2015
02.09

足して引いて…

Category: ★精神科生活
 自分が勤めている病院は認知症の患者さんを受け入れていまして、他院から紹介患者さんがやってまいります。

 その中で、たまに「こりゃ何をしたいんだ?」と思う処方を見ることがあります。代表的なものが

・ドネペジル(アリセプト®)
・リスペリドン(リスパダール®)
・ビペリデン(アキネトン®)

 の組み合わせ。

 ドネペジルはコリンエステラーゼ阻害剤でして、アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを邪魔するというのが作用。アルツハイマー型やレビー小体型などの認知症ではアセチルコリンが足りないんじゃないかという”仮説”があるため、アセチルコリンが減らないようにするというのがこのお薬の目的。副作用は徐脈や興奮や錐体外路症状などなど。この興奮を副作用と思わずに認知症の症状悪化と勘違いするとお薬の治療が混沌としてしまいます。

 リスペリドンは抗精神病薬で、D2受容体阻害作用と5-HT2A受容体阻害作用をメインに持ちます。非定型抗精神病薬というグループですが、錐体外路症状や高プロラクチン血症を起こしやすく感覚的には定型抗精神病薬にかなり近いと考えています。用量が多いと前頭前野のD2受容体阻害によって認知機能低下や意欲低下なども来たします。自分は認知症患者さんにリスペリドンを使うことがほとんどありません。

 ビペリデンは抗精神病薬による錐体外路症状を抑える目的で使われる抗コリン薬というもの。抗精神病薬による錐体外路症状はD2受容体阻害作用が原因。線条体でのアセチルコリンとドパミンのバランスが乱れて、相対的にアセチルコリン>ドパミンになります。パーキンソン病と同じ状況を医原的に作り出しているとも言えますね。この一見多く感じるアセチルコリンを抑えることでバランスを取り戻そうというのが抗コリン薬の狙い。ただ、長期的な使用は認知機能低下を招きますし、減量することで認知機能改善もします(Gray SL, et al. Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia: A Prospective Cohort Study. JAMA Intern Med. 2015 Jan 26. [Epub ahead of print] Desmarais JE, et al. Effects of discontinuing anticholinergic treatment on movement disorders, cognition and psychopathology in patients with schizophrenia. Ther Adv Psychopharmacol. 2014 Dec;4(6):257-67. など)。

 総じて、副作用は「副作用だ」と気づくことで副作用として立ち現れます。これ重要と個人的に思っていたり。

 でもって、この3つのお薬の使い方で「あれ?」と思いませんか?


コリンエステラーゼ阻害剤と抗コリン薬が同時に入ってる…?


 そうなんです。アセチルコリンを増やしたいのが減らしたいのかよく分からなくなっているのがこの処方の謎なところ。薬理作用を理解せずに表面的な対症療法をしていると、このように不思議な感じになります。

 大体こういうのは、ドネペジルを最初に使って副作用で興奮して、それを抑えるためにリスペリドンを使って副作用で錐体外路症状が出て、それを抑えるためにビペリデンを使うという、お薬の副作用に振り回されているケース。しかもリスペリドンもビペリデンも投与量によっては認知機能低下になりますし、リスペリドンにいたっては錐体外路症状で転倒して骨折とか誤嚥して肺炎とか…。

 これはちょっと不味い処方ですね…。精神医学は確かに対症療法的な薬剤の使い方をせざるを得ないというのがリアルワールドでの愚痴ですが、”作用機序を理解した上で”という但し書きが付きます。今回の様にコリンエステラーゼ阻害剤と抗コリン薬を合わせて使うというのは残念な使用法でしょう。ただ、若手の精神科医は作用機序を覚えて使用する傾向にあるので、そういう使い方は少ないように感じます。さらに、どのお薬も必要な時に必要な量を使うというのはもちろん大事ですよ。念のため。

 しかし、精神疾患の原因はいまだ不明であり、確定的なものはありません。薬剤もあくまで”仮説”をもとにしてつくられているということは肝に銘じておくべきでしょう。その限界を確認した上で、薬剤の作用機序を知って使うこと。それが大事なんだと思います。
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コメント
先生 おはようございます*・ωq

認知症は たぶんうちの母がそうなんじゃないかな…という気がします。

最近物忘れがひどいし 会話の流れについていけずポカンとした顔をしていることが多く
何回も説明をし直さなくてはなりません。

ですが『お母さん、認知症っぽいから病院行って診てもらおうよ』とも なかなか言い出せず どうしようかと迷っております。(本人はショックでしょうし)

治療が早ければ 症状の進行もゆるやかになるものなのですよね?


お話かわりますが、念願のコメダ珈琲店にやっと行ってまいりました

キャラノワールを単品で注文して お冷やと共に楽しんでまいりましたよ(^O^)

温かくて冷たくて、ほろ苦キャラメルクリームがとってもあっていて
ナッツも香ばしくてとっても幸せなひとときを過ごせました〃'ω')b


これからは内職のお給料日に ミニシロノワールを食べに行こうかなと思っています。


いつもありがとうございますm(_ _)m

こんひゅすぱいdot 2015.02.10 08:08 | 編集
>こんひゅすぱいさん

ありがとうございます。
お母さまのこと、なかなか難しいところですね。
ただ、記憶力が下がるのも、様々な原因があります。例えば甲状腺機能低下症という病気でも記憶力低下は起こって、それは甲状腺ホルモンを補充すると記憶力もしっかり戻ります。まずはそういう治療可能な認知症というのを探すことが大事だと思います。また、アリセプトなどの抗認知症薬は、アルツハイマー型認知症の進行を1年ほど緩やかにしてくれる作用を持ちます。
コメダのシロノワールは冷たくて温かくて、優しい甘みもありますね。機会があればまた食べてみてくださいまし。
m03a076ddot 2015.02.11 19:11 | 編集
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