2014
07.04

糖尿病治療に思うこと

 最近どんどん発売されている糖尿病のお薬、SGLT2阻害薬。イプラグリフロジン(スーグラ®)、ダパグリフロジン(フォシーガ®)、ルセオグリフロジン(ルセフィ®)、トホグリフロジン(アプルウェイ®、デベルザ®)といったものが節操無いくらいに出てきます。このSGLT2阻害薬とは何なのか。

 血液は腎臓で濾されて、不要なものが尿になります(尿は血液からつくられるんですよ)。その時に、身体に必要な糖分と塩分はその濾過を通り抜けてしまうので、腎臓は再吸収と言う手段を用意してます。糖分については、腎臓にあるSGLT2というものがもう一度血液の中に引っ張り込む役目を果たします。SGLT2阻害薬はそれをブロックすることで、糖分が血液に戻らずに尿として出すようにする、というもの。ということは


糖分が身体の中に入らないようにするんですね


 同じようなお薬がありまして、それはαグルコシダーゼ阻害薬。アカルボース(グルコバイ®)、ボグリボース(ベイスン®)、ミグリトール(セイブル®)といったものがそうです。これらは腎臓ではなくて、消化管から糖分が吸収されるのを抑える役目を果たします。ということは、ほうほう


糖分が身体の中に入らないようにするんですね


 どっちも余分な糖分を吸収させずに身体から出す、という仕組みでございます。作用する部位が腎臓か消化管化の違い(効果はSGLT2阻害薬の方が高いです、たぶん)。

 さて、日本の糖尿病治療は残念ながら製薬メーカーに踊らされた歴史が長く、それはもっとも治療薬として優れているメトホルミン(メトグルコ®、グリコラン®)を第一線で使って来なかったことに現れます。このお薬はコストパフォーマンスが素晴らしく、糖尿病患者さんの心血管リスクを減少させてくれることが明らかになっています。そして価格がメトグルコ500mg錠でも1錠20円しませんし、最高用量でも100円で足ります。ちなみにSGLT2阻害薬は大体通常の1日量で200円です。糖尿病学会のお偉いさんはメトホルミンの危険性ばかりを煽って、薬価の高いSU薬をゴリ押ししてきた経緯があります。SU薬は治療薬として劣っていることは明白で、それを第一選択で使うとメトホルミンに比べて死亡率が60%も増加するという報告もあります(Morgan CL, et al. Association between first-line monotherapy with sulphonylurea versus metformin and risk of all-cause mortality and cardiovascular events: a retrospective, observational study. Diabetes Obes Metab. 2014 Apr 11.)。稀な副作用を誇大的に述べて安くて優秀なメトホルミンを使わせず、高いだけがとりえ(?)のSU薬を糖尿病学会のお偉いさんはずっと宣伝していたのです。だまされる医者も医者だと思いますが。。。調べればすぐに分かる、こんなの。メトホルミンは他の糖尿病治療のお薬と比べて危険性は変わらず、むしろインスリンの方が高リスクであるとされています(Ekström N, et al. Effectiveness and safety of metformin in 51 675 patients with type 2 diabetes and different levels of renal function: a cohort study from the Swedish National Diabetes Register. BMJ Open. 2012 Jul 13;2(4). pii: e001076.)。

 最近はメトホルミンを使うことも少しずつ増えてきていますが、特にクリニック(しかも糖尿病専門医)ではすぐに上記のSGLT2阻害薬に飛びついて乱発したり、DPP-4阻害薬(ジャヌビア®など)を何でもかんでも最初から使ったりなど、ちょっとどうかなぁと思うところが多々あります。もうちょっと考えてから処方してほしい。

 そして、このSGLT2阻害薬は上記のように、身体の中に糖分が入らないようにする、というもの。これでふと思うのは、糖質制限食です。最近盛んに議論されていますね。「これは良いよ!」と推進する論文も出てくれば「いやいや、危険だ」とする論文も。糖尿病学会はもちろん反対の立場にあります。

 自分は、タイトな糖質制限はまだどうなのか分かりませんが、ゆるーい感じでやっていく分には全くもって大賛成です。糖質は精神症状として抑うつや不安などを強めることが示唆されており、そういった意味でもゆるい糖質制限は良いんじゃないかなと思います。身体と心が少し楽になります。

