2014
07.31

日本漢方の”実証””虚証”はアテにならない(とひそかに思っている)

 ということで、あまり声を大にして言えませんが、表題のとおりです。

 日本漢方は”実証”と”虚証”というのを重要な概念として扱っています。何を以て実証なのか虚証なのか、それは多くが”体格や体力”を目安としてます。


がっしりしてたら実証、痩せていたら虚証


 なんて分類で、漢方薬もそれに応じて使います。例えば大柴胡湯は実証向き、補中益気湯は虚証向きなど。ただ、はっきり言ってこういう分け方は漢方薬の可能性を随分狭めてしまう、そう思います。異論は多いでしょうが…。

 自分は主に精神科分野で漢方薬を使いますが、精神疾患や多くの慢性疾患は”雑病”と考えられます。傷寒論とは異なり、より身体の中で起こることを重視します。そこで、”病邪”と”正気”という概念を掴んでおきましょう。

 傷寒論では正気を免疫力、病邪を”外邪”として現代のウイルスや細菌などを想定します。そして、正気の実と虚、外邪の実と虚、それぞれを考慮して陽病から陰病を配置します。正気の実と病邪の実とがぶつかりあったら激しい反応が起き、それが陽病。正気が虚して来て病邪の実に押し込まれてくると陰病になってきます。敗血症がひどくなってくると患者さんが静かになってきて体温も下がり免疫反応もままならなくなる…。そんな移行を傷寒論はとらえていたんだなと思います。もともと正気が虚していると最初から陰病になることもありますよ。正気の虚と病邪の虚というのは、今の世で言う日和見感染ですね。MRSAや緑膿菌による感染が代表的。

 では精神科分野ではどうでしょう。正気というのは、こころの柔軟性やしなやかさ(レジリエンス)を指すと考えて良いかと思います。病邪は免疫異常や精神的負荷による恒常性の乱れと言えるでしょう。それが気・血・水の滞りなどを産みます。

 ”病邪”と”正気”のそれぞれに”実”と”虚”が存在します。日本漢方が言う”実証”や”虚証”というのは正気の面をとらえてはいますが、病邪の方をあまり考慮していない印象を持ちます。

 実証と虚証というのではなく、正気と病邪の2つがあると考える。そして、治療の大前提は“扶正祛邪(ふせいきょじゃ)”です。弱っている正気を助けて、病邪に対しては追い出すという2つの方法を考えます。

 弱った正気には”補う”ことをして、やっかいな病邪には”瀉する”ことをします。前者には補気や補血や生津などが含まれ、後者には理気や駆瘀血や利水などの”通す”治療や温める・冷ますという治療などが含まれます。

 ただ”瀉”は”正気を損なう”とされ、瀉ばかりしていると患者さんは弱ってしまうことがあります。瀉をする前に、それに足るだけの正気があるかどうか、なければ補うべきか、ということを考えましょう。

 よって、見た目が華奢な患者さんに大柴胡湯を使うことだってあります。病邪の実があり、それに大柴胡湯が適していると判断すれば、体格など考慮せずに使います。正気が少し弱いように感じたら、補中益気湯などの補気剤で補いながら大柴胡湯を用いると言う方法もあります。日本漢方の症例報告とか見ていても「実証と思っていたが効かないので虚証と考えなおして処方した」なんていうフレーズがありますし、なんじゃそりゃと思ってしまうのでした。

 扶正祛邪という観点に立てば、何が何でも1つの方剤でやらねばならないというのはちょっと違和感を覚えまして、臨機応変さが求められるように考えています。とは言っても漢方の考え方って実に様々なんですよね。そこら辺をうまく整理していって、漢方が”術”ではなくて”学”になるようにしないとなかなか発展は難しくて「うさんくさいなー」と思われたままのような気がしてなりません。

 ちなみに、ここ最近は記事をアップする回数が多いのでございます(1日おき!)。なぜなら、8/3から1週間は怪しげな研修会があるため、ちょっとパソコンから離れるのでした。持ち歩き用のものは持ってないし、タブレットもないしスマホもないし…。研修会中は缶詰めになるからパソコン触らないだろうし…。ということで、今のうちにアップしております。
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コメント
はじめまして。

