2014
11.06

使うべき時に使う

 今日はちょっと攻撃的な記事になってます。

 自分の外来に通院している患者さん。風邪をひいてしまいました、と。くしゃみ鼻水でのども少し痛いそうな。

患者さん「薬を近くの耳鼻科でもらってきました。なかなか治らなくて変えてくれてます」
自分「どんなの出てます?」
患者さん「えーと、お薬手帳に貼ってるんですけど」

 と見せてくれたのが…。



フロモックス4日分

メイアクト4日分

セフゾン4日分




(;゚д゚)・・・



 うわぁ。。。第三世代セフェムのローテーションですよこれ。この変薬には全くもって意味がなく、そもそも細菌感染かということを考えもせずに抗菌薬を使うという時点で完全にアカンやつや。

 こういうのってどうしてそうなっちゃうんでしょう。怒りというよりも呆れてしまう。なんとかならないんでしょうか。ぽいぽいっと抗菌薬を出すのは「自分はヤブ医者です」って言ってるようなもんですよ。そういう態度が耐性菌を生んで結局抗菌薬を使いづらくさせてるっていう意識はないんですか。特にクリニックレベルで経口カルバペネムなんて使わなくて良いんですから、出さないで欲しいです。

 何ともう1人風邪の患者さんがいまして(風邪流行ってるんですかね)、この患者さんには実害がありました。

患者さん「喉が痛いのと鼻水が出て、風邪って言われてこの薬もらってるんですけど眠気が強くて…」
自分「どんなの出たんですか?」
患者さん「お薬手帳も見せて選んでもらったんですけど、これです」


クラリス



(;゚д゚)・・・



 マクロライドや!風邪にマクロライドが出たで!

 しかもこの患者さんクエチアピン(セロクエル®)を少量飲んでいてですね、これってCYP3A4で代謝されるんです。そして、クラリスロマイシン(クラリス®)はCYP3A4を強力に”阻害”します。患者さんには「このクラリスってのはクエチアピンとケンカするんですよ。眠気もそのケンカで出たんだと思います」と説明して、クラリスロマイシンの内服はストップしてもらいました。

 クラリスロマイシンのCYP3A4阻害作用でクエチアピンの作用が強まりフラフラに。この患者さんは朝起きられず、自分の診察の時もちょっとボーっとしてました。ホントやめてほしいんですよ、安易に抗菌薬出すの…。今度出る睡眠薬のスボレキサント(ベルソムラ®)はこのクラリスロマイシンとの併用禁忌です。でも複数のクリニックを受診してかつ風邪をひいたなんてなると、ぽいっとクラリスロマイシンが他院で出される。そうなると危険なコンボです。こういうの起こりますよ、たぶん…。クラリスロマイシンがCYP3A4を強く阻害することを知らない医者も多すぎて、由々しき問題です。

 なぜ勉強しないのか。こんな処方をする医者に対して、罵詈雑言の嵐でも書き連ねたくなります。昔と違って今は感染症治療の良い本がたくさん出てますから、患者さんのことを思うのならしっかりと抗菌薬について学ぶべきです。プライマリケアでは外来抗菌薬に絞って勉強するのが大事なので、あんまり勉強したことのない人はこちらを是非。

プライマリケア医のための抗菌薬マスター講座プライマリケア医のための抗菌薬マスター講座
(2011/02/25)
岩田健太郎

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 岩田先生の本。何が良いって140ページくらいなのですぐ読めちゃうんですよ。他にも読んでいるのであればこの本は不要ですが、簡単に処方しちゃう医者に向いてます。これっくらいの知識は患者さんを診る医者として最低限知っておきたい。最低限です、最低限。

 急性上気道感染(細菌感染とは限りません)に対して抗菌薬を使ったからといって、利益らしい利益は12255人中1人の肺炎による入院を防げるかどうかというレベル(Meropol SB, et al. Risks and benefits associated with antibiotic use for acute respiratory infections: a cohort study. Ann Fam Med. 2013 Mar-Apr;11(2):165-72.)。どれだけ無駄かというのが分かりますでしょう。

 しかし、一方で何でも抗菌薬を望む患者さん(患者さんが子どもならその親御さん)がいるのも事実。抗菌薬はウイルス感染に無効であることも知らず、また患者さんの病態はウイルス感染の可能性が高いため抗菌薬は処方しないと説明しても「あんたはウイルスの可能性が高いって言うけど、もし細菌の感染だったらどうしてくれるんだ!」と医療者を脅すような患者さんも残念ながら実在します。ということで


医療は不確実だということを忘れちゃいけません


 100%正しい診断と治療がすぐに行なわれるのが当然だと思っていませんか? そんなことできるはずがなく、その過ぎた期待が過剰な医療をはやし立てるように産んでしまっている事実もあります。良い例えではないですが、医療は診断や治療がなされる場合のリスクとベネフィットを考えながら”分の良い方に賭ける”ことをします。

 BMJにも「医療には不確実性があり、それを皆が認識すべきである」という論文が出ています(Hoffman JR, Kanzaria HK. Intolerance of error and culture of blame drive medical excess. BMJ. 2014 Oct 14;349:g5702.)。これは必読と言えましょう。

 医者側も抗菌薬使用についてしっかりと勉強する必要があります。特に処方閾値の低い医者は論外です。もちろん抗菌薬だけでなく降圧薬や糖尿病治療薬などでよく見られるように、まったくエビデンスに基づかない妙な治療をするのもダメダメですよ。そして、患者さん側も医療と言うものをもっと知る必要があるかと思います。完全なものではない、”待つ”ということも時として必要である、そんな当然の事実をしっかりと認識しましょう。
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コメント
薬剤師さんもなにしてるんだろうなぁ、と思いました。特に二つ目の場合は薬のプロとして医師に確認と説明をして欲しいものです。難しいかもしれませんが、それが医薬分業の意義でしょうに。

ハーネスdot 2014.11.09 12:35 | 編集
>ハーネスさん

ありがとうございます。
そうですね。ただ、若い薬剤師の先生は勉強熱心なことが多いようです。その熱意は重要ですが、それが行き過ぎてしまって患者さんに「この薬は出す意味が分からない」と言ってしまう薬剤師の先生もたまにいるとかいないとか。そうなると医者と患者さんの関係性にも亀裂が入り、患者さんも右往左往してしまいます。
まずは積極的に医者に聞いてほしいなぁと思ってはいます。
でも、中には傲慢な医者もいるようで、質問すら許されないこともあるようです。
何やら難しいところですね…。
m03a076ddot 2014.11.10 06:46 | 編集
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