 学会が反対している理由は何なんでしょうね。良質なエビデンスがないから? それならSU薬推進の歴史は何なんだ。儲からないからっていうのがあるかも? だって変ですよ、SGLT2阻害薬やαグルコシダーゼ阻害薬には反対じゃないんですよ、彼ら。糖分を吸収しないようにするお薬は使えと言っているのに、入れる糖分を抑えるのには何で抵抗するんだ。

 こう勘ぐってしまうんです。メトホルミンの危険性ばかりを煽っていた糖尿病学会ですから、自分はちょっと彼らの言うことには疑いを持ってしまっています。もちろん全員が変なわけではなく、熱意と科学的な目線を持って治療に当たられている先生方も多いです。ただ学会とお偉方がおかしいからついつい。

 更に「??」なことに、糖尿病学会のホームページの一番下には製薬会社のリンクがぺたぺた貼られています。他の学会はそんなことないですよ。こういうことやってるから「製薬会社がせっせと学会にお金を出してるから、薬剤は推進で糖質制限は反対なんじゃないの…?」とますます訝しがってしまうのでした。

 潔白で自分の勘ぐりかもしれませんが、やるならもっとうまいやり方があるんじゃなかろうか、そう思ってしまいます。
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コメント
私は 医療にはド素人ですが すごく分かりやすい。

>もっとうまいやり方 
というのが気になりますが。
パイナップルdot 2014.07.06 19:43 | 編集
>パイナップルさん

ありがとうございます。
糖尿病学会がもう少しはやくメトホルミンに対して歩み寄ってこれまでを反省して、かつ糖質制限についてもバッサリ切り捨てるような態度でなければ、という風に思っています。
製薬会社との関係を勘ぐらせるような方向性は実に下手だと感じてます。
m03a076ddot 2014.07.08 11:07 | 編集
文章中に出てきた薬剤を売っていたものです。学会はSGLT2を全く推奨してません。二大巨塔の関電 清野、東大 門脇は否定派です。もちろん糖質制限食も反対派ですが、極端な制限食を反対しているだけで先生の言われる通りゆるいものには賛成しているはずです。極端なものはケトーシスを引き起こしリスキーです。SGLT2でもケトン体上昇は言われています。私もDM学会は好きじゃないです。特に武田絡み。
とある会社員dot 2015.11.18 00:30 | 編集
>とある会社員さん

ご指摘ありがとうございます。
SGLT2阻害薬は販売前の学会の加熱ようは凄まじいものがありました…。
色んな医者が「これぞ新世代の経口血糖降下薬!」と言っていましたが、様々な副作用が生じた結果、2014年6月13日に”SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation.”が策定され、その熱がしぼんでいった印象です。
緩い糖質制限については推奨というか、明確な発言をしていないと認識しています(特に記事作成時にはそうでした)。確かまだ表立った推奨はカロリー制限だったかと思います。
アメリカのように選択肢の一つとしてきちんと提示してくれても良いのかなと感じています。
いずれにしても、糖尿病学会はもうちょっと風通しを良くして欲しいですね。
m03a076ddot 2015.11.18 23:10 | 編集
少し語弊がありました。確かに緩い糖質制限食に明確な反対はしておらず推奨もしていませんでした。食事療法に関しては食品交換表を作成し摂取カロリー制限をしていると記憶しております。
話は変わりますが先生の感染症ブログはたいへん勉強になります。感染症の勉強をし始めてこのブログにたどり着きました。これからもお世話になりますが宜しくお願い申し上げます。
とある会社員dot 2015.11.19 08:08 | 編集
>とある会社員さん

ありがとうございます。
ご指摘をいただくことでこちらも勉強になります。
感染症の記事が参考になっていただけたようで、良かったです。
しかし、新しい抗菌薬にはついて行けなくなってしまいました…。
自分が診る感染症はコモン中のコモンなので問題ありませんが、やはり第一線で活躍している先生がたはたくさん勉強することがありますね。
m03a076ddot 2015.11.20 12:08 | 編集
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