddot 2017.06.19 21:56 | 編集
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