2014
11.02

若手医師が漢方処方を学ぶための本

Category: ★本のお話
 漢方は日本の医療をしている中では選択肢の一つとして挙げられます。しかし、処方する医者は全員がそんなに漢方を必死に勉強しているわけでなく、製薬会社が提供するアンチョコ的なガイドから選んで使うということが多い。もちろんしっかり学んでらっしゃる先生方もいらっしゃいますよ。

 アンチョコからぽいっと選んで処方するのでは、やっぱり良くはないですよねぇ。不可思議な点も多いとはいえ中国の医学(中医学)も理論体系を持っていますし、それを抜きにしてしまうと妙な処方になります。

 しかし残念ながら、日本漢方は”学”ではなく”術”としての色合いが強くなってしまった歴史的経緯があります。理論的に考えてこの処方にする、というところが非常に弱い。本場の中国では、中医学をしっかり学ぶためには年単位を要しているとのこと。それなりに勉強しないと使えない、と思います。

 日本漢方古方派の”実証””虚証”なんてのはちょっとどうかなぁ、と個人的に思っていまして、中医学の考え方とは異なる印象。でも中医学は中医学で、陰陽五行論はシステマティックなだけに少々頑張ってこじつけた感があります。勉強するとなるほどねと思う部分も多いですが、西洋医学に慣れ親しんだ医者からするとちょっと頭がこんがらがるかもしれません。

 あとは生薬の作用を理解すること。漢方薬はいくつかの生薬が集まったものですが、この生薬を見ると漢方薬の性格が分かるようになります。何を目的として作られたものなのか、というのが納得しながら覚えられる。

 ということで、日本の医者が漢方を学んで使えるようになるには、最低限の理論というものを学び、かつ生薬の作用をおさえてその理論に則ってみる、ということが重要。そんな風に思っています。そして、使用する患者さんを限定すること。何でも漢方で対処しようとするとやはり膨大な勉強が待っているでしょう。基本的な理論に該当するような患者さんに絞って使うことが、最初は必要だと思います。

 そんなこんなで、どんな本が良いか。生薬をおさえることも含めて、この2冊はどうでしょう。

身につく漢方処方―基本30生薬と重要13処方身につく漢方処方―基本30生薬と重要13処方
(2013/04)
入江 祥史

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Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬〜日常診療にどう活かすか?漢方薬の特徴,理解の仕方から実践まで解説. さまざまな疑問の答えがみつかる!Dr.浅岡の本当にわかる漢方薬〜日常診療にどう活かすか?漢方薬の特徴,理解の仕方から実践まで解説. さまざまな疑問の答えがみつかる!
(2013/03/28)
浅岡 俊之

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 丁寧に生薬を解説して、理論面もカバーしてくれています。前者は2人の医者の会話形式で進んでいきます。

 それらが頭に入ったら、加島先生の本に進んでみるのもアリ。

漢方薬の考え方,使い方漢方薬の考え方,使い方
(2014/05)
加島雅之

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 この本はかなりビジーなつくりなので、無学で突入したら冗長な文章に疲れ、また理論面で跳ね返されてしまうかもしれません。ある程度下地をつくってから読んだほうが無難だと思います。内容はすごく良いんですよ。ただちょっとギュッと入れ過ぎた感がありまして。

 精神科領域だとこの2冊があります。

実践 漢方医学〈改訂 第2版〉 ‐精神科医・心療内科医のために‐実践 漢方医学〈改訂 第2版〉 ‐精神科医・心療内科医のために‐
(2014/06/26)
山田 和男、神庭 重信 他

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ジェネラリストのための“メンタル漢方ジェネラリストのための“メンタル漢方"入門 〈抗うつ薬・抗不安薬を使うその前に〉
(2014/10/08)
宮内倫也

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 前者は日本漢方の言う”実証””虚証”を重視している処方の仕方で、それに準じて漢方を処方している先生にはストレス無く読めると思います。後者はそれを枠から外しているタイプなので、日本漢方の先生なら抵抗を覚えるであろう処方をしています(自分はその処方が適切と思っていますが)。かつ精神科医以外の先生を対象にしている内容。なので、プライマリケアでの精神症状の診かたや向精神薬処方といった、精神科領域全般についても述べています。

 漢方薬には副作用もあります。よく漢方ゴリ押しのクリニックなんかのホームページには「自然のものなので安全」なんて記載がありますが、決してそうではない。ならドクツルタケでも食べてみんさい、そうでなくともジャガイモの芽でも食べてみるよろし。自然だから安全なんてことは全くありません。そこは気をつけましょう。

 どんな本を買って勉強するにしても、漢方薬は魔法の薬ではないこと、そして副作用もあること、そういったことを常に念頭に置きましょう。という、宣伝にもなった記事でした。
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コメント
今 漢方を飲んでいるので 素人的に色々勉強してます。
だって、出されたまま なんの知識もなく飲むのは怖いですもん^^;
漢方も 副作用ありますし、即効性もあります。
ほんと、副作用ないとか、即効性ないからとか言う医師が多いのですが 間違いだと思います。
漢方は効かないと言ってる人も たぶん そーゆう事例を目の当たりにしたことないのでしょうね^^;

本 さがしてみまーす 
あさがおdot 2014.11.03 10:48 | 編集
>あさがおさん

ありがとうございます。
漢方は処方する先生の色が強く出るので、本には書かれていないような思考をする医者もいます。
本に書いていないから間違っているというわけではないので、処方した先生の意図もしっかり聞いてみると良いかと思います。
m03a076ddot 2014.11.04 09:59 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

漢方、今回は茯苓飲合半夏厚朴湯ですが、ご提示の症状には効くこともあるでしょうし効かないこともあるかと思います。
お薬全般がそうなのですが、特に漢方薬は”この疾患に効くor効かない”というシンプルな問いに答えられないのです。
自分が使うのであれば、効果をはっきりと見てみたいため、例えばツムラさんのであれば6包/dayくらい使うことが多いです。
ただ、これは治療者によって異なると思います。
m03a076ddot 2015.06.13 15:01 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

細かい話になりますが、睡眠にはGABA受容体、H1受容体、5-HT2A受容体、メラトニン受容体、オレキシン受容体などなど、様々な受容体が関与しています。
ベンゾはその中のGABA受容体に作用します。
ミルタザピンやトラゾドンは、上記の受容体の中ではH1受容体と5-HT2A受容体に作用します。
よって、抗うつ薬ではありますが、作用する受容体を考慮すると睡眠作用を持ちます。
他の抗うつ薬、例えばパロキセチンやサートラリンなどはそういった受容体に殆ど作用しないため、飲んですぐ眠くなることは少ないです。
ベンゾは睡眠薬として知られていますが、睡眠に関わる受容体の1つに作用するに過ぎません。また、睡眠そのものを浅くするというデメリットもあります(お酒と同じなので)。
5-HT2A受容体に作用する薬剤は、深い睡眠を多くしてくれるため、いわゆる”眠りの質”が良くなります。これはベンゾとの大きな違いです。
また、毎日の服用となった場合、依存と離脱症状を考慮すると、ミルタザピンやトラゾドンの方が減量中止しやすいのもポイントです。
もちろん、うつ病に使う量よりも少ない量を用いるというのも挙げておきましょう。
m03a076ddot 2015.06.30 09:34 | 編集
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