2014
06.21

精神科こそ身体疾患に敏感になるべし

 他科から「うちの科じゃないから」と言われて精神科に流れ着く患者さんはいます。そうなると精神科は「じゃあ精神疾患として治療すっか」と考えて身体疾患を今一度洗いなおすことを忘れてしまうことがしばしば。

 一度”精神科の患者さん”というラベリングをされてしまうと、それはなかなか剥がされません。

 各科の専門医でもその科の疾患を見つけられないことは往々にしてあります。医者は完璧な存在ではなく、診断が100%できるとは限りません。患者さんがたにはそれを知ってもらいたいですし、医者側も自分の診断には謙虚になって繰り返し診察や検査を行うことが必要ですね。

 また、精神科は身体を診る能力が残念ながら他科よりも劣ります。悔しいですけどそれは紛れもない事実。よって、他科からの「身体的な異常は否定されました」という言葉を信じやすい。お墨付きをもらうような感じでしょうか。しかし、ここで精神疾患と決め込んでしまうと


万が一、ひょっとして、もしかしたら…?


 という身体疾患の可能性を考慮しなくなってしまいます。同じく、精神症状でメンタルクリニックや心療内科を最初に受診して身体疾患をあまり考慮されずに精神疾患として治療される患者さんもいます。

 そこで、経験豊かな精神科医はそこに警鐘を常に鳴らしています。最初は外因、言い換えると身体に原因があることで精神症状が出ているのではないか? それを必ず考えなさい、そうおっしゃいます。自分の属する大学医局の教授も常に身体疾患への目配せをするように指導なさっています。

 そうです、すなわち表題のごとく


精神科こそ身体疾患を診断/除外をする最後の砦!


 他科から身体疾患を否定されようとも「それって本当かい?」と疑って注意をする。ちょっと性格を悪くする必要があるかもしれません。精神症状をきたす身体疾患や薬剤は多く、そこへの配慮は必ずすべきだと考えています。なかなか難しいのは承知ですが、目指すべき到達点として。

 精神症状を認める代表的な身体疾患は以下の様なものがあります。

外因1
外因2

 ミトコンドリア病なんかは見つけるの難しいですよね…。でも多く見逃されがちなのは内分泌疾患。ルーチンの血液検査ではACTHやコルチゾールを測定しませんし、場合によっては甲状腺機能も測らないこともあります。ビタミン系も忘れがちでしょう。膠原病の一部はCRPが正常でも赤沈が亢進していることがあります。精神科の名医と言われる先生方はちょっとした所見をうまくとらえ、例えば神経内科で神経疾患を一度否定されていてももう一度診てもらい、そこで神経疾患が判明したということも往々にしてあったようです。すごいですね。

 精神疾患と考えて治療していても典型的な印象がない場合は注意ですし、また治療になかなか反応しない場合、すぐに”これは治療抵抗性だ!”と考えずにもう一度身体疾患のルールアウトをする。”治療抵抗性”ってすごく便利な言葉でして、怖い面も十二分に有しています。時間経過も含めて考えて地道に鑑別をするということが、重要なのだと思います。

 意識状態をしっかり確認し脳波検査も必要な場合があります。高齢者の認知症と思っていたら、ご家族のお話から自動症っぽくて脳波をとったら側頭葉てんかんだった! という例をちらほら聞きます。高齢者でてんかんが初めて出るっていうのはすごく多いんですよ(もちろん認知症との合併もありますけど)。神経梅毒が高齢になってから出てきて認知症様症状をきたすこともあります。しかも最近は若者の間で梅毒が増えてきてるって言いますし。

 ということで、精神科のオレたちがしっかりと身体疾患を除外するんだ! そんな強い気持ちであり続けるべき、と思っています。精神疾患の勉強ばかりだと息が詰まってくるので、気分転換に身体疾患の本を読んで知識を深めるのも良いですよ。
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コメント
管理人用閲覧コメントを下さったかた、ありがとうございます。

漢方薬はミオパシーと言って、筋肉のだるさや痛みが出ることがあります。恐らくそれだったのかと思います。
主治医の先生からの「心の持ちよう」のお話は良かったですね。そうやって先生からフィードバックがあると気づきを得られるかと思います。
m03a076ddot 2014.06.24 09:32 | 編集
このページを見てそうだそうだと思いました。

精神科だけじゃないけど特に精神科は身体疾患のことを
知らないのか、誤診が酷いです。

私は、難病の病気を持ってると告知してるのに

そちらの診療科と連携しようとしないうえに

除外診断せず診断されたと疑いを持ち

他の医者に再診断を要求する手はずです。

よっしーdot 2015.03.30 07:06 | 編集
>よっしーさん

ありがとうございます。
言い訳ではありませんが、精神科診断はまだまだ症状でのみ診断せざるを得ず、有用な検査が発達していないのもあるかもしれません。
本当に難しいというのが臨床での経験です。
ただ、その中でもしっかりと与えられた情報で身体疾患を考えて進めていくことが必要になるというのは、言うに及びません。
m03a076ddot 2015.03.31 23:14 | 編集
 こんばんはm(_ _)m

『一度”精神科の患者さん”というラベリングをされてしまうと、それはなかなか剥がされません。』

 この一文を読んで、思わず「そうだそうだ!」と頷いてしまいました。

 診断書に『うつ病』って書かれてしまうと、それが独り歩きしてしまって、後でよくよく調べて内科的疾患だったと分かっても取り消せないわけですから、本当に精神疾患と診断を下す以上は慎重にならなければならないのに。下手したらその人の人生を左右することにもなるので、精神科の先生方には、内科的疾患がないかも含めて慎重に診断をして欲しいというのが、患者や患者の家族の願いです。

 昔からず~っと気になっていたのですが、
 内科的疾患、とりわけ内分泌疾患から来る精神症状は、通常の精神疾患の症状と比べてどのように違うのでしょうか?また、診断の際に心がけていることは何かありますか?

 知人友人に精神科医がおらず、話を伺う機会が全くないので…(^^;)
 教えていただけると嬉しいです。
朧月夜dot 2015.10.13 21:54 | 編集
>朧月夜さん

ありがとうございます。
身体疾患による精神症状は、典型的な”統合失調症”や”うつ病”とやっぱりなんとなく違いそうだなぁという感覚が大事になってくるかもしれません。幻覚は幻覚でも”幻視”がある、統合失調症的な幻聴ではない、被害妄想も対象が具体的、などなどなど。うつ病も、抑うつ気分よりも倦怠感が目立つとか、抑うつそのものも何か違うなぁという印象。
ただ、身体疾患でも典型的な精神疾患と同じ症状を呈することが少なからずあるため、初診時に最低限の検査はしておくことが多いかと思います。後は治療過程の中で絶えず振り返っておくことでしょうか。
m03a076ddot 2015.10.16 11:27 | 編集
 貴重なお話をありがとうございます。

 精神科に来られる方は、なかなか自分の苦しみを上手に訴えられなかったりすることがあったりすると思うので、常に感覚を研ぎ澄ましていないと、微妙な違いを見抜けなかったりしますからね。

 m03a076dさんのような精神科の先生が増えるといいな(^^)。
朧月夜dot 2015.10.16 14:58 | 編集
>朧月夜さん

ありがとうございます。
本当に精神科は難しいなと感じています。
どうやっても症状が思うように改善しない患者さんもおり、手の届かない気持ちになることも。
病態の解明が進んで多くの人が回復できればなぁと思いますが…。

m03a076ddot 2015.10.19 15:18 | 編集
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