漢方について教えてください。
私は、ベンゾの離脱症状の動悸が酷いため、抑肝散を服用していました。
最初は動悸には効果があった気がしたのですが、息苦しさと倦怠感が
酷くなり、それに伴う動悸も酷くなりました。歩くのも辛いぐらいの息苦しさです。でもこれもベンゾの離脱症状だと思い、抑肝散を続けていたのですが、どんどん酷くなりました。抑肝散の副作用を調べてみると、なんだか色々ある様子…。
そして服用3ヶ月目で、服用を中止したところ、次の日には倦怠感がかなり
マシになりました。変な息苦しさも少しだけマシになりました。
今思えば、服用し始めの頃から変な息苦しさがあったのですが、これが原因だったのかもしれないとおもうと、3ヶ月も服用してしまってすごく怖くなりました。外出もツラくてほとんど家で過ごしました。
今、服用中止してから2週間目なのですが、
まだ息苦しさが残っていて動くのがつらいです。倦怠感は少しづつ改善されて
きていますがなかなか元通りになりません。
元の離脱症状は動悸と少しの息苦しさと少しの広場恐怖がある感じで、
今みたいに動くのが辛いほどではありませんでした。
医師に相談したところ、離脱症状にもまったく理解がない医師で、漢方
なんて気休め程度のものという意見です。症状を話したところ、
鬱の傾向があるとのことで、抗うつ剤を処方されてしまいました。
服用はしていません。
抑肝散を中止して改善されたので、やはり私は鬱ではないです。
ちなみに私は薬に凄く敏感で、副作用が出やすい体質です。
合わない漢方を3ヶ月間も服用してしまいましたが、私の体は大丈夫でしょうか?
服用中止して2週間目ですが、まだまだ体に薬は残っていますか?
どのくらいで元の体に戻りますか?
何か改善策はないでしょうか?
主治医が漢方に詳しくないためこちらで相談させていただきました。
長文になり申しわけありませんが、ご意見よろしくお願いします。



かなdot 2014.07.31 13:32 | 編集
虚証 実証はあるようで無いような 気がします(^o^;
だって 病んでる人は基本みんな『虚』だと思うのです。
体力、体格の良い人にも 虚証の漢方効いてると聞いたことあります。
見た目 体力ありそうでも弱い人多いですよ^^;
私は漢方は春くらいまで怪しいと思ってました。学生の頃の数少ない東洋医学の授業も寝てました(^o^;
その私が漢方を飲むことになり 今までの失礼を深く反省している日々です

先生のブログ楽しみにしてるのに 更新無いのですかぁー
この際、タブレットかスマホ デビューしちゃいましょ(^m^)
あさがおdot 2014.07.31 21:48 | 編集
先生 こんばんは。
漢方薬,気になる存在ではあります。
長い歴史に裏打ちされた何かがありますよね,きっと。解明されてより多くの症状の緩和につながるといいなぁ。

記事が頻繁にアップされていて嬉しいなと思っていたらそういう訳があったのですね。「怪しげな研修会」とても気になる~私も来週までかたい研修が続きます(ペンだこできた)。
annedot 2014.07.31 21:53 | 編集
>かなさん

ありがとうございます。
漢方薬もやはりお薬なので、副作用もあろうかと思います。
倦怠感については、生薬の甘草が影響していたかもしれません。
中止されて2週間ならまだ身体が追いついていない可能性もあるでしょうか。なかなか寡聞にして分かりかねるところはありますが。
現在の症状が、抑肝散服用の名残なのかもともとの症状なのか身体の病気はないか。そこもちょっと難しいかもしれません。
漢方の影響であるならば、専門の薬局で相談をしてみるのも良い策だと思います。

