2014
08.18

患者さんの運転

Category: ★精神科生活
 道路交通法が改正され、精神疾患患者さんが運転免許取得/更新をする際に医者の診断書が必要になりました。疾患の状態が運転をするに足る安定を保っているかどうか、というのが大事な点になります。

 この診断書は”病状”を問うているのがポイントになっております。もちろん寛解しているのであれば大丈夫。

 しかし、病状のみで話を進められないのが難しいところ。それは



お薬



 なんです。道交法的には、病状が安定してればまぁ良いでしょうということなんですが、それとは別個にお薬の点から眺めると、そういうわけに行かない。なぜなら




向精神薬はほとんどが運転がダメなんです!!!!




 今の時代はネットで添付文書を検索できます。すると、ほとんどの向精神薬に”自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること”と書かれています。ワンランク低い”自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること”という風に書かれているのがサートラリン(ジェイゾロフト®)、パロキセチン(パキシル®)、エスシタロプラム(レクサプロ®)の3つ。それ以外は運転してはいけないことになっているんです。

 知ってました??? うつ病だとお薬を無くすことはできますが、躁うつ病、統合失調症、てんかんの患者さんはなかなかやめられない。お薬や疾患とは一生のお付き合いということになる方々も多いでしょう。

 だから、不思議なことが起きます。



疾患そのものではセーフ、飲んでるお薬でアウト



 という何ともかんともな事態に。例えばてんかんでは、お薬を欠かさず飲んでいるから発作がなく安定した生活が得られているにもかかわらず、飲んでいるお薬自体で車が乗れなくなってしまうという不可思議な現象が起きてしまっています。車がないと日常生活が成り立たないという患者さんも多いです。何とも頭を悩ませることに。しかも医者側からはきちんと「乗っちゃダメよ」と注意した旨をカルテに書いておかないと、もしものことがあった際に責任が問われます。精神神経学会でも話題になったそうで、学会側から国にもっと柔軟性を出すようにとプッシュをかけるようです。

 向精神薬はほとんどが「運転ダメ!」という記載ですが、実は身体疾患用のお薬にもチラホラとあります。花粉症にもよく使われる第二世代抗ヒスタミン薬では、ザイザル®、ジルテック®、アレロック®の3つが運転禁止になってます。あら大変。

 自分は「法律的には乗っちゃいけないことになってるんです。自分は職業上法律を破るようなことを勧められなくて…。実際、乗っている患者さんも多くて問題のないことがほとんどなんですが…」というちょっとお茶を濁した言い方になってしまっています。患者さんが可愛そうですよね。。。

 ヨーロッパやアメリカに眼を向けると多くのお薬が「飲んでみてふらふらしたり注意力が落ちたりしたらダメ、そうならないと分かったら良いよ」という記載になっています。これが実践的。何でもかんでもダメというのは、はっきり言って意味がないです。

 道交法はお薬のことは問うておらず、病状だけです。お薬の影響は添付文書ということになります。この二重構造の間で苦しんでいるのが、医療者であり患者さんでもあります…。どうすりゃいいんだよ。

 はやく添付文書が改正されることを祈っております。 
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コメント
精神科志望の3年目医師です。
法律はなかなか変わらないですよね…
せっかく良くなっても、運転したいからと内服止めてしまう方も居るんでしょうか…?

先生のブログを学生時代から読んでました。
少し回り道して、ゆくゆくは精神科医になりたいと思っていて、そろそろ入局を考えています。
ブログこれからも楽しみにしております。
snhldot 2014.08.18 23:14 | 編集
>snhl先生

ありがとうございます。
運転ダメだということを聞いて「薬やめても良いですか?」って尋ねる患者さんもいます。やめても大丈夫そうな患者さんには「ちょっとずつ減らしていきましょう」とお伝えしますが、どうしても必要な方にはその旨伝えています。症状が悪化して理由を問うと、お薬をやめたからという患者さんもチラホラ。。。
精神科を希望されているんですね。自分がいる病院にも麻酔科から転科してきた先生がいますが、この精神科の曖昧さに戸惑っているようです。検査値というものがないので、かつ身体診察で分かる精神疾患もなく…。曖昧であり、かつすべてが仮説で動いている科です。
勉強すればするほど分からなくなっていきますが、決してその歩みを止めないでほしいと思います。足を止めて勉強しなくなれば、本当にどうしようもない精神科医になってしまいます。転科されるということは強い意志をお持ちと思いますので、今後のご活躍に大いに期待しております。曖昧さを味わうくらいになると肩の力が抜けてくるかもしれません。
m03a076ddot 2014.08.20 08:01 | 編集
知らなかった!抗ヒスタミン剤は私が行く皮膚科でもよく出されてますよ。。
みなさん、運転してますけどね。。。。

わたしは 今の所運転に差し支える薬は飲んでないですが、技術が笑
ペーパーなのでいいんですけどね
あさがおdot 2014.08.20 22:04 | 編集
>あさがおさん

ありがとうございます。
運転に関わってくる薬剤は結構多く、見落としポイントですね。
自分もアレルギーのお薬を飲んでますが、完全なるペーパードライバー(必然的にゴールド免許)でして、大丈夫なのでした。
m03a076ddot 2014.08.23 07:54 | 編集
私、警察署で尋問にあいましたわ。
薬の件以外にもいろいろいろいろ聞かれまして、疲れました。
薬はまあ…正直自分で気をつけるしかありませんし、運転も体調をかんがみてとしか言いようがないです。
しかし、あれは、先生に「事故があったらお前責任とれよ」な内容でしたよね。
抗がん剤なんかでも同じように出てくるはずですけどね。
だったら、70歳以上から免許とりあげてほしいです
うたdot 2014.08.24 22:07 | 編集
>うたさん

ありがとうございます。
そうですね…。何とも運転のことは難しく、最近の訴訟絡みを考えると医者としては「乗っちゃダメ」と伝えねばならないという状況です。
医者の保身も含めて上記を伝えて、あとは自己責任というのが現在の法律でのぎりぎりの妥協案にならざるを得ません。国がそれを見直す時期に来ているのだと思っています。
m03a076ddot 2014.08.26 08:03 | 編集
精神科の開業医です。
先生のブログ、時々拝見して励まされています。
なんだか、患者さんへの眼差しがとても温かく感じられて…

(都市部ではお金儲けのことばかり熱心で、患者さんのことを真剣に考えられない残念なせんに驚くほどたくさん遭遇します。)

お互いに、より良き仕事ができるよう、精進して参りましょう!

くらちゃんdot 2015.03.19 00:53 | 編集
>くらちゃん先生

ありがとうございます。
開業されているのですね。患者さんの層も単科精神病院とは異なると聞きます。
少しでも患者さんのこころにゆとりができるように、勉強していきたいと思っています。
m03a076ddot 2015.03.21 23:39 | 編集
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