2014
09.12

がとでの構え

Category: ★精神科生活
 精神科は患者さんとの関係性ということにどんな科よりも敏感。気にし過ぎじゃないかと思うくらいに考え込みます。関係性そのものが治療的になったりはたまた反治療的になったり。そんな中で私たち精神科医が維持したいと思う関係性は、患者さんが


この先生で良い


 と思ってくれることでしょうか。長い治療で陥りたくないのは


この先生が良い


 という関係性。患者さんは窮地に陥った存在です。彼らに対して私たち医者は、救済の手を差し伸べる天使や神様のような存在ではなく、松葉杖を差し出すような地味な援助者としての存在であるべきです。

・この先生で良い
・この先生が良い

 たった1文字の違いですが、この2つのイメージはかなり変わってきます。前者は「他にも先生はいるけど、まぁこの先生も悪くないし続けていこうかな」という、患者さんの肩に力が入らず、こちらも自然体に近い形で治療を築けるようになります。後者は「この先生じゃなきゃダメ!」という、しがみつきにも似た状態。

 後者の場合、医者側として当初は悪い気はしません。「先生のおかげで」「先生じゃなかったらここまで良くなってなかった」とか言われると、嬉しいものです。医者になる人はどこかで”頼りにされたい感覚””救ってあげたい思い”を持っていますし、患者さんのそういう発言はその救済者願望をくすぐるものでしょう。

 そういった関係が続くとエスカレートして、どこかの教祖のようになってしまうことがままあります。ハタから見ると「ちょっとこの先生の外来は宗教じみてるなぁ…」ということに。それでも最初は良いかもしれません。しかし、結局は医者が


教祖を演じ続けなければならなくなる


 という事態に陥るでしょう。気づけばこちらの裁量が狭まっており、患者さんがキラキラしたマナコをこちらに向けている限りはその方向性に縛られてしまいます。そして、患者さんの病気が良くならなかった場合、その魔法が解けると患者さんは冷静になることもありますし、医者に対してマイナスの感情を持つこともあります。そうなった際、医者は「これまではなんだったんだよ!」「俺の治療に従わないのか!」と感じて態度に出したり患者さんに辛辣な言葉をかけてしまったりするかもしれず、事態はこじれていきます。もちろん医者側が窮屈になってしまった教祖的な態度に嫌気が差して降りた場合、患者さんはハシゴを外された気持ちになるでしょう。この教祖と信者という関係は、濃密な恋愛の最中にいる2人にも似たものですね。

 治療は終結するもの。「この先生が良い!」という状態をお互いが維持してしまうと、患者さんの自発性は芽生えず、終わりが見えてこないこともあるでしょう。また、治療者の転勤などで引き継ぎということもあります。教祖と信者的な関係になってしまうと、こういう節目の時期が困りもの。後を任された医者もちょっと大変です。

 繰り返しですが、患者さんはどうしようもならなくなって医者の診察室を訪れます。その立場では医者に対して強い思いを持つことも多いかと思いますし、無理もないでしょう。「そんな気持ちを持つほうが悪い」と切り捨てるのではなく、またその気持ちを助長させるのではなく、医者側が患者さんの医者への思いを少しずつ治療の中でほぐしていくべきだと思います。もちろん、患者さんのみが原因で「この先生が良い!」となるわけでなく、医者側が知らず知らずのうちに誘導してしまうことだってあります(中には意識的にそうしてしまう医者もいます)。お互いの関係性、2人の”あいだ”の色合いに対して敏感になり、ほどよい状態にしていくことが、長くなりえる治療の中で重要だと思います。

 よって、医者は患者さんの”松葉杖”というイメージを大事にしていきたいものです。骨折して歩けない時は補助として使ってもらい、治ったら使わなくても良い。患者さんにそう思ってもらうように、また医者もその気持を大事にして診療する。それが精神療法の基本かもしれませんね。
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コメント
確かに この先生がいい  は怖いです笑

この先生の処方なら
この先生がおっしゃってるなら

などなど。。

医師にも色んな考え
治療方針があって その先生のいう事が全て正しいわけではなく、その方法でしか無いわけでもないのに、なぜか 信じ込むというか依存してる人 みかけます。

確かに信じる者は救われる  かもしれないけれど、100%信じたり頼ったりはダメですよ
ネット社会の今、色んな情報を得ることができるんだし。。。
一日1食がいい!と話題になってるけど それを言った先生を崇拝してる人々は 反論してる人を叩いたりしてるのを見ると、なんだかなーと思ってます^^;
あさがおdot 2014.09.14 14:39 | 編集
先生 こんばんは*・ωq