> はじめまして。
>
> 漢方について教えてください。
> 私は、ベンゾの離脱症状の動悸が酷いため、抑肝散を服用していました。
> 最初は動悸には効果があった気がしたのですが、息苦しさと倦怠感が
> 酷くなり、それに伴う動悸も酷くなりました。歩くのも辛いぐらいの息苦しさです。でもこれもベンゾの離脱症状だと思い、抑肝散を続けていたのですが、どんどん酷くなりました。抑肝散の副作用を調べてみると、なんだか色々ある様子…。
> そして服用3ヶ月目で、服用を中止したところ、次の日には倦怠感がかなり
> マシになりました。変な息苦しさも少しだけマシになりました。
> 今思えば、服用し始めの頃から変な息苦しさがあったのですが、これが原因だったのかもしれないとおもうと、3ヶ月も服用してしまってすごく怖くなりました。外出もツラくてほとんど家で過ごしました。
> 今、服用中止してから2週間目なのですが、
> まだ息苦しさが残っていて動くのがつらいです。倦怠感は少しづつ改善されて
> きていますがなかなか元通りになりません。
> 元の離脱症状は動悸と少しの息苦しさと少しの広場恐怖がある感じで、
> 今みたいに動くのが辛いほどではありませんでした。
> 医師に相談したところ、離脱症状にもまったく理解がない医師で、漢方
> なんて気休め程度のものという意見です。症状を話したところ、
> 鬱の傾向があるとのことで、抗うつ剤を処方されてしまいました。
> 服用はしていません。
> 抑肝散を中止して改善されたので、やはり私は鬱ではないです。
> ちなみに私は薬に凄く敏感で、副作用が出やすい体質です。
> 合わない漢方を3ヶ月間も服用してしまいましたが、私の体は大丈夫でしょうか?
> 服用中止して2週間目ですが、まだまだ体に薬は残っていますか?
> どのくらいで元の体に戻りますか?
> 何か改善策はないでしょうか?
> 主治医が漢方に詳しくないためこちらで相談させていただきました。
> 長文になり申しわけありませんが、ご意見よろしくお願いします。
m03a076ddot 2014.08.02 12:27 | 編集
>あさがおさん

ありがとうございます。
日本漢方の実証と虚証は難しいですね。あえてそういう概念を取っ払ってしまったほうが良いような気がしないでもないです。患者さんがいわゆる虚でも、病邪の方が実だということもありますし。
スマホとかタブレットとか、なんか指で触って動かすのがびっくりです。画面も大きくなるんですもんね。
m03a076ddot 2014.08.02 12:33 | 編集
>anneさん

ありがとうございます。
今ある西洋薬も自然の植物から発見されたものがかなり多いので、漢方薬も突き詰めて研究すれば、より多くの患者さんが楽になるかもしれません。
研修会が続くんですね。腱鞘炎になりませぬよう(自分はカルテの打ち過ぎでこの前なりました。治りましたけど)。
m03a076ddot 2014.08.02 12:37 | 編集
ご返信ありがとうございます。

背中が少し痛かったのはなくなりましたが、倦怠感がまだまだあります。
2週間では追いつかないのですね…。
気長に待つしかないでしょうか。
今、息苦しさが酷いのですが、ハンゲコウボクトウを少量服用してみても
大丈夫でしょうか?
それともヨクカンサンが完全に抜けるまでなにも服用しない方が
良いでしょうか?
今年の3月頃に、1日2〜3包を一ヶ月ぐらい服用していたことがありますが、
特に問題はありませんでした。
後、苓桂朮甘湯も1日2〜3包を5日間程服用したことがありますが
問題はありませんでした。
もう少し良くなったら漢方専門医を受診してみようと思っていますが、
まだ先になりそうなのでアドバイスお願い致します。
かなdot 2014.08.02 14:36 | 編集
度々失礼します。
追記です。

今年の3月頃に、1日2〜3包を一ヶ月ぐらい服用していて
特に問題はなかったのは、ハンゲコウボクトウです。
かなdot 2014.08.02 16:03 | 編集
先生は、認知心理とかにもお詳しいのですね。(レジリエンスという単語をお使いになられるところから、想像いたしております。)
メイラックス減量中dot 2014.08.03 00:40 | 編集
>かなさん

ありがとうございます。
専門医を受診されるのでしたら、ご自身での判断でお薬をのまずに現状をお見せしたほうが良いかと思います。
m03a076ddot 2014.08.12 19:28 | 編集
>メイラックス減量中さん

ありがとうございます。
認知心理学はあまり得意ではなく、心理学そのものも勉強すると「本当なのか!?」と疑ってしまう方でして…。
色々と本を読んではみましたが、一周回って常識的に診療しようという感じに落ち着きました。
m03a076ddot 2014.08.13 18:06 | 編集
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