2015
06.07

昔が良かったとは言いませんが

Category: ★精神科生活
 以前勤めていた病院の当直の際、病棟見回りが終わった後に看護師さんと色々とお話をしていました。自分が勤めていた病院は、昔は入院患者さん参加型の様々な行事が行なわれていたとのこと。ちらほらと耳にしてはいましたが、その時はまとまった時間聞けました。

 精神科は何十年も入院している患者さんが稀ではありません(ほとんどが統合失調症)。統合失調症で入院し、家族から連絡が取れなくなったり関わりを拒否されることがあったり、かと言って受け入れ施設もないし…。やむにやまれぬ事情でずっと病院にいる、というか住んでいる患者さんがいます。

 長期入院の患者さんたちにとっては病棟が彼らの世界になっています。そういう患者さんを「自発性が低下している」「陰性症状が主体だ」と果たして私たちは言えるのでしょうか。もちろん疾患による影響や大量に使われた抗精神病薬による弊害も多分にあるんでしょうけど、ずっと変化の乏しい入院生活を続けていたら誰だって自発性は低下するんじゃなかろうか。

 そんな患者さんの楽しみに、病院主催のささやかな行事があったようです。自分はその行事がなくなってから勤めたので詳細を知りませんが、患者さんに昔のことを聞くと、ちょっと懐かしそうに、あそこに行った、楽しかった、と話してくれます。あ、この患者さんこんな良い顔をするんだな、とこちらが少し驚くくらいに思い出話をしてくれることもあります。

 ぶどう狩り、公園へのピクニック、潮干狩り、お祭り…。季節に応じて行事があって、また普段も看護師さんが患者さんと一緒に病院の外に出て映画を観てきた、なんてのもあったようです。長期入院せざるをえない患者さんにせめてもの、ということなのかもしれません。中には医者も一緒に患者さんとコーヒーを飲みに行った、なんてこともあったようです。

 今はそれが全部なくなってしまって、看護師さんも患者さんと病院の外に行くことはできません。もちろん医者もそんなことできません。他の病院がどうかは知りませんが。

 昔の慢性期病棟は、ずいぶんと牧歌的な部分もあったようです。何かそんな要素って実に大事だと思います。患者さんの入院が長期になってなかなか打開策もなく申し訳ない。その様な状況の中で、少しでも患者さんに喜んでもらえたらという思いがあったんですよね。もちろん入院患者さんほとんどが統合失調症だったということもあるでしょう。慢性期の彼らと”ともにいる”ことは、精神科医や病棟スタッフにとって苦になりません。

自分「自分とか家族が入院するなら、そんなゆったりとした部分がある病院って良いですよね」
看護師さん「そうですよね。家族が入院しても良い!って思えるのって大事。 何でも昔が良いわけじゃないですけど、色んな行事がなくなったのはさびしいですねぇ」
自分「今は救急用に改築とかあってちょっと病院全体にゆとりがないですもん。患者さんにも影響しそうで」
看護師さん「そうそう。昔は良く映画も観に行って、お祭りの時なんか女性患者さん浴衣着たんですよ。先生の患者さんの○○さんも着てね。写真もあるんですよ、これ」
自分「あら若い! こんな時もあったのね」
看護師さん「そうそう。今は忙しくなっちゃって」
自分「何か気持ちが休まらないんですよね」
看護師さん「先生バタバタしてますもんね。歩いてる時とか表情険しいよ」
自分「あら、そりゃいかんですな」

 個人的には、患者さんに少しでも楽しみを持ってもらえるような、そんな病院が良いなぁと感じます。もちろん経営も優先しなければならないですし慢性期病棟はあんまり儲からないですし入院患者さんも統合失調症ばかりではなくなりましたし、いわゆる”スーパー救急”に本腰を入れなければ病院がこれからやっていけなくなるのも事実でしょう。でも、お薬だけでなく、病棟内の作業療法だけでなく、そういった行事があるとスタッフにも少しゆとりが出てきて、それが医療にも良い効果を産むんじゃないかと思っています。昔話をしてくれる患者さんの生き生きとした笑顔は印象的で、それの傍証かもしれません。
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コメント
こんにちは。最近は急性期病棟の質って上がっているそうですね。たしかに、全室個室だったり、行事もあります。良くバーベキューとかディケアーなどでいっているようですが、入退院を繰り返すレベル、職業支援をうけられる人々が多いようで、やはり一生入院をするような患者さんの病棟は段々暗くなってきているような印象をうけます。実際に隅のほうに追いやられているんです。病院自体は精神科の暗いイメージを取ろうと、インテリアにも気を配り、カフェスタンドやコンビニが入り…一昔前の療養所とは様変わりしてますけど、それも大事なんだけど、そこに来られないで部屋の中にいる人たちとか、そういうことを必要としないけどなにか楽しみがほしい人とかがいるんだよなって思います。
これからは、治療もよくなっていくので「一生入院」という患者さんは減って行くのでしょうが、病院が生活の場になる人は一定数はいるはずなので、そういう医療も持ち上げて行ってほしいものです
うたdot 2015.06.08 16:56 | 編集
>うたさん

ありがとうございます。
急性期はストレスケア病棟などという名称でホテルかと思うような病室が多くなりましたね。
あまりに居心地を良くしてしまうと、患者さんによっては無意識にでも「病院に戻りたい」と思ってしまうことがあるのかなぁと感じています(考え過ぎかもしれませんが)。
特に急性期の病棟は「まぁまぁ休めたけど、もう良いかなぁ」くらいの環境がほどほどで良いのかもと思っています。
いわゆる慢性期病棟は、そこが世界になっている患者さんもまだまだ多いので、グレードアップしてほしいです。
一気に変えたら患者さんの自閉を揺さぶってしまうでしょうから、少しずつ。そして、楽しめる行事を増やしてほしいなと考えています。
m03a076ddot 2015.06.10 10:22 | 編集
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