私は 薬に対しても前の主治医から『薬というのは 補助輪や杖のようなものですよ』
と 言われました。


精神疾患は 神経症のようなものから 重い精神障害のようなものまで
いろいろありますので
これは 私の症状について言われたことですので 他の症状をお持ちの患者さんには当てはまらないものだとは思います。


ですが 主治医と患者の関係性についても 似たようなことが言えると言うことなのですね。


私は今の主治医とも 相性がいい方ではありませんし 依存はしていませんし
話しても 気持ちが楽になることはあんまりないので お薬をもらいに行くために病院に行っているような感じです。

こんひゅすぱいdot 2014.09.14 22:56 | 編集
おはようございます。
症状がとても苦しかったころ、週1回の診察が待ち遠しかったものです。主治医の先生に「助けて欲しい」と縋ることでどうにか仕事にも行けました。安定してきて「毎週来るのは大変ではないですか?」ということで徐々に間があいて4週間に1回に。私の状態をみて誘導して下さっていたのですね、きっと。今は薬の減量の報告が主で淡々とした診察です。“この先生じゃなきゃ”から“この先生でよかった”に変わってきたように思います。
annedot 2014.09.15 10:49 | 編集
名古屋大学医学部附属病院で前期研修を考えている5年生です。 休みに関しては、基本的に週休2日でしたか?
募集のサイトを見たのですが、書いていなくて、休みなしとなると、勉強する時間もとれなさそうで、体力的にきついかなと心配しているのですが、教えていただけませんでしょうか?
しろたんdot 2014.09.16 21:48 | 編集
>あさがおさん

ありがとうございます。
盲信、というのは本当に怖いものです。”あばたもえくぼ”ではないですが、欠点すら長所に見えてしまいます。冷静に出来るだけ客観的に判断することを覚えたいものですね。
m03a076ddot 2014.09.16 23:43 | 編集
>こんひゅすぱいさん

ありがとうございます。
診察を重ねることで、何かしらこんひゅすぱいさんにも「お」と思える時が来るかもしれません。
そう考えてみると「こういう反応したら先生はどんな顔をするかな?」という、ちょっと実験のようなこともできるかもしれませんね(変な方向にやり過ぎるのは事態をややこしくしますが…)。
m03a076ddot 2014.09.16 23:47 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

身体の病気ではないことはきちんと診てもらったほうが良いでしょう。
そのうえで精神科や心療内科で、お薬やところによっては認知行動療法や曝露療法などによる治療を行なうと思います。
m03a076ddot 2014.09.16 23:52 | 編集
>anneさん

ありがとうございます。
診察そのものがしっかりと治療の要素になっているのだと思います。
淡々と、ゆっくりと、しかし確実に。それが現在の状況で最も重要かもしれません。
m03a076ddot 2014.09.16 23:53 | 編集
>しろたん さん

ありがとうございます。
お休みに関してですが、科によって異なる部分があります。
総合診療科というところは、現在は土日のどちらか1日は出てくるようにと言われています。自分が研修医の頃は2日とも顔を出すようにと言われていました(週7日勤務)。
他の科は基本的に土日は休めるとお考えください。
m03a076ddot 2014.09.17 00:02 | 編集
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

診察の回数を重ねていくうちに、少しずつですが距離というのがうまく出来てくるのだと思います。
それまではどちらもちょっと我慢のしどころ的な部分はどうしても出てきてしまうかもしれず、またそこをくぐることでほどよい関係性が生まれてくることも多いような印象もあります。
m03a076ddot 2014.09.17 00:05 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

確かにたくさんあって、かつクリニックの情報も少ないので決められないと思います。
大切なことは、お薬について最低限の知識を持っていることですが、それも診察を受けてみないと分からないかと…。
医者の診察が短いのはご了承ください。精神科はとても患者さんが多く、1人に時間を割くと他の患者さんを長く待たせることになってしまいます。
そして、もちろん得意不得意の病気はあります。ただ、それも受診する前に分かるかと言われるとどうでしょうか。医者のプロフィールに所属学会や専門医などの記載があれば、少なくとも興味はあるのだろうとは想像できます。
相性も確かにそうですね。どんなに頑張っても相性の悪い患者さんは一定数いるかなぁと思ってしまいます。自分の精進が足りないのかもしれませんが。
m03a076ddot 2015.06.02 08:15 | 編集
管理人用閲覧コメントをくださったかた、ありがとうございます。

相性は相性としか言いようがないものでして。。。言葉にしづらいのですが、何となく合わないなぁ、何となく良いかもなぁ、というそんな雰囲気です。
年齢に関しても何とも言えません。年齢に関わらず、話しやすい・知識がある、というのが重要だと思っています。
m03a076ddot 2015.06.04 20:07 | 編集
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